尾鷲港に立ち寄った後は,海岸線を南下して,いつものように波田須で熊野灘の景色を楽しんだ.さあ,帰ろう.波田須の少し南に位置する大泊から,国道で北上し,池原ダムで一息入れることにした.
台風の影響もあって,池原ダムの水量は非常に多かった.普段は,湖岸が露出しているけれど,この日は樹木のある所にまで水位が到達していた.水量が多いと,気になるのがツキ谷の滝である.
時刻は14時を過ぎており,まっすぐ帰らなければ,漆黒の峠越えを余儀なくされる.しかし,ツキ谷の滝をひと目見たくて,池原ダムの東へとオートバイを走らせた.池原ダムの天端から東へと続く道は,R425となっている.
池原ダムからR425を進んで行くと,台風の影響によって,山から水が溢れ出ていた.普段はちょろちょろとしか流れていない砂防堰堤から,滝のような水が流れていた.堰堤から流れる水は,道路の下を通って,池原貯水池へと注がれていく.
水量の多い道を呆気にとられながら進んで行くと,真っ赤な橋―備後橋―が現われた.一年以上の前の話だが,この橋の袂で尾鷲方面からロードバイクでやってきたライダーと談笑したことがあった.あのライダーは,今頃どこを走っているだろうか.
備後橋の先を進んで行くと,水量はさらに増した.山肌から流れ落ちてくる雨水が,道路を横断して流れていた.国道はまさに冠水状態であった.
オートバイは雨水でドロドロだけれど,水量の多いときにだけ現われる無名の瀑布を,特等席で鑑賞することができた.物音ひとつしない山奥に響き渡る水しぶきの音は,危機迫るものがある.これもR425の魅力のひとつかもしれない.
そして,ようやくツキ谷まで辿り着いた.谷から豪快な滝が,水しぶきを上げながら流れていた.この谷の少し上流の方に,千尋滝という名瀑があって,ちょうど一年前の今頃に見に行ったことがあった.千尋滝へ行くには,時間と装備の都合上,とても無理である.今回は,ツキ谷の滝で満足して,ダムまで戻ることにした.
池原ダムまで戻ってくると,すっかり陽は暮れていた.ツキ谷まで寄り道してしまったので,予想通り,自宅へ着くまでの間に真っ暗となってしまった.コロナ禍で交通量が減っているせいか,野生のシカと出くわすことが多かった.リスやイタチのようなすばっしこいものや野ウサギまで見かけた.このコロナ禍で,特に夜は野生動物たちの行動範囲が広がっているのかもしれない.
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