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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

◆ 教育を正常化するには職員会議を中心とした教育体制に戻すしかない

2025年02月27日 | こども危機

  《『いまこそ』から》
 ◆ 「教育」の崩壊と2025年度の教育予算(閣議決定案)
   ~財務省に否定された文科省の給特法「13%」

 ◆ 教育の崩壊状況が深刻だ

 昨年度末になって教育の諸調査が公表されている。これらを見ると、教育現場の今が深刻な状況であることがわかる。
 文科省調査によれば、2023年度に公立の小中学校と特別支援学校で精神疾患を理由に90日以上の「休職」になった教員が、22年度より580人多い7119人となり、3年連続で過去最多となったことが報告された。
 さらに、1カ月以上の『病気休職』取得者を含めると1万3045人(1.42%)に上った。
 性犯罪や暴力行為などで懲戒処分や訓告を受けた教員も320人となり過去最多であった(朝日24.12.21)。教員労働が精神を荒廃させている状況をうかがい知ることができる。

 危機的であるのは教員だけではなく児童生徒の状況も深刻だ。
 都内の小中の不登校は、23年度で3万1726人にのぼり、08年度以降で最多。全国の数字はさらに危機的で不登校が34万人(3.7%)以上であった(東京24.11.1)。この数字も異常であり、教育の中で、子どもたちの状況が危機的であることを示している。

 これまで教育現場の問題点とされてきたのは教員不足であるが、全国の教委は試験の実施時期を前倒ししたり、小学校では専科を増やすなど対策を講じてきた。
 しかし、その効果は低調で、全国8割の自治体で受験者数が減少している(朝日、24.11.24)。そして、担任のいないクラスができたりして、教育の実態は崩壊状況になってきているのである。

 ◆ 教育予算と財務省との論争

 こうした危機的な状況に対して、文科省は25年度教育予算として、給特法の元凶とされてきた教職調整手当4%13%に引き上げる予算の請求案を出した。教員不足を解消するために賃金増で対応しようというものであった。
 ところが、これに対して財務省は11月11日付の予算に関する「文教・科学技術」の文書で13%に引き上げても「必ずしも教職の魅力向上につながらない」とし、この案では「実効性のある学校業務の縮減案と連動していない」と批判したのである。

 同省の指摘によれば、13%というのは「月26時間(=年312時間)の時間外在校時間に相当し、労働基準法の上限年360時間に迫るもの」だとしたのである。
 教職調整額は超勤手当の相当分とされ、中教審の指摘した「教師の平均時間外勤務時間を月20時間程度に縮減」の目標にも反することになるとしたのである。
 このため財務省は調整額よりも労働時間の縮減を優先すべきであると指摘している。

 この結果、来年度予算案は現行の4%から5%に微増するに留まり、30年までに段階的に10%にしていくということで決着した。
 しかし、決着した予算案では教員の6000人以上の定数微増を実現するということが決まった。
 これほどの定数増は20年ぶりであり、その内容は、

①小学校4年生への教科担任制の拡大、
②中学の生徒指導担当教員の配置(4年間で6600人増)、
③中学校の35人学級(26年から3年間で1.7万人増)等である。
さらに、教員の業務支援員の配置等も決まった。

 そして、27年度以降に、働き方改革の進捗状況を検証することが決まったのである。

 ◆ この予算案では教育のブラック化は続くことになる

 文科省は教員不足の問題を賃金問題として解決を図ろうとした。
 これに対して財務省は勤務時間の縮減を優先させるべきだとしたが、最終的に定数増で決着したことになる。
 この論争を朝日新聞は2025年1月4日付で報道しているが、その中で文科省が定数増を要求して折り合いをつけた旨が記されている。

 しかし、過去、20年間も定数増に消極的であった文科省だが、「13%要求」が否定されたことから出したプランB案であったようだ。
 「30人学級」などの要求はかなり前から現場だけではなく保護者の団体などから出ていた重要な課題であったはずだ。その教員定数増に消極的であり、文科省が進めてきたのは最先端教育など、能力の高い児童生徒の育成にあった。
 そのためにとり残された児童生徒や教員までもが、学校へ行けなくなったり、精神疾患に陥るなど学校教育全体が地盤沈下してきている。

 「教育に命令は馴染まない」、これは戦後教育が一貫して守ってきたものであった。これを支配と命令の場に変えたのは、2000年頃より始まった「日の丸・君が代」攻撃からであった。
 同時に、2000年に東京都に始まる業績評価の導入であった。

 それまでの職員会議を中心とする協働の教育体制を個々人の成果に分断し、横の繋がりを分断したのである。教員も児童生徒も成績主義に基づく教育体制の中に巻き込んでいったのである。
 この結果、教員も児童生徒も精神疾患が増大する今日の状況となっていったといえる。

 ところで今回の論争での、大きな問題点は深刻な状況にある教育の現状をどのように改善していくかの道筋が見えないことだ。
 2027年に点検するとしているが、教育現場の状況は待ったなしの深刻な状況になっている。教育を正常化するには職員会議を中心とした教育体制に戻すしかないのではないだろうか。
 このままでは、切迫する教育の危機に対して改善する道が見えないままなのである。

(永井)

予防訴訟をひきつぐ会通信『いまこそ No.33』(2025年1月22日)

 


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