岐阜・福井県の酷道・険道を乗り継ぎ,九頭竜湖を抜けてからようやくたどり着いた越前海岸.そして,わたしにとって初めての越前海岸だ.越前海岸は梅雨の中休みにも関わらず,真夏のような暑さで太陽が真っ白にさんさんと輝いていた.
正午を回ってまだそんなに時間も経っていなく,雲ひとつない快晴のはずなのに,辺りは太陽の光で真っ白につつまれていた.何か特殊な大気と気候条件が重なったせいかもしれないが,衝撃的な越前海岸デビューだった.
越前海岸を初めて走ってみた感想は交通量が少なく,行き交う自動車もスピードをあげずにのんびり走行している感じで,何か時がゆっくり流れているような気がした.これには尾鷲・熊野の海岸線とおなじような匂いを感じ取る.
ただし,越前海岸が尾鷲・熊野の海岸線と決定的に違うのは,リアス式海岸でないことだ.海岸線を南北に走るR305は,起伏がほとんどなくてストレートの道が続く.このような道路事情がまたのんびりと自動車を走らせる要因なのかもしれない.
越前海岸のいろいろな場所を寄り道しながら走っていると,ようやく陽が傾きだす.真っ白だった空は群青色と茜色に染まり始める.蒸し暑くて仕方なかった陽気もすこしだけ涼し気な風が吹きはじめ,素肌に心地よさを覚える.
今日は越前海岸からすぐの内陸部にある鯖江市に宿を取ってあるので,久しぶりのサンセットを楽しむことにした.サンセットは日本列島の東側に当たる尾鷲・熊野の海岸線ではお目にかかれない光景なので,期待に胸を膨らませる.
サンセットを最後に楽しんだのはいつだろう.しばらく記憶を辿っていたが,思い出すことができなかった.そんなどうでもいいことを考えていると,海上にはまだ大小さまざまな船がいて,茜色の海の上をひっきりなしに航行していく.
そして,サンセットのクライマックスがいよいよ迫りつつある.ところが水平線の上には灰色の雲がいつのまにか立ち込めいていた.越前海岸もまた,やはり初見の者には胸を内をすぐには明かしてくれないものらしい.
とは言え,越前海岸のサンセットは高揚感をもたらし,久しぶりに我を忘れさせてくれた.後は今日という1日を宿で楽しめばいいだけだ.今宵の酒と肴を調達し,暗がりの道を鯖江市の宿へオートバイを走らせるのだった.
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