嶋津の筏師の道に一歩足を踏み入れた途端,長いあいだ変わっていないであろう景色から,時の経過を濃縮したような独特な雰囲気に包まれるような気がした.森を外から見るよりも一層,不思議な感覚を覚えるのだった.
道に繁茂した苔の上を歩くと,ふかふかした感触が足元から伝わってくる.この感触が日常世界とは違った空間にいるような錯覚に陥らせるのだった.小さな森であるが,小道が縦横無尽に至るところに分岐していた.
迷路のような道を西から東へと森を抜けるように,北山川の方向に向かって進むことにした.すると,北山川特有の青い水面が木々の間から見えてきた.
森から河原へと北山川の前まで降りてみた.森の中の閉塞感から急に開放感に溢れた河原の雰囲気に,少し戸惑いを覚えた.河原の石ころは大きくて,とても歩きにくかった.そして,北山川の透き通る水へ,理由もなしに何度も手を入れては出したりしてみた.
しばし河原でゆっくりした後,空想を描きながらオートバイの元へと戻った.元々は森だったところに何らかの自然現象で川ができて,森が中州となって取り残されたのだろうか.色々な事が頭に思い浮かんだ.
嶋津の筏師の道は,とても不思議に満ちたところだった.この辺りには,まだまだ不思議な場所がたくさんある.傾きかけた日を浴びながら,今度はどこを探検してみようか考えながら,キャンプ地へオートバイを走らせるのだった.
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