rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

似非医療について

2010-08-25 20:03:25 | 医療
ホメオパシー 日本医師会・医学会、学術会議に賛同(朝日新聞) - goo ニュース

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ホメオパシーなどという似非医療は聞いた事もなかったのですが、けっこう広がっていたようでそれなりの機関が公式に意見を表明するというのはただならぬことだと思います。「毒をもって毒を制するの始めの毒の部分を0に近くなるまで水で薄めて、薄める過程でよく振ることで水に記憶させる」とかいう「バカでもうそだと解る理屈」に基づいているらしいのですが、このようなものに意見表明しないといけない事態そのものが日本の理系思考の衰退を憂える異常事態といえるでしょう。

ほかの似非医療にも言えることですが、似非医療の特徴は「明確に定義されている西洋医学の疾患名」をそのまま用いて単純に治るだの効くだの効能を述べる事です。例えば糖尿病はインスリンを出す方が異常か、受ける側(レセプター)が異常かで型が別れて、それぞれに定義に従って対応も異なるのですが、「糖尿病が治る」と言っている似非医療は「何がどう治るのか」疾患の定義に従って説明しているものを見た事がありません。

「がんが治る」という言葉は癌の専門医である私は患者さんに言った事がありません。切除して五年間再発しなければ一応治ったと考えられるけれどもまた出てくる可能性もありますし、抗がん剤で癌を制圧できてもそれは寛解しているだけのことが多いので「治った」などと軽々しくは言えないからです。そもそも「がん」とは何か、「がんが治る」とはどういうことか、世の中に数多ある「がん」それぞれに「定義」や「性格」が異なるから一口には言えません。それを「・・・を使えばがんも治ります」などと書かれていたら100%似非医療と言って良い。どこの癌がどのような形に変化するのか試しに聞いて見ると良いです。どうせ嘘なので答えられません。「がん」といっても悪性黒色腫のように悪性度の高いものから早期前立腺癌のように放っておいても死なないものまで様々です。

前にも書いたように、現代の西洋医学は急性期疾患はかなり「治す」ことができるようになりましたが、慢性疾患を根治することはできず、症状をごまかすことしかできません(血圧を下げるとか血糖値を下げるとか)。だから慢性疾患(あるいは成人病など)になった結果惹起される急性期疾患を予防するための予防医学が発達してきてしまいました。しかしこの予防医学はくせ者で、いんちきではないものの急性期疾患に対する医学が「病人を正面から対峙して扱う」のに対して、健常人を検査値でもって病人にしたてて治療してしまうという側面があり、「本当に万人に必要な医療と言えるか」という弱みがあります。

似非医療が入り込む余地は現代西洋医学の弱点である慢性疾患や、急性疾患でも進行癌のように治癒しきれないもの、先のブログ「往きの医療、還りの医療」の項で述べた「治癒」を目的とした積極的医療では対応しきれていない分野において蔓延っていると言えます。似非医療の中には現代西洋医学が対応しきれていない部分を引き合いに出して西洋医学を全否定してみせたり、似非医療を認めようとしないのは「医師の頭が悪い」からと言い、自分たちのサイエンスとしての権威がないことを医師を罵倒することで「西洋医学の世界よりも自分達が高い位置にある」みたいなことを印象づけようとする姑息なものが見られたりしています。

医療者の中にも似非医学と本来のサイエンスに基づく医学における新しい流れ、緩和医療などをごちゃまぜにしている人もいることが問題です。医療者が間違うようでは一般の人がだまされてしまうのも当然といえます。各人が自己責任で何を信じようと勝手ですが、似非医療とはこのような物だとマスコミは解りやすく知らせるべきですし、学校教育においても簡単に似非医療にひっかかることがない程度の科学的思考(ことばの定義・前提をきちんと説明しているか)といったことを義務教育で教えてゆく必要があると思います。
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