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秋も深まり,朝晩を除けば,過ごしやすい陽気が続いていた11月の半ば頃.久しぶりに熊野市の松本峠を登ってみることにした.目的と言えば,もちろん,峠から七里御浜の景色を眺めることだ.
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前回と同じように,大泊海岸の交差点にある昇り口から,松本峠を目指すことにした.松本峠までは,距離にすると大したことはないのだけれど,勾配が急な石畳の道が続いている.
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陽が昇る前の薄暗いうちに登り始めて,しばらくすると辺りには,鮮やかなオレンジ色の光が差し込んでくるようになった.山の中で迎える一日の始まりは,暗い視界が明るくなることで,妙に心が安らぐような気がした.
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怠けた体にムチを入れる思いで,辛抱強く道を登って行くと,無事にお地蔵様のいる峠へと辿り着くことができた.ここまで来てしまえば,七里御浜の景色を眺めることができる場所までは,もう目と鼻の先だ.
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七里御浜,そして熊野市街を一望できる東屋のあるビュースポットにやってくると,朝日を浴びた紀伊半島の東海岸の絶景が目前に広がっていた.言葉では説明しきれない想いが,胸に込みあげてくるのだった.
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ここにやって来るのは,今回が二度目であって,およそ一年振りの再訪になったわけである.それでも,この景色を随分と昔に見たような気がしてならなかった.一年前と今とでは,生活の様式が全く変わってしまったのだから,そう思うのも仕方ないのかもしれない.
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そもそも,この場所を教えてくれたのは,上北山村のお母さんなのだけれど,このコロナ禍にあって,この景色を観ることができた感謝の想いを伝えられないままでいる.それが妙に気がかりになっている.そして,コロナウイルスの勢いは,まだ一向に衰えることを知らない・・・.
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