三重県の大紀町に錦という港町がある。港町の奥へ進んでいくと、塩浜山村広場という高台へ登っていく一本の道が分岐している。そして、この高台から錦湾を一望することができる。波が強く、養殖のいけすが気持ちよさそうに浮かんでいた。
塩浜山村広場は、ヘリポートにもなっていて、ずいぶんと開けた場所になっている。津波が起きた時の避難場所になっているものと思われる。この場所への道は、グーグルマップにも載っていない。誰もやって来ることのない、とても静かなところだ。
紀伊半島の静かだった場所にも、コロナの影響で密を避けるためか、大勢の人を見かけるようになった。静かな場所へ行くには、酷道を走る以外にないのかもしれない。そのような中で、塩浜山村広場はとても貴重な場所だと思う。
塩浜山村広場は、錦湾の展望だけでなく、錦の港町も見渡すことができる。錦湾はリアス式海岸なので、町の手前まで来ると、波がほとんど立っていない。そして、山を背にして民家がびっしり並んでいる。
町の風景でひと際、大きな建物が異彩を放っている。錦タワーという、展望台を兼ねた防災塔だ。円柱型の錦タワーと角柱型の第二錦タワーの二つがある。どちらも20メートルを超える高さを誇っており、施設内に500人ほど避難できるそうだ。
第二錦タワーが建設されたのは、2012年で完成してからまだ10年も経っていない。過去の発生周期から南海トラフ地震が、いつ起きてもおかしくない時期に来ている。できることなら、このタワーが活躍する日が来なければいいと思うが、この二つの防災塔があれば安心だ。
防災意識の高い港町、錦での静かな午後のひと時だった。
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