ちいさな社宅を設計している。
そこにフィリピンの若い女性を九人住ませるという。
別にやましい意図があるわけではない。
彼女たちは日本で農業に従事する健全な出稼ぎ労働者である。
当日、農家のオーナー家族三人と建設会社社員二人と私とで間取りの打ち合わせを行う。
早々に先日見たテレビの『ビフォーアフター』の話になる。
そこに登場する匠の箱型二段ベットが好評だったという話になる。
オーナー家族と建設会社社員はその番組を見ていた。
私は見ていない。
見る気もない。
オーナーからそのお気に入りの二段ベットの写真をiPadで見せられる。
なるほど、こざかしい。
しかし、見た者(オーナー家族と建設会社社員)の評価は極めて高い。
絶賛である。
みな口々に、「これいいよね、これいいよね」という。
みな口々に、「これカプセルホテルみたいだよね」という。
そして、「ここで生活もできるよね」といいだした。
こんな狭いところで、子供じゃあるまいし。
そこで、私は思わず「アウシュビッツみたいですね」といいそうになる。
グッとこらえる。
こらえてよかったと思う。
しかし、この狭い箱の中で、異国の成人女性が9人横になっていたらそりゃ異様だよ。
怖いよ。
哀れだよ。
でも、そこは異議は唱えず、パクることに賛同する。
ただし、
「法令に抵触するかもしれないので、家具として作ってください。図面には描きません」
といって、カプセルベットの件には関わらないことにした。