goo blog サービス終了のお知らせ 

パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

違法低賃金

2007年05月04日 | ノンジャンル
  ●物言わぬ外国人研修生踏み台に
 違法低賃金の工場ルポ
   リベート疑惑、見え隠れ


 開発途上国への技術移転をお題目に、実態は零細企業にとっての安い労働力として入国者が増え続ける外国人研修・技能実習制度。これまでも最低賃金を大幅に下回る残業代などが問題になってきたが、東北地方の工場経営者から寄せられた告発を頼りに現地を歩くと、物言わぬ研修生を踏み台にした「集金マシン」ともいうべき実態が浮かび上がった。 (山川剛史)

■逃亡防止用 保証金などで80万円


 「だめだよ。話もだめだし、写真もだめ。最低賃金だの労働時間だのがんじがらめの中で、納期が少しでも遅れれば、メーカーから次の仕事はなし。こういう所は大なり小なり傷はあるんだから。分かるだろ」
 秋田県の山村にある古びた平屋の小さな縫製工場を訪ねると、「記者」の二文字を聞いた瞬間、社長が気色ばんでにらみつけた。

 何とかなだめ、少しだけ工場内を見せてもらうと、土曜日にもかかわらず、六人の若い中国人女性が黙々とミシンを動かしていた。その様子を見ながら、社長は「彼女たちに聞くと、中国の派遣業者に(逃亡防止用の)保証金を払い、派遣業者を紹介してもらうために別の業者に手数料を払っている。計七、八十万円といい、中には高利で借りた子もいる。こちらももっと払ってやりたいんだけどね…」とつぶやいた。

■工場1年目の"月給"6万円

 最大三年間の期限付きで"出稼ぎ"に来る彼女たちの手当は、一年目の研修生が月六万円で、残業代は時給三百五十円。技能検定を受けて実習生になっても六万五千円と残業が四百円。研修生の残業は法的に禁止なのだが…。実習生に認められる残業も額は規定の半分ほど。

 労働基準監督署や入国管理局にバレれば大ごとになるが、発覚するケースはまれだ。

 実は金額は彼女たちが中国を出る前に、中国側の派遣業者と、工場が加入する協同組合の間で決まっており、工場はその単価表を基に支払っている。
 研修生らにとって研修制度の三年間は本国より稼げる数少ないチャンスでもあり、契約が守られる限り労基署などに駆け込むことはない。工場側もタイムカードや賃金台帳を規定に合うよう慎重に操作している。
 この工場と同じ組合に加入する岩手県の山あいの町で縫製工場を営むオーナーが解説する。

■カーテンで隠し、残業は「自主的内職」

 「夜は残業がバレないよう、厚い力ーテンを引いて外に光が漏れないようにする。日本人が立ち会わないようにするから、残業ではなく自主的な内職ということになっている。もちろん日本で学んだ技能をもとに本国で独立した人もいてそれはうれしい。ただ、本音を言えば安いから使っている。彼女たちがいなければこの仕事は立ちゆかない」
 違法な低賃金にも物言わぬ中国人研修・実習生。ぎりぎりの操業を続ける零細工場。微妙なバランスの中で続いてきた外国人研修制度だが、岩手県東部に事務所を構え、前出の二工場を含む縫製や部品、水産など約四十の加盟社に研修生を送ってきた組合内ではさざ波が立ち始めた。理事長の運営や会計をめぐるいずれもカネがらみの疑念だ。

■派遣の協組"内紛" 金のなる木奪い合い

 発端は昨年三月、組合事務所から遠く離れた縫製業三社がこの組合から独立。独自に研修受け入れの新組合を立ち上げようとし、これを阻もうとした組合側と対立したことだった。
 研修制度は三年が一サイクルのため、独立した三社にとっては、一時的に旧組合が派遣する実習生と、新組合が派遣する研修生が混在する形になる。入管は一社が複数の組合から研修・実習生を受け入れることを禁じており、実習生を旧組合から新組合に移管できるかどうかがカギとなった。
 結果は、旧組合が「入管から移管が認められない」として移管に同意せず、新組合は敗北した。このままでは三社は新規の研修生が得られないため、うち二社は旧組合に頭を下げて元のさやに戻った。
 残された一社は「もう終わったことで、波風を立てたくない」と取材を拒否したが、一連の経過をよく知る旧組合メンバーは「あれはカネのなる木である研修生らを手放さないための、(旧組合の)理事長の引きはがし工作だった。理事長から『あの組合をつぶしたい』とも言われた」と証言する。当の理事長は「入管が移管を認めるならいくらでも協力したさ。引きはがしなんてとんでもない」と工作を全面否定。組合の事務局長も「確かに、遠いから研修生の管理が難しいとの理由で移管に同意すれば、組合の信用にかかわるとの思いはあった。しかし、利権を守る意識はなく、入管がだめだと言うのに、必要以上に盾突けば組合そのものが危うくなった」と反論する。
 仙台入管は「移管はもともと制度の想定外だが、相談があれば、研修生に不利にならないか、管理は適切かを慎重に見極めて判断する」と説明。実際、最近でも移管された例はある。
 分派騒動のほか、理事長側が中国の派遣業者からキックバックを取っているとの疑惑も取りざたされている。
 一昨年、組合は新たな業者を探すため、中国に選定団を派遣。契約直前になって、選定団が決めた業者が理事長の意向で別の業者に差し替わる"事件"もあった。さらには「バックは(研修生の)人数により、支払います」と中国の業者が組合あてに送ったメールが、一般の組合員に誤って流出。このことも組合員の間での疑念につながっている。理事長は「キックバックなんて一切ない」と否定している。

■300万円積んで「よろしく」

 一方、理事長との対立が指摘される前理事長は「在職中には、中国の業者が目の前にポンと三百万円を積んで『よろしく』とやったこともあった。もちろん突き返したが、甘い誘球が多いのは確か。どこまで断っているものかね」と意味深長な笑みをもらした。
 外国からの研修生・技能実習生受け入れ制度は「人材育成の美名に隠れて安価な労働力を輸入し、単純労働をさせている」と批判されてきた。
 この問題に詳しい「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」の矢野まなみ事務局長は「中にはきちんとした技術移転をしている企業もあり、研修制度自体は必要だ」としたうえで「現行制度は企業や協同組合の利権構造を引き起こしやすい制度となっている。実習生たちには転職の自由がなく、それが安価な時給で使われる結果につながっている」と指摘する。
 矢野氏は言う。「研修制度の適用を厳格化する一方、製造現場で働く外国人労働者の入国を公式に認め、労働ビザを新設して労働者としての権利を守るべきだ。政府は悪徳ブローカー排除に協力するよう中国に働き掛けてもらいたい」

【外国人研修制度】
 1981年に国際協力を目的に創設された「研修」の在留資格(滞在期間は1年間)が始まりで、93年には技能検定に合格すれば滞在を2年間延長できる技能実習制度(在留資格は「特定活動」)が加わった。
 数多くの中小零細企業が受け入れ始め、2005年は約8万3000人が研修資格で入国し、7割近くは中国人。
 強制貯金、性暴力など人権問題も発生する中、期間延長や再研修も検討されている。

※デスクメモ

 解体業にいそしみ納税義務を果たしたイラン人一家の国外退去処分。短大に進む長女の友人たちの抗議に驚いた政府は、長女の残留だけ認め「人情ある措置」と自賛した。違う。真の人情を知っているのは、この友人たち。欧米人にへつらいアジア人に厳しいおっさんたちより、君たち断然かっこいいよ。

『東京新聞』(2007/4/27特報)

コメント    この記事についてブログを書く
« ベトナム人実習生の"奴隷労働" | トップ | 「そうだ、5・27京都へ行... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ノンジャンル」カテゴリの最新記事