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永青文庫
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春季展示 「細川三斎の茶」
期間:3月30日(土)~6月23日(日)
「永禄6年(1563)に京都で生まれた細川三斎は、若い頃から千利休に師事し、利休七哲のひとりに数えられています。天正19年(1591)、豊臣秀吉の勘気に触れ堺へ蟄居の身となった利休を、古田織部と淀の船着場で見送った話は有名です。茶入、茶杓、花入など利休遺品の多くが細川家に伝わっています。(中略)生誕450周年を記念し、ゆかりの茶道具を前期後期合わせて約70点展示し、茶人三斎をご紹介します。」(公式より)
前・後期拝見しました
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茶杓 銘 ゆがみ 千利休作
節上より左に曲がった形の茶杓・利休より三斎に贈られたが故あって賤ヶ岳の七本槍のひとり平野長泰に贈られたが三斎は手放す事を惜しんだようで、今に残る添状にはその心情が綴られている。
三斎が利休の茶杓をいくつ持っていたのかは不明だが、この他に有名なのが利休最期に贈られ「羽与様」と筒書された茶杓。こちらは残念ながら享保二年の火事で焼失しています。
茶杓 銘 靏 細川幽斎作
節の枝芽が特徴的な茶杓。筒に「玄旨戯書之」とある事から剃髪して幽斎玄旨を名乗った天正10年以降の作だと分かる。
茶杓 銘くろつる写 細川三斎作
「黒鶴」なる利休作の茶杓の写し。節上の中央より斜めに切止まで染みておりそれが銘の由来であろうか?
三斎は利休の茶の湯を忠実に守った人物で茶杓作りも利休の作に倣う所が多かったのだろう。
茶杓 銘けつりそこなひ 細川三斎作
細身の茶杓。櫂先の撓が強いため裏側にひび割れが生じているのだが銘の由来もそれが原因らしい。三斎の茶杓の特徴として撓の緩いものが多いそうですが、こういった失敗から学んだものかもしれません。
茶杓 銘 さかひ 古田織部作
蟻腰と長い櫂先といった典型的な織部茶杓。逆樋で作ったのでこの銘が付けられたのだろう。樋の両側で色が違うのも織部らしい。
茶杓 銘 安禅寺 小堀遠州作
櫂先から切止まで樋が通り節の上下に大きな虫喰穴がある。仙台伊達家の茶頭を務めた清水道閑に贈られたもので筒には銘と和歌、元四(元和4年)の年号が記されている。
茶杓 銘 小木刀 千宗旦作
直腰、迷いの無い削りですっきりした印象の茶杓。宗旦は利休の孫であるが茶杓のイメージはかなり違う。
唐物茶入 利休尻ふくら
大名物。紫黒釉が掛けられ尻のふくらんだ形の茶入。元は利休が所持し北野大茶会で用いられたとされます。後に徳川秀忠より関ヶ原の戦功により三斎が拝領した。
かつて尻膨茶入は形の悪い茄子(茶入)とよばれていたが利休により茶会に使われる様になったとされています。
黒楽茶碗 銘 おとごぜ 長次郎作
乙御前の名の通りふっくらとした印象の茶碗。三斎が長次郎に作らせたとされているが利休形とはかなり印象が異なる。
古瀬戸茶碗 よびつぎ
元は織田有楽所持で後に三斎が手に入れた茶碗。「呼継」の名の通り一部欠けた部分を継いであるのだが、普通同種の陶片を継いでいるのを全く異なる染付磁器で継いでいるのが特徴的。
さてこの継ぎを行なったのは普通なら有楽と思われるところだが、有楽の生きた時代にはこの染付磁器は存在しなかったらしい。ある伝承では金森宗和が行なったとされており、姫宗和とよばれた人物らしい作意ではある。
灰被天目 珠光天目
かなり小振りの灰被天目茶碗で黄釉と黒釉が掛かり銀色の窯変が表れている。元は珠光が所持していた。
七仏通戒偈 一休宗純筆
「諸悪莫作 衆善奉行」と書かれた一休直筆の一行書。勢い余ってか「善」の一字が抜けてしまった様で後から脇にちょこんと書かれている。これを利休が数寄かなっていると褒めたとされている。
高山右近書状 細川三斎宛
1614年幕府の禁教令により国外追放を命じられた右近が三斎に宛てた手紙。この後マニラに渡った右近は1615年2月に彼の地で亡くなっている。
右近と三斎。信長時代からの戦友として、利休の高弟として戦国時代を生きた2人の別れの挨拶。なんだか寂しい気持ちになりました。