オートバイで旅して観たモノの記録

 Ôtobai de tabi site mita mono no kiroku.

鬼の見晴台へ

2020年12月05日 | 紀伊半島


 松本峠から少し南に行ったところにある東屋で七里御浜の景色を堪能した後は,そのまま道なりに南の方向へと進んで行くことにした.標識によると,このまま南下すれば鬼ヶ城跡へと辿り着くらしい.



 日の入りしてからしばらく経つが,山の中に朝日は届かず,薄暗い山中を黙々と歩いて行く.緩やかであるが,アップダウンを繰り返す道を進んで行くと,暗かった視界に突如として太陽からの眩しい光が差し込んできた.どうやら無事に,鬼ヶ城城跡の高台へと辿り着いたようだ.



 鬼ヶ城城跡の高台からは,大泊海岸,そしていつも走っている国道311号線を一望することができた.この高台は,室町時代,有馬和泉守忠親の隠居城があった場所だと言われている.



 このような場所に城を建てて,過ごす余生はどんなに素晴らしいことだろうか.しかし,有馬氏は,その後,他の勢力に滅ぼされてしまったという.素晴らしい風景の記憶には,室町時代の栄枯盛衰があったわけである.城跡からは,磯崎町も眺めることができた.



 南の方角には,雄大な熊野灘が広がっている.熊野灘にぽつりと浮かぶのは,マブリカ(魔見ヶ島)だ.木製のベンチが置いてあって,鬼の見晴台と名前が付いてある.ここで,一息ついてから,山を下って行くことにした.



 山を降りていく途中で,宿の駐車場に停めてあるオートバイを見つけることができた.なんだか,自分のことを待ってくれているような気がした.勇み足でオートバイの元へと向かうのだった.



 現道へと戻ると,太陽から真っ白な光が降り注いでいた.眩しくて,暖かくて,何かいいことがありそうな予感のする清々しい朝だった.

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