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パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

経営方針とか社長の話だけでは"企業の実態"が見えてこない

2017年02月15日 | 格差社会
  《日刊ゲンダイ 注目の人 直撃インタビュー》
 ◆ ユニクロ潜入が話題 横田増生氏が明かす日本企業の光と影


 きっかけはユニクロの柳井正社長のこんな言葉だったという。
 〈悪口を言っているのは僕と会ったことがない人がほとんど。うちの会社で働いてもらって、どういう企業なのかをぜひ体験してもらいたい
 で、言われた通り、実際にアルバイトとして“就業”。15年10月から1年間以上にわたり店舗で潜入取材したジャーナリストの横田増生氏
 昨年12月から、週刊文春に掲載された衝撃の“現地ルポ”の生々しかったこと。「働き方」が問われている今、ユニクロのみならず、日本企業の「光と影」を語ってもらった。
 ◆ きっかけは「面白そう」
――横田さんの潜入取材は05年の大手通販のアマゾンを皮切りに、15年には物流大手ヤマト運輸佐川急便。今回のユニクロは4社目ですが、潜入取材ってきつくないですか?
 アマゾンは半年間働きました。ユニクロは全部で3店舗で働いた。最後に働いたビックロでは、基本的に火、土、日曜の週3回勤務で、1日8時間。休憩と通勤時間を加えれば約10時間の拘束です。そのうえ、これは取材なんだけど、現場で長時間メモを取っていると他の従業員に怪しまれてしまう。だから記憶し、帰宅後、その日のうちにメモをまとめる。これも時間的にキツかった。
――それでも潜入取材をやろうと思ったのは?

 最初は「面白そう」だったんです。アマゾンに潜入した時は。それを本にまとめたら予想以上に反応がよかった。「こんなに受けるのか」と意外に感じたのを覚えています。
――世間が持っている企業イメージと労働環境との落差というか、そこに多くの人が関心を持ったのでしょうね。
 企業って、経営方針とか社長の話だけでは見えてこない。そこで働いている人はどうなのか。両方見えないと企業の実態は見えてこない。社長の話なんて、いいことしか言わないわけですからね。まして、労働問題ってのは企業にとって痛いところというか、見せたくないところですからね。
――ヤマトと佐川に潜入したのは?

 どちらも取材を断られたんです。それじゃあ、また潜入してみようかと。

――ユニクロも同じ?

 そうです。潜入する以外に取材方法は限られている。とにかく、関係者がしゃべらないんです。社員や関係者には厳しい「守秘義務」が課せられているからです。毎日、朝礼や通達で「守秘義務」としつこく言われる。それに、僕は11年にユニクロの本(「ユニクロ帝国の光と影」)を書いてから記者会見にも入れてもらえない
――こうなると、潜入するしかないですね。

 ユニクロが重視する守秘義務って、範囲がどこまでなのか疑問でした。例えば、顧客名簿とかデザインのパターンなどは外に持ち出したら守秘義務違反というのは分かります。
 しかし、キツいとか厳しいとか職場環境を部外者に話すことも守秘義務違反なのか。一般的に、潜入ルポは現場を退いてから書くものですが、今回はアルバイト契約を結んだまま週刊文春に書きました。僕が書いたことが、守秘義務に違反するのか否かをユニクロに問いたかったという意味もありました。
 結局、ユニクロ側は僕を懲戒解雇できず、より軽度な諭旨解雇という形を取らざるを得ませんでした。
――これまで取材したアマゾンやヤマト運輸、佐川急便、ユニクロに共通するものは何でしょう。
 まずは、どこも取材を積極的に受けないということ。特に僕のようなフリーランスのジャーナリストの仕事依頼は、はねつけてしまう。
 そういう企業について書かれた本は、「いいこと」しか書かれていない。中にはちゃんとした本もありますけど。経済紙などを読んでいると、企業は全てうまくいっているように見える。
 「本当なの?」という疑問は湧きますね。企業の実態は決算書や経営計画だけ見ても分からない。現場で働いている人たちはどうなのか。その“実態”は中に入ってみないと分からないのです。
――取材を受けない企業、つまり秘密主義の会社って労働環境はキツいですか?

 どこも厳しいです。これは第2の共通項と言えます。
 先日、佐川急便の配達員が荷物を地面にたたきつける映像がネットにアップされ、ニュースになりました。あれはやりすぎでしたけど、配送センターなどでは、荷物を蹴飛ばしたり、ポンポン投げたりというのは珍しくありません。人が少ないのに荷物が多すぎる。一個一個丁寧に扱っていたら、配送の時間に間に合いませんからね。
 ◆ 企業の利益に合った“働き方の多様化”

――こういった状況を招いているのは、経営者の考え方に問題があるのか、それとも、社会が悪いのか。つまり、しょっちゅう不在だったり、正確な時間通りの配達などを求める客も問題じゃないかと。
 両方だと思います。社会的なニーズで言えば、消費者はやはり「安さ」を求めている。それに応えるために企業も努力する。ユニクロには、利益水準を高めたいという考えがあるので、最も費用がかさむ仕入れや人件費を下げるしかない。今や、最低賃金が月1万数千円の東南アジアの国に生産拠点が移っています
 それでも店舗の売り上げが落ちると、「このままでは店が潰れます」とか「会社が倒産してしまいます」などと言われ、スタッフの出勤日が削減されることが少なくありませんでした。
――そんなに経営が厳しいんですかね?

 もっと人件費を出しても倒れないと思いますよ。人件費を削れば、人が入れ代わり立ち代わりという状況になる。新しい人を教育するだけでも時間がかかる。得してるようで、得してないんじゃないかっていう気もしますね。
――一方で、政府は「働き方改革」を掲げ、同一労働同一賃金や非正規雇用の処遇改善を訴えている。これで労働環境は良くなりますか?
 働き方改革というけれど、ユニクロもまだまだ非正規社員が圧倒的に多い
 地域正社員という言葉もクセモノです。入社前は「自由な人生設計」「ワークライフバランス」と、いろいろな選択ができることをうたうのですが、実際に入社するとだんだん話が変わってくるんです。「もうちょっと責任持ってやってね」と、忙しい日ばかりに仕事を入れられてしまう
――「自由な働き方」なんて、通用しませんよね?

 ヤマト忙しい時間帯の2~3時間だけピンポイントで募集します。「主婦が働きやすい」とのうたい文句ですが、「そんなバカな」と言いたい。通しで働いた方が稼げるわけですから。
 結局、「働き方の多様化」などと言いますが、「一番忙しいときだけ来てね」というのは、企業の利益に合わせた“多様化”ですよ。
 ◆ メディアはスラップ訴訟に反対すべき

――これから先、人工知能などの技術が発達していきます。ますます末端の職種しか残らず、賃金はどんどん下がっていってしまうのではないでしょうか。
 それでも、ドライバーがいないと物を運べませんよね。「ドローンを使えばいい」という論調もありますが、実現はまだまだ先ではないか。30キロの水を持ったドローンが上空を飛び交っていたら怖くないですか。
 アマゾンでは先日、荷物を仕分けるロボットがニュースになっていましたが、本はハードカバーやソフトカバー、新書に文庫と一冊一冊仕様が違います。人の手を使わないとなかなか引っぱり出せないんですよ。
――横田さんは「ユニクロ帝国の光と影」を11年に出版後、ユニクロに名誉毀損で2億円もの賠償請求を求める裁判を起こされた。勝訴したものの、大企業が法外な額の損害賠償訴訟を起こして報道を萎縮させる。いわゆるスラップ訴訟はなかなかなくなりませんね。
 億単位のお金を個人が払えるわけがないですから、脅しとしか言いようがないですね。新聞、テレビなどの枠を超えて、メディアは一丸となってスラップに反対する体制を組んだ方がいいと思います。
 スウェーデンでは中小映画会社が米国の食品大手「ドール」を糾弾する映画を作ったら、ドールから巨額訴訟を起こされた。これにスウェーデン国内の世論が沸騰。最後は国会で上映会も開いて、結果的にドールは訴えを取り下げました。日本ではちょっと考えられない。いい意味での消費者運動があって、うらやましいなと思いましたね。
 (聞き手=本紙・小幡元太)

 ▽よこた・ますお 1965年、福岡県生まれ。関西学院大卒。物流業界紙編集長を経てフリージャーナリストとなる。05年に初の潜入ルポ「アマゾン・ドット・コムの光と影」(情報センター出版局)、15年にはヤマト運輸と佐川急便の物流センターへ潜入した「仁義なき宅配」(小学館)を執筆。今回のユニクロ潜入のきっかけとなったのは、11年発売の「ユニクロ帝国の光と影」(文芸春秋)だ。
『日刊ゲンダイ』(2017年1月30日)
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/198275
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