◆ 学習指導要領改定で"政府見解"を教え込み
~教育学者らパブコメを呼びかけ
小学校で2020年度、中学は21年度、高校は22年度から年次進行で実施する、学習指導要領改定に向け、文部科学省がとりまとめた中教審の『審議まとめ』について、募集しているパブリックコメントの締め切り(10月7日夜)が迫っている。
前回の改定時(08年)は小学校音楽の"君が代"で、それまでも全学年で「指導する」としていたものを、日本会議系政治団体が主導し大量のパブコメを同省に集中させ、「歌えるよう指導する」と加筆するなど、国家主義的介入があっただけに、教育学者や現場教員は、「立憲主義の立場からのパブコメを」と呼びかけている。
立憲主義に反する内容が盛られる危険性の高いのは、高校の公民科で「現代社会」を廃止し新設する必修科目「公共」だ。
「公共」は自民党が10年の参院選政策集『J-ファイル2010』で、「国旗・国歌を尊重し、わが国の将来を担う主権者を育成する教育を推進します」という、政治色の濃い目的で設置を主張したのが始まり。高校にはない道徳の内容も盛るため、"愛国心"が入る可能性は大。
現に5月26日、中教審教育課程部会の社会・地理歴史・公民ワーキンググループ(以下、WG)の会合で、文科省が出した「公共」の構成内容の原案は、「自立した主体として」という語句を冠してはいるものの、生徒に「国家・社会に参画し」と要求。改定教育基本法第2条3号の「主体的に社会の形成に参画し」という文言に、勝手に「国家」を加筆しようとしたのだ。
同日のWGでは、「『社会』はいいが、(児童・生徒を)『国家』に参画させるのは一種の動員だ」などと3人の委員が批判したため、同省は同法第1条の「・・・国家及び社会の形成者として・・・」という規定に沿う表現に修正した。こういう経緯もあるのだ。
「公共」は主権者教育も扱うが、15年10月の主権者教育に関する文科省通知は、授業で「多様な見解」を取り扱うことにより、「指導が全体として特定の政治上の主義若しくは施策又は特定の政党や政治的団体等を支持し、又は反対することとならないよう留意すること」と主張。
「多様な見解」のある問題のうち、文科省は「愛国心、国旗国歌、自衛隊、安保法、米軍基地」など、国家権力の根幹に関わるテーマは、"政府見解"を「多様な見解」の埒(らち)外(聖域)に置き、それと異なる見解を教えるのを「偏った指導」と称し排除してくる危険性もある。
文科省は「教員が教える」だけではなく、今回の改定では議論の時間を増やすなどし、児童生徒が自ら考え学んでいく「アクティブ・ラーニング」を強調。
だが、"政府見解"を教え込んだ上で、議論の時間を増やすことになれば将来、安倍首相が望む"憲法改正の国民投票"で"政府見解"を深化させ投票に臨む「18歳有権者」が増えてしまうのではないか。
08年時は、冒頭に触れた"君が代"に関し、卒業式等の行事での「斉唱指導」を規定した特別活動の指導要領に、「起立し」を入れろと主張する同一筆跡のパブコメが多くあった。幸い「起立し」までもは入らなかったが、今回は要警戒だ。
~教育学者らパブコメを呼びかけ
永野厚男・教育ジャーナリスト
小学校で2020年度、中学は21年度、高校は22年度から年次進行で実施する、学習指導要領改定に向け、文部科学省がとりまとめた中教審の『審議まとめ』について、募集しているパブリックコメントの締め切り(10月7日夜)が迫っている。
前回の改定時(08年)は小学校音楽の"君が代"で、それまでも全学年で「指導する」としていたものを、日本会議系政治団体が主導し大量のパブコメを同省に集中させ、「歌えるよう指導する」と加筆するなど、国家主義的介入があっただけに、教育学者や現場教員は、「立憲主義の立場からのパブコメを」と呼びかけている。
立憲主義に反する内容が盛られる危険性の高いのは、高校の公民科で「現代社会」を廃止し新設する必修科目「公共」だ。
「公共」は自民党が10年の参院選政策集『J-ファイル2010』で、「国旗・国歌を尊重し、わが国の将来を担う主権者を育成する教育を推進します」という、政治色の濃い目的で設置を主張したのが始まり。高校にはない道徳の内容も盛るため、"愛国心"が入る可能性は大。
現に5月26日、中教審教育課程部会の社会・地理歴史・公民ワーキンググループ(以下、WG)の会合で、文科省が出した「公共」の構成内容の原案は、「自立した主体として」という語句を冠してはいるものの、生徒に「国家・社会に参画し」と要求。改定教育基本法第2条3号の「主体的に社会の形成に参画し」という文言に、勝手に「国家」を加筆しようとしたのだ。
同日のWGでは、「『社会』はいいが、(児童・生徒を)『国家』に参画させるのは一種の動員だ」などと3人の委員が批判したため、同省は同法第1条の「・・・国家及び社会の形成者として・・・」という規定に沿う表現に修正した。こういう経緯もあるのだ。
「公共」は主権者教育も扱うが、15年10月の主権者教育に関する文科省通知は、授業で「多様な見解」を取り扱うことにより、「指導が全体として特定の政治上の主義若しくは施策又は特定の政党や政治的団体等を支持し、又は反対することとならないよう留意すること」と主張。
「多様な見解」のある問題のうち、文科省は「愛国心、国旗国歌、自衛隊、安保法、米軍基地」など、国家権力の根幹に関わるテーマは、"政府見解"を「多様な見解」の埒(らち)外(聖域)に置き、それと異なる見解を教えるのを「偏った指導」と称し排除してくる危険性もある。
文科省は「教員が教える」だけではなく、今回の改定では議論の時間を増やすなどし、児童生徒が自ら考え学んでいく「アクティブ・ラーニング」を強調。
だが、"政府見解"を教え込んだ上で、議論の時間を増やすことになれば将来、安倍首相が望む"憲法改正の国民投票"で"政府見解"を深化させ投票に臨む「18歳有権者」が増えてしまうのではないか。
08年時は、冒頭に触れた"君が代"に関し、卒業式等の行事での「斉唱指導」を規定した特別活動の指導要領に、「起立し」を入れろと主張する同一筆跡のパブコメが多くあった。幸い「起立し」までもは入らなかったが、今回は要警戒だ。
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