八重谷山の麓,阿曽の町から山の方へ狭い村道が,奥河内川に沿って続いている.そして,八重谷湧水の入口手前に風穴(ふうけつ)がある.この辺り一帯は,石灰岩で覆われていて,湧き水が存在するように水が豊富だ.そういうわけで,付近には風穴以外にも鍾乳洞が点在しているという.
風穴というと,関東出身の者としては富士山麓にある大きなものを連想するが,阿曽の風穴はかわいらしいほどに小さい.人がひとり入れるだけの穴が開いている.風穴の看板がなければ,うっかり通り過ぎてしまうかもしれない.
設置されている梯子を使って,風穴内部に降りてみると,電灯によって辺りは明るく照らし出されている.狭いが頭上の遥か上に天井があるため,閉塞感はほとんどない.ひんやりとした空気が,ほてった体に心地いい.
内部は数メートル進むと,浸水していて,それ以上はもう進むことができない.水に触れてみたが,それほど冷たくはなかった.そして,洞内の天井では,突然の来訪者に眠りを妨げられたのか,数羽の蝙蝠がせわしなく舞っていた.
洞窟はさらに奥の方まで続いている.風穴の看板によると,内部を流れる水は腰丈くらいあって,奥の方で水没しているという.もしかすると,水量さえ多くなければ,もう少し奥の方まで進めたのかもしれない.
残念ながら,風穴探検はあっという間のうちに終わってしまった.これ以上,蝙蝠たちの眠りを妨げるのも悪いので,風穴を後にすることにした.出口から見える地上の色とりどりの景色が,とても鮮やかに見えるような気がした.
やっぱり,暗いのは夜だけがいい.青空の下,次なる紀伊半島のミステリアスフェノメナを探しにオートバイを走らせるのだった.
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