金正恩(キム・ジョンウン)委員長が2018年3月25―28日に電撃的に中国を訪問し、習近平国家主席と会談しました。北朝鮮の首脳の訪中は終わってから発表されるのが通例と言われていますが、今回の訪中は周到に準備されていたようには思えず、米朝首脳会談が決まり、米国が対話路線のティラーソン国務長官を切って強硬派のポンペオ氏に変え、国家安全保障担当補佐官にオセロで北朝鮮と秘密会合を行って来たこれも強硬派の元国連大使ボルトン氏を据えたことに対応した動きであろうと私は見ています。
つまり前に指摘したように、どちらに転んでも中ロには損をさせないという合意を取り付けた上でトランプは正恩に降伏か、先制攻撃かの二者択一を迫るつもりであることを北朝鮮側が察したのだと思います。3月25日から28日まで中国を訪問した正恩氏ですが、習近平主席と会談したのは26日1日のみであったようです。トップ同士が1日合っただけでは、政策について細かな調整などできるはずもありません。安倍総理がトランプ氏と会談した時も「あなたに付いて行きます。米国への投資案件も50兆円分持って来ました。」「よっしゃ、良く来た。これから宜しくな!」というのが内容でした。今回の正恩氏の中国訪問も「アメリカに潰されそうです。助けて下さい!」「ああ、良く来た悪いようにはしないよ!」という内容だったのではないでしょうか。
本来首脳会談の前には事務方や閣僚級の会談や調整を重ねて共同コミュニケを最終的に合意した上で発表するのですが、「朝鮮半島の非核化で合意」といった「だからどうした」という内容しか出てこないと言う事は、北朝鮮は米国に降伏する前に中国に降伏(細かい調整なしで<後はお願いします>ということ)しに行ったというのが実情ではないかと思います。後は中国と米国が北朝鮮を巡って「Deal」をするという事です。
CCTVで出された今回の会談の様子
本当は中国よりも米国の方がDealをする上では扱い易い、中国の本当の怖さを正恩氏は解っていないのではないかと私は思います。対中国政策で最も頼りになる叔父の張成沢氏を2013年12月に処刑してしまい、以降中国との間は冷えた関係が続いていました。今回も張氏を先頭に交渉していれば、政敵である江沢民や胡錦濤人脈ともつながりのある張氏は習近平といえども一目置いたものと思います。しかし権力を保持するための手段が「政敵の殺害しか」ない三十過ぎの若造など老練な習近平氏にとっては赤子の手をひねるような物だったでしょう。二人の表情に格の違いが現れているように見えます。中国は米国のようにDealでは済まない。「助けてくれ」と言いに行けば「(表面上揉み手で歓迎しながら)何でも言う事を聞け」という関係にならざるを得ないのです。
メディアはトランプが中国に貿易戦争を仕掛けたと大騒ぎしていますが、トランプのやり方は「初めにガツンとかまして後から譲歩してまとめる」という商売人のやり方であることが解っていればさして驚かなくて済みます。中国も百も承知でしょう(解らないのは阿呆なメディアだけ)。これから北朝鮮を巡って米中がどのようなDealをするのかが見物ですが、「朝鮮半島の非核化」という点は一致していますから、「北朝鮮の核は中国が没収」以外の選択肢はありえません。後は
Plan A: 北の国土、体制はそのままで政治経済について完全に中国の属国となり、核の監視名目で中国が軍事基地を国内に作る。ほぼ北朝鮮自治区扱い。韓国については米軍撤退で本当に半島の非核化が達成。中国には最善だがトランプにどのような華を持たせるかが鍵。
Plan B: Plan Aで韓国は現状のまま。北朝鮮の経済に米国経済も導入させる(中国のように)。この辺が落とし所か。
Plan C: 以前から議論されている北朝鮮分割案に沿った解決。これでも中国はあまり損はしない。正恩氏は中国領の中での長となる。
という様な結末になると思われます。今後の展開を見守ろうと思います。
すると先代の先軍思想の継承が、その正統性を担保してます。核を手放すてのは、それを捨てる事になりますから。
口で何を言おうと手放す事は出来ないと思いもすけれども。
北の核保持は中国、ロシア、米国全て認めていないのが現実です。核の使用を含めて全て中国に御任せします、と言う条件が整えば中国は了解するかも知れませんが、ロシアは良い顔をしないでしょう。
「米国に対等に向き合う」以上の意味は北の核保有にはありません。でないと周辺国に対する核になってしまいます。日本を核で脅したら日本は北朝鮮の属国になるでしょうか。私を含めて日本人で進んで北朝鮮の属国になるという人はいないでしょう。ならば日本に対しても核を持つ意味はなくなります。
インド・パキスタンは「お互いに対して以外使わないのだろう」という特例で核保有が見逃されているように思いますが、他の国で保有宣言ができない(イスラエルとか)のはそれなりに国際社会において意味があると思うのです。だから北が正式に核保有は許されないし、北にとっても何のメリットもなかろうと。