大丹倉(おおにぐら)という流紋岩でできた大絶壁が,三重県熊野市は育生町の山中に存在する.岸壁の高さはおよそ300メートルということだ.開放感あふれる空間に大丹倉が、どっしりとその存在感を主張している.ここではオートバイがまるで玩具のように小さく見えてしまう.
一体どの様にしてこのような巨岩がここに形成されたのだろうか.調べてみても詳しい情報は,なかなか出てこない.紀伊半島のミステリアスフェノメナのうちの一つかもしれない.この景色を見ながら,大丹倉の誕生について,あることないことを色々と想像してしまうのだった.
そして,この大丹倉という名前の由来は,岩石に含まれる成分が酸化して赤く見えるので、赤色を示す"丹"と断崖絶壁を意味する"倉"とから名付けられたという.案内板によると,林道を経由すれば,この大丹倉の頂上まで徒歩5分でたどり着けるという.そうと知ったら,大丹倉の頂上を目指すしかない.
頂上へは、一般県道から舗装林道である赤倉線へと進んで行く必要がある.昼下がりの暖かな時候であっても辺りは薄暗く,ひんやりとした雰囲気が漂っていた.そして,道中には穴山関所跡という高さ30メートルの岩場も存在する.何となく神域を思わせるような感じがした.
そうして,無事に赤倉線の終点までたどり着くことができた.ここから大丹倉の頂上までは,歩いて5分だ.大丹倉を見上げていた県道から,ここまで随分と大回りして登って来たことになる.同時にこの赤倉線終点の地は,天狗鍛冶と言われた武士そして修験者でもあった近藤兵衛という豊臣秀吉と相関のあった人の屋敷跡でもあるらしい.
ここは,自然の畏怖と日本の歴史とが融合した空間だ.ひっそりとした大丹倉の山中に,ただ一人でいることに妙な心持がした.そして,大丹倉の頂上へと向かって,林道の中に吸い込まれていくのだった.
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