時、うつろいやすく

日常のたわいもない話…
だったのが、最近は写真一色になりつつある。

怖いと思うこと

2007-08-23 00:56:00 | 人生
ある日、深夜遅くまで仕事をしていた。
夜明け前、外が昼間のように光った。
フラッシュライトのような閃光に目がくらむ。
その閃光から数秒遅れて爆音がとどろく。
同時に地響きと爆風で建物が揺れる。
墜落事故か?
私は振動が収まるのをまって外に出た。
北東の空が白く輝いていた。
その中心に巨大なきのこ雲がそそり立っていた。
100キロ先にある工業都市K市の方角だ。
全身がガタガタと震え上がった。
とても現実とは思えなかった。
私は就寝中の妻と子供を起こした。
状況をあれこれ詮索する暇はない。
大急ぎで非難しなくてはならない。
この季節だと爆心地は風上の方向にあたる。
私たちは冷蔵庫から手当たりしだいに食料をかき集めると
通帳と現金を持って着の身着のままで車に乗った。
ラジオの緊急放送に耳を傾けながら爆心地の風下へ
向けて車を走らせた。
死の灰が降りそそぐまでにできる限りこの場離れなくては…
田舎道を疾走して大通りの国道に出ると車の渋滞が延々と続いていた。
クラクッションの音が狂ったように鳴り響いていた。
車は1メートルたりとも先に進む気配はなかった。
私は脇道を走ることにした。
脇道を走る車は比較的少なかった。
できるだけ人通りの少ない道を選んで疾走した。
途中ガードレールに衝突した車や
路肩から転落した車を何台か見かけた。
10台くらいの車を追い抜き、同じくらいの車に追い越された。
猛スピードで追い越していく車も多かったが事故っては元も子もない。
私は100キロ前後のスピードを維持して走ることにした。
1時間も走っただろうか。
街路沿いの込み入った道に差し掛かったのでややスピードを落とした。
日の出が近づいていた。
外は薄っすらと明るくなっていた。
行く手の数十メートル先の歩道に、寝巻き姿の初老の男性が立って
呆然と空を見上げていた。
その側で孫とおぼしき幼い少年と少女が空を見上げていた。
私は車を徐行して彼らの側に車を寄せた。
窓を開け、早く逃げるよう声をかけようとした。
子供らの頭に白いものが舞っていた。
薄明かりの空に目を移すと、
雪のような白い粉がヒラヒラと舞い落ちてきていた。
私は開けかけた窓を閉めた。
猛スピードで車を走らせた。
みるみるフロントガラスが白い灰で覆われていった。

続く。

そんなことを連想することがある。
これ以上ない恐怖の現実である。
コメント (16)
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