早朝の賀田湾は、日の出の時刻を過ぎてもリアス式海岸なので、太陽が山の上を昇ってくるまでの間、薄暗い時間がしばらく続く.静かな水面には、いろいろな方向から振幅の小さな波ができている.
小さな波の正体は、釣り筏へと釣り人を送り届ける小さな漁船だった.沖合に浮かぶ大きな黒いシルエットは、ガット船という工事用資材を輸送する作業船だが、昨日の夕方からずっと同じ位置に停泊している.
早朝の賀田湾は朝焼けが水面に反射し、紫色に光って見えるのが美しかった.賀田湾のようなリアス式海岸でなければ、打ち寄せる波によって朝焼けの光があらゆる方向へ分散してしまって、このような紫色の水面は見れないと思う.
同時に、空模様が刻々と変わっていくのも神秘的だ.様々な色の雲が、何層にも重なって流れていくように見えた.青空も広がり始めているが、依然として山の稜線は黒いシルエットを呈している.
そして、ついに水面が太陽のオレンジ色の光を反射し始めた.山は太陽を背にしているので、真っ暗な背景を作り出す.その暗闇の中、オレンジ色の海に釣り筏が浮かんでいる.賀田湾でなければ、見ることができない景観だと思う.
太陽ははるか上空まで昇っても、なお山の稜線は真っ黒なままだ.水平線は見れないけれども、神秘的な風景をみせてくれた早朝の賀田湾だった.
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