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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

主権者教育/シティズンシップ教育においては、選挙で投票することだけを教えるのでは不十分

2019年09月11日 | こども危機
  《教科書ネット21ニュースから》
 ◆ 権利主体としての子どもの社会参加に向けて
林 大介 首都大学東京特任准教授模擬選挙推進ネットワーク事務局長

 ◆ 「18歳選挙権時代」から「18歳成人」時代へ
 2016年の参院選から18歳選挙権が始まり、今夏、18歳選挙権で2回目の投票となる参院選が予定されている。そして2022年4月1日からは「18歳成人時代」が始まる。
 多くの10代が高校3年生の間に18歳を迎えることを考えると、高校3年生までに主権者意識・市民意識を育み大人としての自覚を持つこどが求められる。
 ◆ 主権者意識を育てる取り組みの現実
 総務省・文部科学省は、18歳選挙権開始に先立ち、高校生向け副教材『私たちが拓く日本の未来有権者として求められる力を身に付けるために』(1) を2015年9月に作成し、すべての高校生に配布した。
 副教材では、話し合い活動を中心に、実際の選挙を題材にした模擬選挙や模擬議会、請願など、実際の政治的事象を授業の中で取り上げ、社会課題について考え判断する機会を後押ししている。
 また文科省は「高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について(通知)」(2) を2015年10月に発出した。
 高校生の政治活動について、これまでは「国家・社会としては未成年者が政治的活動を行うことを期待していないし、むしろ行わないように要請」していた立場から「高等学校等の生徒が、国家・社会の形成に主体的に参画していくことがより一層期待」する立場へと180度転換した。
 実際、18歳選挙権の当事者となった18歳~20歳の3000人を対象に総務省が実施した「18歳選挙権に関する意識調査」(3) では、「高校生が選挙や政治に関心を持つために何をすればよいと思うか」を尋ねたところ、「学校で模擬選挙を体験する」が23.1%で最も多く、若者自身、有権者になる前にきちんと学ぶ機会の必要性を実感している。
 しかし、「実際の政治」や「答えの無い問い」を授業で扱うことについて、これまでそのような取り組みを行ってこなかった学校現場では戸惑いがある。
 とはいえ社会が複雑化・多様化・グローバル化し、少子高齢化が進む中、知識を覚えるだけで物事が解決できるわけではなく、シンプルに学ぶことはできないし、ありえない。
 憲法や基本的人権、貧困、環境、地域共生、社会保障や税の使い道など・自分たちの生活に関わる内容すべてが、主権者である私たちに関わっている以上、主権者教育/シティズンシップ教育においては、選挙で投票することだけを教えるのでは不十分である。
 ◆ あらゆる場面で主権者教育を
   ~身近な社会課題をより身近に


 だからこそ学校で行う主権者教育も、新たに何かを始めなければいけないわけではなく、今教えている内容に主権者教育のエッセンスをプラスァルファすればすぐにでもできる。
 国語・英語でディベートやスピーチを行う、数学・理科で効果的な表・グラフの作成や統計について学ぶ、ビジュアル化した社会へのアピール方法を美術・情報で工夫する、音楽やダンス・演劇などを通じて表現方法を模索するなど、難しいことではない。
 当然・そうした際には、教師が自分の主義主張を児童生徒に押し付けたり特定の考えを否定したりするようなことをするのではなく、子ども自身が自分で考える時間を保障することが不可欠である。
 失敗を繰り返すことで・子ども・若者は成長するのであり、むしろ、失敗しつつも地域に参加・参画する機会があることが、主権者意識を醸成するためには不可欠である。
 また、ここ1-2年に限っても、その街で生活している子ども・若者自身が地域住民として、地域が抱えている課題を見つけ、その改善に対して取り組んでいる自治体が増えている。
 たとえば京都府亀岡市では、2018年10月の「中学生議会」で、学校のトイレの改善(男子用トイレが廊下から丸見えで「セクハラトイレ」のため見えないようにして欲しい、との提案)を求めた中学生からの市長への提案を受けて、改修されることとなった。(4)
 福岡県川崎町では、町内4つの小学校の5-6年生代表4人ずつが参加する「子ども議会」での「遠足に行く場所がない」「遊べる公園がない」といった要望を踏まえて、公園が整備されることとなった。(5)
 ほか、地元の女子高生がまちづくりに取り組む福井県鯖江市のJK課、1000万円の予算提案権をもっている愛知県新城市の若者議会、日常利用している通学路等の改善をまとめた長野県立松本工業高校の高校生による請願を市議会が採択するなど、議会や行政が高校のみならず小学校や中学校に出向き、子どもとの意見交換や対話を重ね、子どもを市民として、権利主体としてとらえなおす動きが出始めている。
 ◆ 4歳の声を自治体施策に反映するドイツ

 「政治教育・主権者教育・民主主義教育」が充実していると言われるドイツを2017年9月に視察した。
 その際、高層マンションに囲まれた1階にある保育園は、目の前の芝生広場、遊具、池などがある広大な公園を園庭代わりにしている。しかし公園は、できてから10数年が経過し荒れ始めたため、ベルリン市は、公園改修のために日々の利用者である保育園児にヒアリングを行うということで、そこに同行する機会を得た。
 ヒアリングでは、6人の4歳男女児一人ひとりに、握りこぶし大の緑の球・赤い球がついた長い棒2本を持たせ、公園を散策。行く先々で「緑の棒(心地よいと感じる場所)」か「赤の棒(変えたほうが良い場所)」を地面に挿す。
 「砂場の砂がサラサラしていて気持ちいい(緑)」「階段のわきに滑り台があるといいなあ(赤)」「昔は水遊びができたみたいだけど犬が入るから遊べなくなった(赤)」など思い思いを4歳の子が話し、ベルリン市の職員が聴き取る。
 つまり、「子どもは○○と思っているに違いない」と決め付けるのではなく、子ども時代から子どもを権利主体として尊重し、子どもが参加できる機会を創ることで、主権者としての意識を高めていることを徹底していた。
 そもそも私たちおとなは、地域の一員としてきちんと子ども・若者と向き合い、子ども・若者が権利主体として生活できる環境を整えてきているのか。「18歳選挙権時代」「18歳成人時代」は、子ども・若者以上に、大人の意識が問われている。
【註】
(1)総務省・文部科学省『私たちが拓く日本の未来有権者として求められる力を身に付けるために』
 文部科学省 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/shukensha/1362349.htm
 総務省 http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/senkyo/senkyo_nenrei/01.htm1
(2)高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について(通知)
 http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1363082.htm
(3)総務省「主権者教育等に関する調査及び18歳選挙権に関する意識調査の結果」
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s_news/01gyosei15_02000153.html
(4)『「セクハラトイレ」ついに改善 京都の中学、女子から男子丸見え』京都新聞、2018年11月27日
https://www.kyoto_np.co.jp/top/article/20181127000025
(5)『「子ども議会」の要望で公園完成声受け止めた町長、整備決断川崎町[福岡県]』西日本新聞、2018年11月24日
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/f_chikuhou/article/467979/
『子どもと教科書全国ネット21ニュース 126号』(2019年6月)


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