米中関係は習近平政権が「宣戦布告なき戦争」と位置づけ、外交、軍事、経済まで「全面的かつ総合的な対米戦の準備」を進めているそうです(雑誌選択2018年12月)。米国による対中国技術漏洩対策として貿易問題以外にも次々に政策が打たれているのですが、民主党クリントン政権は中国融和政策と経済発展を援助するための投資を積極的に行うことで、多くの先端技術の移転を進めてきました。結果はファーウエイ(華為技術)のスマホが米国の政府機関でも使われて、機密事項が知らないうちに漏洩するまでになり、政府機関における中国製(HUAWEI, ZTE)IT製品使用禁止、昨今の孟晩舟CFO逮捕にまで発展してきています。
中国は2008年からいずれ米国との技術戦争が到来することを視野に入れて高度な技術を持った外国人技術者を中国国内に獲得する「千人計画」を進めていたそうですが、千人計画のリストに載った研究者は米国FBIの監視対象になるなど計画通りには進まなくなって来ているということです。また米国に35万人滞在するという中国からの留学生、研究者に対するビザの有効期間が科学・工学分野では従来の5年間から1年に短縮され、早期に帰国せざるを得ない状況になっているそうです。
先日、この影響と思われる事象が私の下にもありました。ある日全く知らない米国の中国人研究者からメールが届き、米国に永住権を得るために「彼が基礎医学分野で優れた研究をしている」ことを第三者の立場から証明して欲しい。という内容でした。知らないと言っても、私が今年始め頃に出した医学論文で彼の文献を引用文献として使用したので「あなたならば、私がこの分野で良い研究をしていると証明できるだろう」と考えてお願いした、と言う事でした。メールをもらった時点では留学生・研究者のビザ短縮の情報はまだ知らなかったので、これは新手の詐欺ではないかとまず警戒しました。添付されていた彼の履歴書(CV)には米国ベイラー大学医学部を卒業して、現在ワシントン大学の中国系アメリカ人が主催する研究室で研究中とあります。数々の賞も授賞していて本当であれば大変優秀な人材であることは確かです。私が米国に留学していた時、半年後から中国からやって来た劉君という医師がいたのですが、同年代ながら目を見張るような優秀な人だったので「中国にはいくらでも優秀な人がいる」ことは実体験として理解していました。彼とは英語でコミニュケーションするより漢字を書いて意思疎通をすることが多かったので周りの欧州系の研究者達から異国人同士が「不思議な記号の様な物で会話ができている」ことをamazing!と不思議がられました。
結果的に今回のワシントン大学の彼が弁護士と相談して私の英語のCVも送って書類にサインしてくれ、という話になったので「英語のCVはない」という事にして断りました。CVとサインと偽のパスポートがあれば当人に成り済まして背乗りすることも可能です。私はNYの大学病院への留学経験もあるし、公務員であった経歴もあるから悪用しようと思えば便利であり、やはり警戒します。その後連絡はないのですが、後になって米中対立からの上記のような背景があったことを知ると今回の事は詐欺ではなく本当だったかなあ、と思う次第。
いろいろな事が関連しているのだなあと思い、備忘録として記しました。
CVの一部 大変優秀だと思う