山深いサンギリ線を走り抜けると、坂本ダムの堰堤が現れる。堰堤を渡り切れば、R425に接続する。坂本ダムから西は、通行止めになっているので、ここから先は尾鷲を目指して、酷道を東へひたすら走り続けるだけだ。
R425の下北山村から尾鷲区間は、常にどこかしらで落石や崩落が起きているので、通行止めが解除されることがほとんどない。関西に来てから三年が経ったが、この区間を走行できたのは、ただの一回きりだ。
そういう複雑な道路事情もあって、坂本ダムまでやって来ることは中々できない。位置的には大台ケ原山の南で、大自然の真中にあり、とても静かできれいなところだ。ダム湖は細長く入り組んでおり、湖岸を沿うように酷道が走っている。
かつては、集落もあったが、ダム湖の下に沈んでしまったため、無人地帯になっている。交通量はゼロで、当然、外灯や自販機などもない。事故やマシントラブルが起きた場合を考慮すると、一人で走行するには少し心もとない場所だ。
それでも、峡谷のような景色が続くダム湖と静まり返った自然の風景に、心惹かれるものがある。そして、走れるときに走っておかないと、どうしても気が済まないという、妙な義務感に駆られてしまう。
坂本貯水池を走るならセットで訪れたい場所がある。かつて東ノ川集落があった場所へ、国道から県道が分岐している。県道を進むと、まずは通行禁止となった西ノ谷の吊り橋が現れる。吊り橋を構成する部材は、焦げ茶色に錆びついてしまっている。
そして、東ノ川集落跡地の手前に、東ノ川小中学校がある。今や見るも無残な姿になってしまっているけれど、鉄筋コンクリート製の校舎が、このような山深い場所にあって、異彩を放っている。
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