一刀岩から龍穴神社へ ②

　剣豪の里，奈良市柳生町にある天石立神社の一刀岩を見た後は一路，宇陀市の室生へ向かった．水の神，龍神を祀る室生龍穴神社にやってきた．鳥居をくぐる前から，その威厳のある雰囲気に圧倒されて，思わず足を止めてしまった．



　宇陀市観光サイトによると，龍穴神社では奈良時代から平安時代にかけて，朝廷からの勅使により，雨乞いの神事が営まれていたそうだ．さらに山中の奥に行くと、渓流近くに竜神がいるという妙吉祥龍穴がある．



　室生といえば女人高野室生寺が観光地として有名であるが，室生寺は元々，龍穴神社の神宮寺だったそうだ．この時間，参拝していたのは自分ひとりだけだった．



　境内には巨大な杉が林立し，陽射しを遮っている．そのため，日中でも薄暗くて物々しい雰囲気が漂っている．龍穴神社には，雨乞いの神である高靇神(たかおかみのかみ)が祀られている．



　拝殿の奥にまわると本殿がある．獅子が本殿をしっかりと守っている．ただひとり，この静かな社で獅子や狛犬を見つめていると，心の内にある全てのことを見透かされているような気がした．偽りや打算的な考えはしたくないと，強く思うのだった．



　本殿は春日造りの一間社にして，朱塗りが施されている．なんだか背筋がピンとなるような他の神社にはない雰囲気がある．一礼して龍穴神社を後にした．オートバイに跨ると，肩の力が抜けて，とても穏やかな心持ちになれたような気がした．