2023年12月6日、米国下院は、「反シオニズムは反ユダヤと同じである」という決議894号を可決してしまったことは以前のブログで紹介しました。出鱈目な上に非常に危険な決議であると書きましたが、シオニズムという政治的思潮を民族差別と同義にするという事がどれだけ危険かをこの決議を進めた人達は考えなかったのでしょう。
「反ユダヤ」(antisemitism)は欧米においては法的罰則を伴うある種「倫理規範」としてコンセンサスを得ている既成概念です。23年10月6日のハマスによる「アル・アクサ洪水作戦」に対してイスラエルが「鉄の剣」作戦で対応し、AIが決めた通りに「無差別無配慮」にパレスチナ住民を虐殺している事は前に紹介した通りですが、この無法ぶりに怒り、イスラエルを批難する声が世界中で上がりました。特にイスラエルを「経済と武器」で支援する米国内でのイスラエル批判は、選挙を控えたバイデン政権では困った状況で、何とか「合法的にイスラエル批判を封じ込めたい」という考えがこの決議に表れたのでしょう。それが「法で規制された反ユダヤと反シオニズムを同一と見なす」という出鱈目な決議でした。
民主党左派からは早期から反イスラエルを訴える声が上がっていた
ガザ侵攻によるパレスチナ人虐殺は許されないと考えるまともなユダヤ人も沢山います。また「ユダヤ人=シオニスト」決議というのは、「ユダヤ人を見たらシオニスト(虐殺主義者)と見なせ」と強制する決議ですが、「反ユダヤと言われようが虐殺はいけないです。」という決然とした主張には効力がないのです。特に雇用主として労働者を支配できる社会人を黙らせることはできても、自由な意見を持ち、利害関係がない学生たちには無効でした。
2023年4月28日の段階で15を超える全米の大学構内でイスラエルによる虐殺(反ユダヤではない)に抗議する学生が敷地の一部を占拠する事態が発生して、警察隊がこれを排除するために駆り出されています。それは60年代の反ベトナム戦争時の学生運動を彷彿とさせる物です。抗議活動をする学生から犠牲者が出たことで、反戦の声が社会全体に広がり、米国の敗戦に終わるベトナム撤退につながった歴史的事実があります。
大学占拠には警察が動員されて教員まで逮捕される始末
大学占拠はパリの大学にも飛び火
取り締まる警察は催涙弾やテーザー銃と呼ばれるスタンガン(右図)まで使用している。平和的占拠にここまですると必ず権力側が負けるのが歴史の必定
民主共和両党をロビイングという「金で支配」する巨大資本、その巨大資本を実質所有するユダヤ人達は、「金で思想を支配できる」と考えています。実際近代米国政治は金によるロビイングで思うまま動かしてきた経緯があります。東西冷戦は「民主主義と資本主義」を標榜する西側が「共産主義と社会主義経済」を標榜する東側に勝利しましたが、資本主義と民主主義は同義ではなく、実は強制を伴う統一的政治こそ資本主義と相性が良い事は中国の発展を見ても明らかであり、巨大資本を支配する「グローバリズム陣営」は中国の様な強制統一政府こそ望ましいと考えています。そのために金でメディアと政治を支配して来たのですが、さすがに「思想」や「想い」「感情」まで「金という共通幻想」で支配することは無理があるのです。「幻想である金」よりも大事なものがあると人間は考えるからこそ「資本論」を軸とした共産主義思想が敗れたという現実を、共産党崩れのネオコングローバリスト達は思い知る必要があります。
占拠が行われている大学では「ユダヤ人学生」も「ユダヤ人だから身の安全が保障できない」とされて、入校を拒否され、オンライン授業を余儀なくされているそうです。ユダヤ人にもいろいろな考えが許されるべきなのに、「ユダヤ人」=「シオニスト」決議のために一緒くたに扱われるのは人権侵害の様に思います。反シオニズム=反ユダヤの呪いと言えましょう。そしてこの呪いは将来的にイスラエル国家の存続にかかわる問題となるでしょう。世界中の人類に「ユダヤ人=虐殺許容民族」というレッテルを決議までして浸透させた傷は深いと言えます。
金という共通幻想のために命までは捨てない
ロイド・オースティン米国防長官は24年4月26日、これまでで最大となる60億ドルのウクライナ長期軍事支援パッケージを発表し、米国はウクライナ軍のため、米国の防衛産業が生産する新しい装備品を購入できるようになると発表しました。「これは、私たちがこれまでに約束した最大のセキュリティ支援パッケージです。これには、ウクライナのパトリオットとNASAMS防空システムのための重要な迎撃機、より多くの対ドローンシステムと支援機器、大量の砲弾、空対地弾薬、保守と維持支援が含まれる」とオースティン国防長官は金曜日の記者会見で述べ、この発表は、バイデン大統領が水曜日に大幅に遅れた950億ドルの追加支援パッケージに署名したことを受けて行われました。しかしこれは、米軍の備蓄から軍装備品を直接引き抜くドローダウン・パッケージとは異なり、装備品を調達するために産業界と契約している「ウクライナ安全保障支援イニシアチブ(USAI)」に該当するため、実際の配備にはかなり時間がかかると見られています。ただこれらのシステムは既に時代遅れであり、ロシアの対電子戦装備の進化によりかなり金をかけて改造しない限り使い物にならないと言われます。要は米国の軍産が調達で儲かるだけの結果なのです。
予算は通したが軍産が儲かるだけでウクライナが勝つ見込みはないと政権は分かっている
追加予算成立に喜ぶウクライナ支持議員「秩序を保て(the house will be in order)」議場で他国の旗を振る議員をたしなめる議長。
予算の使い方を知る彼らは戦場に行くウクライナの若者ではなく、政治資金を配り、これから儲かる軍産にアピールしているのだろう。
「お金をあげるからウクライナに行ってロシア軍と戦ってください。」自殺願望の人以外で、こう言われてウクライナに出向く人がどれくらいいるだろうか。戦争に行くと言っても「パソコンのゲームの様に敵と勇敢に戦う機会など実際はほとんどない」のが現実。3週間の訓練で前線に送られるウクライナの新兵達は、最前線に運ばれる途中でロシア軍の砲爆撃を受けて8割以上が死亡か不具者になって終わります。既に万を超えるウクライナ兵達が前線でロシア軍に投降しています。4月13日ウクライナのスラビャンスクにフランスの外人部隊が傭兵として送られたが、ロシア軍の攻撃でほぼ全滅したと言われています。4月21日ロシアはNATO軍から派遣された傭兵が終結しているドニプロペトロウシクのホテルを攻撃し、多くの死傷者が出ました。真偽不明ながらフランスはオデッサに戦闘団単位の外人部隊を送ったと言われていますが、圧倒的に砲爆撃力がロシアに有利な現状では、ロシア軍と戦う前に「死ぬか不具者になって終わり」の確率が80%以上でしょう。太平洋戦争で南方の島に送られる輸送船ごと潜水艦に撃沈されて死んだ多くの日本軍将兵たちと同じで、実際の戦争では統計上でも戦死の6-7割は砲爆撃で戦う前に死亡であり、戦場でただ殺されるのは後2割、勇敢に戦って惜しくも戦死するのは1割にも満たないのが現実です。
フランスはマクロンの宣言通りに軍を傭兵として投入しているようだが、ロシアの攻撃で炎上するドニプロペトロウシクのホテル
「お金をあげるからウクライナに行ってロシア軍と戦ってください。」の無意味さが理解できないのは単に軍事音痴なだけですが、今本当に必要なのは追加軍事支援ではなく「停戦に向けての交渉」であることが理解できると思います。