rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

包茎を気にする母親

2010-04-05 17:37:30 | 医療
泌尿器科をしていて学校が休みの時期に増えるのが、小さい子供の包茎を心配した外来患者さんです。汚れた手でちんちんを触って黴菌がついたためにペニスの包皮が赤く腫れ上がる亀頭包皮炎という病気は季節に関係なくあるのですが、包皮が剥けていないことを心配して幼稚園や小学校に通う子供を連れてくるのは学校が休みの時に多い現象です。

子供を持つ看護師達の情報によると、どうも公園で小さい子供たちを遊ばせている母親達の共通の話題として息子達の包茎談義が行われているらしいのです。集団でユダヤ教にでも改宗したのかと思うような話しですが、しかも価値基準としてちんちんが剥けている方が「勝ち組」に分類されているようで、「うちの子はまだ・・」となった母親はこのままでは人生にハンデを背負ってしまうような焦燥感にかられて病院に向かうことになります。

二次性徴前の子供のペニスなど排尿ができていれば形や皮がどうであろうと本来問題ありません。大人になってから包皮を剥いて亀頭を露出できない真性包茎であれば保険適応で局所麻酔で手術ができますし、皮が長いだけの仮性包茎(日本人はほとんどこれ)であれば放置でもよし、美容整形で治療するもよし、本人が決めればよいことです。小児のうちは包茎の手術も全身麻酔になりますし、そのようなリスクを侵してまで排尿障害や感染症を繰り返す状況にない包茎を治療する医学的な必要はありません。

「子供のうちに治療しなくて良いのですか。」と聞く母親に対して「何故今のうちに治療した方が良いと思うのですか。」と尋ねるとたいてい「大きくなって苦労させたくないから。」と答えます。この人は包茎で苦労した男性を沢山知っているとでも言うのだろうか、(あなたはソープか何かで働いていたのですか)という質問が咽まで出かかるのですが、ぐっと我慢して「少し癒着があるようですが、問題ありません。二次性徴が終わってから本人が気になるようなら自分の判断で受診してもらえば良いです。今無理に剥離しても痛いしまた癒着しますから」と答えます。「でもまわりのお子さん達はみんな剥けているというし心配で。」と言うので「私は自分の息子達が包茎かどうかも良く知らないし知りたいとも思わないですよ、感染がないか、睾丸に左右差がないかだけ見てれば、それ以上は子供にとって余計なお世話というものです。(あなたは子供ではなく旦那さんのちんちんをその10倍位見てあげなさい)」と後半の部分を言わずにぐっと飲み込んで笑顔で返すことにしています。

「中高生になるともう見れないし」と母親がいうのはもっともな話しですが、本当はこの時期に突然の睾丸痛が出たら精巣捻転が考えられるから6時間以内に専門医に連れてきて欲しいし、片方だけ睾丸が大きくなったら精巣癌かもしれないからこれも早く専門医を受診して欲しい所です。この辺は手遅れになって苦い経験をすることがあるのですが、中高生の息子が性器のことを母親に相談できるような良い親子関係になっていることが必要ですし、父親の役割も実は大事なのかも知れません(母と息子の関係に父親が関与するのは日常的には困難かもしれませんが)。
コメント (5)
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