rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

書評 戦後史の正体

2012-08-25 19:24:36 | 書評

書評 戦後史の正体 孫崎 享 創元社 2012年刊

 

既に多くのブログなどで話題になっていて私も早く読みたいと思っていた本です。前に読んだ日米同盟の正体もつい見逃してしまう在日米軍と自衛隊のあり方について見直す上で秀逸だったので今回も期待して読んだのですが、評判に違わず具体的事実や資料をあげながら米国との相克で戦後の日本がどのように変わってきたかという歴史を実に簡明に説明しています。高校生の息子も夏休みの宿題の一環として読みましたが、日本の現状を理解する上で日本の高校生以上の人たちは全員読むべき内容であると確信します。

 

歴史の説明の柱となる部分は、日本の戦後70年の歴史は米国の容赦ない戦後政策によって振り回され、歴代の為政者達は米国に対して自主独立的立場を保とうとする人たちと従属して言いなりになる人たちに別れ、自主独立派の人たちは必ず検察(地検特捜部というGHQの日本国内を自由に取り締まるために作った組織)、メディア(CIAから資金をもらう)、一部官僚などによって潰されてきた経緯があり、それは現在の小沢裁判にも受け継がれている、というものです。また中には特定の問題について米国からの圧力に抵抗して結果的につぶされていった人たち(一部抵抗派)という範疇に属する人もいます。

 

注意を要するのは「従米派」=「売国奴」と言う訳ではなく、それぞれの時点で米国に従うことが最終的に国益に叶うという判断で(結果は異なったかもしれないが)そのような判断をしたという前提で説明がなされていることであり、今後も従米派と独立派を使い分けながらうまく立ち回ってゆくことが日本が生きる道であることを説いている点です。詳しくは書きませんが、自主派に属する首相達には意外に思う人も含まれます。重光葵、石橋湛山、芦田均、岸信介、鳩山一郎、佐藤栄作、田中角栄、福田赳夫、宮沢喜一、細川護煕、鳩山由紀夫の面々が自主派とされるのですが、岸氏や宮沢氏についてはなかなかそのような観点でみたことがなかったので認識を新たにする思いでした。

 

一方、従米派に属する首相達は吉田茂、池田勇人、三木武夫、中曽根康弘、小泉純一郎、海部、小渕、森、安倍、麻生、菅直人、野田佳彦の各氏があげられ、戦後の名宰相と言われる人たちから疑いようもない屈米(これは売国奴に近いと思うが)の人たちも含まれます。一部抵抗派には意外な人がいて、鈴木善幸、竹下登、橋本龍太郎、福田康夫の各氏が挙げられています。福田氏など途中で政権を投げ出して何だと思っていたのですが、アフガンへの陸自派遣と破綻寸前の米金融会社(ファニーメイとか)への巨額融資を拒否して政権にいられなくなったという説明がなされるとなるほどと頷けます。

 

政治家が政治生命を絶たれる時には日本国民の税金で養われているのにアメリカの犬として働く地検特捜部(警察と検察の権力を持つというゲシュタポ的異常組織—日本国のためには早々に解散したほうがよい)に汚職などで摘発されるか、メディアにネガティブキャンペーンをさせるか、証拠は当然ありませんが、中川氏や松岡氏のような不審死を遂げさせるかの手段が使われます。地検やメディアはインターネットによって背後関係を暴かれる事態が多くなってきたので今後は使いにくくなるでしょう。不審死をさせるという方法は政治テロ以外の何物でもありませんが、今後は増えてくるかもしれません。

 

同書にも明記されていますが、米国の他国への対応というのは米国の都合によってころころと変わります。終戦直後においては日本を完全に非武装化して国力も他のアジア地域並みにした上で米国への復讐心をなくすことが主眼であったものの、現在は武力を充実させて米国の先兵として米国の世界戦略に協力する存在であることを望まれています。勿論その費用は日本持ちです。日本が独自にアジアでイニシアチブを取って中国やロシアと連携するなどというのはもってのほかであり、そのような事を企図する政治家が現れれば総力を挙げてつぶしにかかるでしょう。しかし米国の国力も一極覇権主義を維持できなくなり、米中欧露の多極世界に移行してゆくことが明らかになった現在、日本が21世紀に国民が経済的にある程度豊かな生活を保った状態で生き延びてゆくには従米一辺倒でよいはずはありません。最近地検は日本の遺伝子創薬の第一人者を潰すという作業にまで着手してきたようですが、いくら米国の国益のためといえ政治家以外の一般の日本人まで潰す仕事をさせられてよく日本国の官僚として平気でいられるものだと呆れます。反米になる必要はありませんが、お互いにとって良い事は大いにに協力しあい、自主路線を貫く必要がある所は頑固に貫く覚悟が今後は必要になるでしょう。著者はベトナム戦争時の北爆を批難して米国と対立し退任させられたカナダのピアソン首相を例にあげて独自路線の追求が米国が相手でも可能であることを示しています。ロシアもアメリカにひどい目にあっていますが、メドベージェフと異なりプーチンは対米自主路線を貫く覚悟でいます。日本人皆が少しずつでも自主独立の気概を持つ事、少なくとも「アメリカの機嫌を損ねる」などという論調がメディアに出て、圧力もかけられないうちからアメリカの希望を忖度して日本の国益を無視して米国の希望に沿うような政策を取る事をなくす事がまず第一歩ではないかと思います。


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