『笛物語』

音楽、フルート、奏法の気付き
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フルート奏者・白川真理

浜口奈々氏「ラヴェルのピアノ作品における抒情性と官能性」

2020-11-29 00:36:02 | 音楽・フルート
先月はお休みしてしまったのですが、9月から演奏表現学会の会合も再開。

本日はピアニスト浜口奈々氏による公開レッスン形式のラヴェル作品のレクチャー。

「鏡」より(主に)・蛾・悲しい鳥・鐘 「夜のガスパール」より・オンディーヌ。

会員の殆どはピアニスト。

ピアニストというのは・・・

ともかく、フルートの何倍もの膨大なレパートリーを持ち、何倍もの知識があり、何倍もの時間を費やして「ピアニスト」になった、本当に凄い人達だ、と常に感服している。

パイプオルガン奏者とピアニスト、というのは、絶対敵にはしたくない種族だ。
私にとっては常に尊敬の対象だ。

そもそも、一度に出す音の数からして違う。
一生の内に出した音の数の差だけでも、到底敵わない。

この学会には縁あって、リサイタル前に個人レクチャーをお願いしていた作曲家・二宮洋先生の御誘いで参加することとなったのですが、私なんかがここに居てもいいのか?というくらいの場違い感も若干抱きつつですが、とても楽しみにしています。

皆熱心で、会合は毎回ハイクオリティ。

本日も素晴らしかった。

・・・


弟子をとらなかったラヴェルが唯一信頼し細かな助言をしていたというピアニスト・ペルルミュテール。

浜口奈々氏は、そのペルルミュテールの愛弟子だそう。

レクチャーでも、師であるペルルミュテールの数々の教えが惜しげもなく紹介された。

それらも含め、浜口奈々氏のレクチャーは、まるでフルートの神様、マルセル・モイーズの言葉か?というくらい共通するものがあった。

フルート奏者によるレクチャーよりも、むしろ異なるメカニズムのピアノを通すことで、よりその共通性、本質が浮かび上がる。

加速し手放す、という原理はまさにソノリテの「アタック」であり、手のテンションを変えずに移動させる技は「音の連結」に通じる。

ペダル頼みではなく指を同じ音の中で移動させる、というのは、おそらくディヌ・リパッティに代表されるようなフランスの伝統なのだろう。

個人的には、その根底にはクープラン、バッハ等の歴史的なクラヴィーア奏法から脈づいていると思っている。

浜口氏の説明で、「手のテンションを変えないためにこうしている」というのに納得。

全ては響きと音色のため。


レクチャーしつつ演奏されるピアノの響き、音楽がさらに素敵で、いつかコンサートで、ちゃんとお聞きしたいものだ、と切に思いました。

かつて、ラヴェル作品全曲を二晩に渡って演奏、というリサイタルを開催されたそうですが、もし本番があったら、もう絶対に聴きに行きたい、と思いました。

・・砂原悟さん以外で、こんなに心奪われたピアノは久しぶりかも・・

またご自身で気付かれたというグリッサンドの方法は、実は私も自分の講座の中でピアニストにレクチャーしたことのある方法で、嬉しかった。

肩関節はねじれてついているのだから、そちらの方が理にかなっている。

ピアノという楽器のメカニズムを熟知し、それを踏まえた上で、どのようにアプローチしていくか、という話も新鮮だった。

それにしても、フルートで一音出すだけでも、あれこれと考え工夫し、と大変なのに、あの膨大な数の音を同時に、夫々の必要に応じてのタッチに切り替え、さらには空気感まで変化させる、という・・

改めて、ピアニストってとんでもない人達!?と感服した次第です。



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