池原ダムから出発した,上北山村奥地の探検もいよいよ終盤だ.坂本ダムを過ぎて少しいった所にある,出合橋をわたって北上した.この道は国道よりも幅員が狭く,落石した箇所が至るところにある.いつ落石があってもおかしくない怖い道だ.
坂本ダム湖畔に沿ったこの道は,ガードレールのない区間が多い.湖畔沿いといっても,断崖絶壁の上を走行することになる.斜面には植物たちが,屈強な生命力で必死に根をはっている.生い茂る若葉によって,美しい湖畔の景色を中々みることができない.
ところが植物たちもお手上げの場所があるらしい.視界が僅かに開ける場所がある.美しい湖畔と共に,西ノ谷の吊り橋を眺めることができた.つり橋が,峡谷の風景に違和感なく溶け込んでいた.都会の子供らに秘境とはどんな所かを教えるには,この風景ひとつで事足りるかもしれない.
美しい湖畔の景色を見ながら進んでいると,忽然と現われた東ノ川小中学校.昭和39年に建てられたものの,その5年後には人口衰退により,その役目を終えることになったそうだ.ここで学んだ生徒は5名だけという.卒業生たちはちょうど還暦を過ぎたころで,どこかの地で余生を楽しんでいることだろう.
東ノ川小中学校の先には,集落跡がある.東ノ川小中学校が閉鎖したと同時に,昭和44年から無人地帯となっているそうだ.集落跡の一番初めには,平成17年に幕を閉じたあの東の川簡易郵便局があった.そう思うと,平成もずいぶん昔のことになってしまった様な気がした.
池原ダムから先は,昭和30年代に建設された橋や道路,廃墟が多く目に付いた.しかし,それ以外は美しいダム湖の他に何もないところだ.そして,北山村の奥地は,時代の流れを感じることのできる,哀愁ただよう秘境の地だった.新緑の若葉が,強い日差しに照らされて,眩しく輝いていた.
帰り際に備後橋で休憩していたところ,尾鷲市から抜けてきたライダーと出会った.静まり返った秘境の地で,酷道談義による話し声が,峡谷に響き渡る様だった.
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