某公共施設で開催されている映画上映会の解説者を依頼された。
視聴者はご年配の方ばかりなので、リクエストされた映画は、なんと1964年公開の『三匹の侍』だった。
『三匹の侍』と言えば、私の子供の頃、大ヒットしたフジテレビ放映の時代劇である。それが映画化され、監督はテレビと同じ五社英雄。主役の三匹は丹波哲郎、長門勇、平幹二朗。
かなり大昔の作品なので、解説者としての責任でもう一度DVDを見た。96分のモノクロの時代劇であるが、さすが五社英雄監督。テレビよりも、より濃厚に斬新なタッチで三匹の侍を描いていた。
オープニングのシーンでは、黒澤明監督の『七人の侍』がダブった。五社監督もまた黒澤明に影響された日本の監督なのではないかと思った。黒澤作品に五社監督流のエロスの香りと甘美な残虐性が加味されていて、実にいい味の作品に仕上がっていた。
内容は「善と悪」。時代劇の主流のテーマである。『三匹の侍』では、善が百姓で悪がお代官さま。今ではフラットなストーリーでも、45年前にこの作品が作られたことに驚嘆した。
大ヒットしたテレビドラマを映画化することは、今の映画界では当たり前のことになっているが、当時ではかなり画期的な試みだったと思う。
解説者にならなければ、見落とす作品であった。視聴者のリクエストしてくる作品は、自分が知らなかった分野にまで視野を広げてくれ、勉強させてくれる。
何よりも上映館で、ご年配の視聴者の方たちの映画を楽しむ生き生きとした表情を見れるのも最高の喜びである。
活字で映画を表現するのもいいけど、視聴者にフェイストゥフェイスで映画を語ることも、生のライブ感があって、とても楽しい仕事だと実感した。
次回の作品が何になるのか楽しみだ。
製作: 1964年 日
監督: 五社英雄
出演: 丹波哲郎 / 平幹二朗 / 長門勇 / 桑野みゆき / 香山美子 / 藤原釜足