日の出前の6時過ぎ,まだ暗いうちに三重県は熊野市にある大岸壁―鬼ヶ城―へと向かった.鬼ヶ城の駐車場にオートバイを停めて,遊歩道のある海岸線をスマートフォンの明かりを頼りに歩いていく.水平線と雲の間が,橙色に染まっていた.
時間の経過と共に,水平線の先からやってくる淡い色の光によって,空が黄色に染まり始めた.海も淡い色の光を反射して,辺りは暗闇から徐々に解放されていくのだった.そして,沖合に浮かんでいる島―魔見ヶ島(マブリカ)―を,肉眼ではっきりと確認することができるようになった.
鬼ヶ城の大岸壁は,荒波による浸食作用で,大小多数の洞穴が形成されている.鬼たち海賊の隠れ家であったという平安時代の伝説が残っている場所だ.魔見ヶ島という名前もこの伝説に由来しているそうだ.暗い紅色の空の上に暗雲立ち込める魔見ヶ島は,まるで異世界を彷彿とさせるのだった.
この魔見ヶ島の周囲には,漁船が頻繁に行き交っていた.漁師さんが一人で乗っている小さな漁船が,特に多いような気がした.この辺りは磯釣りの絶好のポイントと言われており,たくさんの種類の魚が釣れるのかもしれない.
そんな鬼ヶ城の独特の光景に夢中になっていると,暗い紅色だった水平線と雲の間が,急に鮮やかな色に染まり始めた.時間を確認すると,ちょうど日の出の時刻だった.高鳴る気持ちを抑えながら,太陽が昇ってくるのを今か今かと待ち続けるのだった.
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