一言でいえば、リンゴのあまりにも魅力的な変容。
1989年の開店以来この店で圧倒的な人気を誇っているという味をコンサートの前に確かめた。
ホームページによると「しっかりしたリンゴの素材感」を出すのに最適な品種を追い求めた結果、
「硬めの富士」という結論に至ったとのこと。
シンプルであるがゆえにものを言う素材選び。
甘酸っぱさと生クリームの相性がまた秀逸である。
この日は両親を招待し、後日談として母が絶品のタルトタタンを繰り返し話題にしていると父から聞いた。
どうやらコンサートの印象を上回ったらしい(笑)。
さて、そのコンサートはN響のオーチャード定期第81回。
お目当てはラフマニノフのピアノ協奏曲第2番である。
もはやこの曲を浅田真央のスケートと切り離して聴くことはできない。
ソチでは失意のショートがあったからこそ、フリーの偉業が際立ったのも事実。
彼女が一体どんな覚悟でフリーに臨んだのかを考えるだけで出だしから目頭が熱くなった。
重厚な旋律に乗って成し遂げられた最高難度のプログラム。
第3楽章では伊藤みどりのアルベールビルを思い出し、
R. I. のなかではもう完全に別名“トリプルアクセル・コンチェルト”なのである。
指揮者のレナード・スラットキンが健康上の理由でキャンセルとなったのは残念であったが、
代役のクリスティアン・アルミンクは同い年ということで注目した。
上背があるので手を伸ばすと管楽器の最前列にまで届きそうなダイナミックさがある。
例の浅田真央のステップの部分はテンポを落としてゆったりと荘重に聴かせてみせた。
ラフマニノフという作曲家はとにかく音が多い。
SACDで録音年度の新しいディスクを聴くと、こんなところでこんな音が鳴っていたのかという発見に都度出くわす。
この日座ったバルコニー席からはピアノのハンマーが大量の塊となって上下しているのが目に入った。
ピアノのオルガ・ケルンは抜群の安定感。
第1回ラフマニノフ国際ピアノ・コンクールの覇者だそうで、すでに十八番であることが窺えた。
N響オーチャード定期 第81回
2014 11.9 sun
Bunkamuraオーチャードホール
http://www.bunkamura.co.jp/magots/topics/post_10.html
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