
荷坂峠道は三重県の大紀町と紀北町をつなぐ熊野古道だ.紀北町側の登り口手前には,猪垣が残っている.そして,初冬と言えども,紀伊半島の青々とした樹木が印象的なとても気持ちのいい道だ.

荷坂峠は西側にあるもうひとつの熊野古道,ツヅラト峠と違って勾配は緩いと言われている.当時,重い荷物を背負っても越えられることから,荷坂峠と呼ばれるようになったらしい.そして,江戸時代の街道整備によって,荷坂峠がツヅラト峠に代わって伊勢と熊野の玄関口になったそうだ.

荷坂峠道には江戸道と明治道の2つがある.明治道の方は緩やかで,江戸道の方が急峻だと言われている.この日はオートバイの冬装備ということもあって,紀北町側から明治道の方を歩いていくことにした.

道中には熊の爪痕なる看板があった.平成27年の12月に熊がここに現れて,この木で爪を研いだということか.今からちょうど7年前の出来事だから,その熊は今もこの辺りに生息しているかもしれない.

あのような看板を見ると,ちょっと怖くなってしまうのが正直なところだ.時折,山の斜面の方からガサガサと音がするので,いつになく敏感に反応しまう.よくよく確認してみると,これの正体は歩いている鳥のようだった.ヤマドリやキジの類かもしれない.

そして,今度はつがと言う傷が付いた樹木が現れる.これは鹿が角を研いだ跡らしい.角を研ぐと同時に匂いも付けて,自分の縄張りであることも主張しているそうだ.かなり立派な雄の鹿の仕業かもしれない.

この辺り,野生動物はたくさんいるようだが,だれとも出会うことなく,三本松(長八茶屋跡)までたどり着く.躍動感あふれる立派な樹木が印象的だ.荷坂峠道は,色々なポイントがあって楽しい道だと思う.

そして,三本松から少し登ったところに沖見平という看板が立っている.登り口からちょうど1500メートルのポイントだ.看板には海が見えます,と赤い字で書かれている.紀伊長島方面の海を一望できるのかもしれない.沖見平まで50メートル,ちょっと寄り道してみることにした.
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