南伊勢町は押渕周辺に広い湿地帯があって,暖地性シダの群落が国の天然記念物に指定されているという.押渕は五ケ所湾西側の内陸部に位置している.国道から民家の立ち並ぶ押渕地区に進んでいくと,山の中に白瀧神社がある.
オートバイを駐車場に停めて,白瀧神社まで歩いていく.標識によると,神社までは300メートルほどだ.背丈の高い樹木が林立していて,谷の方からさわやかな風が吹いてくる.木製の鳥居が参道の至るところに建っているのが印象的だ.
そして,足元のすぐ近くには,シダが群生している.この辺りは,暖地性シダの北限地であると同時にとても珍しいシダの群落があるということで,昭和3年に国の天然記念物の指定を受けたそうだ.
参道を進んでいくと,鳥居が連続で立ち並んでいて,小川が流れている.白瀧から流れ来る川のはずなので,神社まではもうすぐだ.同時に気温がぐっと下がってくる.海の方は35℃くらいあるはずだが,ここは30℃を下回っていて,とても涼しい.
苔むした参道の傍らに,立派な歌碑が立っていて,” 離郷以来始めて村に帰り来て 先づ腹這ひて谷の水呑む ” 東季彦,とある.東季彦(1880年ー1979年)は奈良県の十津川村出身の法学者・歌人で,勲二等の勲章を授与された偉人だそうだ.
なぜここに十津川村出身の東季彦の歌碑があるのか,調べてみたがよくわからない.押渕出身で東季彦の縁者がいるのかもしれない.コロナウイルスが収束したら,地元の方に聞いてみることにしよう.
味わい深い歌碑から先は,谷を登っていくような感じだ.それにしても,山の中なのに大きな岩や奇岩がそこら中にあって,全部が苔むしている.これもまた,紀伊半島のミステリアスフェノメナのひとつかもしれない.
階段を上りきると,広場になっていて,滝の正面に鳥居が立っている.なるほど,神社の名前の通り,白瀧がご神体というわけだ.この辺りには,古くから白龍にまつわる伝説があるといわれている.
白瀧の落差は,10メートル弱といったところだろうか.言われてみればたしかに,滝はホワイトドラゴンのようにも見える.水量によって,いろいろな龍の姿が楽しめそうだ.水量が多いときに再訪してみるのもいいかもしれない.
南伊勢は海だけでなく山の中にもすばらしいところがある.押渕の白瀧権現は,日常の世界と隔絶された神秘的な場所だった.
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