◆ 子どもたちの心に何を育むのか
~隣国とのいさかいをエスカレートさせる日本の歴史教科書 | 星の金貨プロジェクト

○ 60年前に結党された自由民主党の主目的のひとつは、戦後の教育改革の内容を再び覆すこと
○ やられたからやり返すという類いの愚劣ないさかいが、国家というレベルで現実になろうとしている
○ 最終段階に入った日中韓の教科書戦争、日中、日韓の外交関係を一層悪化させる恐れ
《エコノミスト 4月10日》
昨年、日本の下村文部科学大臣はエコノミストの取材に対し、領土問題については彼が『正しい』と考えている見解を日本の子供たちが教えられるよう望んでいると語りました。
下村文部科学大臣は過去、第二次世界大戦(太平洋戦争)中の日本軍の侵略行動に行為について後悔の念を表明した1995年の村山声明について、疑問を呈したことがあります。
さらに彼は、東シナ海の尖閣諸島(中国名釣魚諸島)について、日本の領土であるという点について議論の余地は無いと主張しています。
そして下村大臣は日本の過去の歴史に関する解釈の変更を行うという誓約を、忠実に実行しています。
4月初めの定期的な審議の後、中学校で使われる地理、歴史、公民の教科書が隣国と紛争になっている領土問題について、下村氏が所轄する文部科学省が現在の日本政府の見解をそのまま強調する内容となっていることが明らかになりました。
これから日本の学童たちは、尖閣諸島だけでなく、韓国が独島と呼び実効支配している竹島が『日本固有』の領土であるという事を学習することになります。
認定教科書の内のいくつかは、焦点となっている領土問題に関する記述量を倍に増やしました。
2011年には4冊の教科書にだけ掲載されていた『韓国は竹島を不法に占拠している』と言う記述が、今回は13冊にまで増えました。
日本の戦争犯罪に関する記述に関しても複数の歴史の教科書が、1937年に日本軍が南京を占領した際中国人多数が殺害されたとされる史実について、極悪な印象を持つ『大虐殺』と言う表現を改め、単に『事件』と言い換えるか、または記述そのものを削除しました。
また教科書出版会社の内の1社は、大日本帝国の軍隊が運営していた売春施設に、アジア人女性が強制的に徴発されたことを証拠立てる写真と証言を削除するように求められました。
こうして改訂された教科書には、いわゆる「従軍慰安婦」として女性たちが強制的に徴発・使役されたとする証拠を、日本政府は一切確認していないとの記述がなされています。
こうした教科書の記述内容の変化は、昨年文部科学省によって改められた教科書検定基準を反映しています。
もし種々のテーマについての記述内容が日本政府の見解と著しく異なっていたり、あるいは教育基本方針が最終目標とするものから大きく外れていれば、教科書として認定されなくなる可能性があります。
この教育基本方針は2007年、短命に終わった第一次安倍内閣の下で、『愛国心教育』を取り入れるとして、初めて改定が行なわれました。
2012年、再び首相に座に就いた安倍晋三氏は、『戦後体制からの脱却』と言う言葉をことあるごとに口にします。
その中身は、戦前の大日本帝国時代に実施された帝国主義政策に関する罪の意識を払しょくし、再び国家のプライドを取り戻すというものです。
安倍氏とその周辺の保守派・タカ派の人間たちは、戦後の歴史教育が1945年から1952年にかけ日本を占領統治していたアメリカ軍の見解を押しつけられた挙句の『自虐史観に基づく』ものだとして、長い間不満を募らせてきました。
60年前に結党された自由民主党の主目的のひとつは、戦後の教育改革の内容を再び覆すことである、教科書問題について市民の立場から検証を続ける俵義文氏がこう語りました。
今や自民党はそれを現実のものにするだけの政治的権力を握っている、俵氏がそう指摘しました。
小中学生たちにどのような精神を育むかという問題を巡り、やられたからやり返すという類いの愚劣ないさかいが国家というレベルで現実になろうとしています。
韓国両性平等教育振興院は、小学校と中学校に従軍慰安婦問題を取り上げた補助教材を配布すると発表しました。
すべての歴史科目の教師は第二次世界大戦(太平洋戦争)中の日本軍の売春制度について、特別講習を受けることになっています。
ただし、それを子どもたちへの教育に反映させるかどうかは学校の判断に任されます。
そして韓国の与党は人々に対し、独島(竹島)に関しもっと関心と理解を深めるよう呼びかけました。
中国ではすでに、小学生、中学生が1930年代と1940年代に日本が行なった中国侵略について、広範囲な学習を行っています。
さらに今年、南京大虐殺の『必修』テキストが全教室において使われるべく採用されました。
最終段階に入ったとも言える日本・中国・韓国による教科書戦争は、今年3月に2012年以降初めて3か国の外相が会談することによって成立した仮の和解を再び破壊してしまう可能性を持っています。
さらに先月、日本の外務省がホームページに掲載している韓国に関する記述のうち、「我が国と、自由と民主主義、市場経済等の基本的価値を共有する」との表現を削除したことも、関係の悪化に拍車をかけることになりそうです。
日本の教科書改訂に対する韓国や中国が反発していることについて尋ねられると、下村文部科学大臣は日本政府は単に他の見解との間の「釣合い」を保とうとしているだけだと答えました。
安倍首相は4月後半訪米し、アメリカ議会の両院合同会議で演説を行うことになっています。
安倍首相がこの「釣合い」の定義について、質問を受ける可能性があるとする見方があります。
しかし、多くのアメリカ人は安倍首相がこの種の問題に関する『狂信者(true believer)』だという事を理解していない、こう語るのはアジアの教科書戦争を研究しているスタンフォード大学のダニエル・スナイダー氏です。
安倍氏は首相として妥協をする可能性はあるが、日本の戦後体制に終止符を打つという長期的信念が一切揺らぐことは無いと指摘しました。
http://www.economist.com/news/asia/21648157-japan-reviews-history-textbooks-its-schoolchildren-and-riles-its-neighbours-hearts-and-minds?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
『星の金貨プロジェクト』(2015年4月21日)
http://kobajun.chips.jp/?p=22962
~隣国とのいさかいをエスカレートさせる日本の歴史教科書 | 星の金貨プロジェクト

○ 60年前に結党された自由民主党の主目的のひとつは、戦後の教育改革の内容を再び覆すこと
○ やられたからやり返すという類いの愚劣ないさかいが、国家というレベルで現実になろうとしている
○ 最終段階に入った日中韓の教科書戦争、日中、日韓の外交関係を一層悪化させる恐れ
《エコノミスト 4月10日》
昨年、日本の下村文部科学大臣はエコノミストの取材に対し、領土問題については彼が『正しい』と考えている見解を日本の子供たちが教えられるよう望んでいると語りました。
下村文部科学大臣は過去、第二次世界大戦(太平洋戦争)中の日本軍の侵略行動に行為について後悔の念を表明した1995年の村山声明について、疑問を呈したことがあります。
さらに彼は、東シナ海の尖閣諸島(中国名釣魚諸島)について、日本の領土であるという点について議論の余地は無いと主張しています。
そして下村大臣は日本の過去の歴史に関する解釈の変更を行うという誓約を、忠実に実行しています。
4月初めの定期的な審議の後、中学校で使われる地理、歴史、公民の教科書が隣国と紛争になっている領土問題について、下村氏が所轄する文部科学省が現在の日本政府の見解をそのまま強調する内容となっていることが明らかになりました。
これから日本の学童たちは、尖閣諸島だけでなく、韓国が独島と呼び実効支配している竹島が『日本固有』の領土であるという事を学習することになります。
認定教科書の内のいくつかは、焦点となっている領土問題に関する記述量を倍に増やしました。
2011年には4冊の教科書にだけ掲載されていた『韓国は竹島を不法に占拠している』と言う記述が、今回は13冊にまで増えました。
日本の戦争犯罪に関する記述に関しても複数の歴史の教科書が、1937年に日本軍が南京を占領した際中国人多数が殺害されたとされる史実について、極悪な印象を持つ『大虐殺』と言う表現を改め、単に『事件』と言い換えるか、または記述そのものを削除しました。
また教科書出版会社の内の1社は、大日本帝国の軍隊が運営していた売春施設に、アジア人女性が強制的に徴発されたことを証拠立てる写真と証言を削除するように求められました。
こうして改訂された教科書には、いわゆる「従軍慰安婦」として女性たちが強制的に徴発・使役されたとする証拠を、日本政府は一切確認していないとの記述がなされています。
こうした教科書の記述内容の変化は、昨年文部科学省によって改められた教科書検定基準を反映しています。
もし種々のテーマについての記述内容が日本政府の見解と著しく異なっていたり、あるいは教育基本方針が最終目標とするものから大きく外れていれば、教科書として認定されなくなる可能性があります。
この教育基本方針は2007年、短命に終わった第一次安倍内閣の下で、『愛国心教育』を取り入れるとして、初めて改定が行なわれました。
2012年、再び首相に座に就いた安倍晋三氏は、『戦後体制からの脱却』と言う言葉をことあるごとに口にします。
その中身は、戦前の大日本帝国時代に実施された帝国主義政策に関する罪の意識を払しょくし、再び国家のプライドを取り戻すというものです。
安倍氏とその周辺の保守派・タカ派の人間たちは、戦後の歴史教育が1945年から1952年にかけ日本を占領統治していたアメリカ軍の見解を押しつけられた挙句の『自虐史観に基づく』ものだとして、長い間不満を募らせてきました。
60年前に結党された自由民主党の主目的のひとつは、戦後の教育改革の内容を再び覆すことである、教科書問題について市民の立場から検証を続ける俵義文氏がこう語りました。
今や自民党はそれを現実のものにするだけの政治的権力を握っている、俵氏がそう指摘しました。
小中学生たちにどのような精神を育むかという問題を巡り、やられたからやり返すという類いの愚劣ないさかいが国家というレベルで現実になろうとしています。
韓国両性平等教育振興院は、小学校と中学校に従軍慰安婦問題を取り上げた補助教材を配布すると発表しました。
すべての歴史科目の教師は第二次世界大戦(太平洋戦争)中の日本軍の売春制度について、特別講習を受けることになっています。
ただし、それを子どもたちへの教育に反映させるかどうかは学校の判断に任されます。
そして韓国の与党は人々に対し、独島(竹島)に関しもっと関心と理解を深めるよう呼びかけました。
中国ではすでに、小学生、中学生が1930年代と1940年代に日本が行なった中国侵略について、広範囲な学習を行っています。
さらに今年、南京大虐殺の『必修』テキストが全教室において使われるべく採用されました。
最終段階に入ったとも言える日本・中国・韓国による教科書戦争は、今年3月に2012年以降初めて3か国の外相が会談することによって成立した仮の和解を再び破壊してしまう可能性を持っています。
さらに先月、日本の外務省がホームページに掲載している韓国に関する記述のうち、「我が国と、自由と民主主義、市場経済等の基本的価値を共有する」との表現を削除したことも、関係の悪化に拍車をかけることになりそうです。
日本の教科書改訂に対する韓国や中国が反発していることについて尋ねられると、下村文部科学大臣は日本政府は単に他の見解との間の「釣合い」を保とうとしているだけだと答えました。
安倍首相は4月後半訪米し、アメリカ議会の両院合同会議で演説を行うことになっています。
安倍首相がこの「釣合い」の定義について、質問を受ける可能性があるとする見方があります。
しかし、多くのアメリカ人は安倍首相がこの種の問題に関する『狂信者(true believer)』だという事を理解していない、こう語るのはアジアの教科書戦争を研究しているスタンフォード大学のダニエル・スナイダー氏です。
安倍氏は首相として妥協をする可能性はあるが、日本の戦後体制に終止符を打つという長期的信念が一切揺らぐことは無いと指摘しました。
http://www.economist.com/news/asia/21648157-japan-reviews-history-textbooks-its-schoolchildren-and-riles-its-neighbours-hearts-and-minds?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
『星の金貨プロジェクト』(2015年4月21日)
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