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薬価改定で医療費2500億円削減 特許切れ薬で下げ多く 経済

2024-12-20 17:49:30 | 医療・病気・疫病・ヘルスケア・健康・食事・睡眠 及び産業

政府は2025年度に薬価(薬の公定価格)を引き下げ、医療費を2500億円前後削減する方針だ。国費の抑制効果は約600億円を見込む。

引き下げ対象の品目が特許切れ薬などで多くなる仕組みにし、創薬の支援と社会保障費の伸び抑制の両立を狙う。20日にも改定範囲を固める。

 

25年度の薬価改定は2年に1度の診療報酬改定の間の年に実施する「中間年改定」にあたる。この改定では医療機関や薬局による医薬品の仕入れ価格と、薬価との乖離(かいり)率が大きいものを対象とする。

厚生労働省によると、24年9月時点の全医薬品の平均乖離率は約5.2%だった。

 

25年度改定では、医薬品の種類によって、薬価の引き下げ対象となる条件に差を付ける。長期収載品と呼ぶ特許切れの新薬では乖離率の「0.5倍」超えを条件とする。

一方、革新的な新薬については平均乖離率を超えることを条件にし、該当品目数を抑える。

 

政府は中間年改定を21年度に開始し、25年度は3回目となる。これまでは全医薬品の平均乖離率の「0.625倍」の超える乖離率の品目を一律に対象とした。

この場合は医療費の削減効果が大きい半面、新薬などが対象になりやすく、製薬会社の研究開発意欲が減退しかねないとの指摘があった。

 

25年度の薬価は製薬会社などの指摘を反映し、柔軟な設計にする方向だ。医療費の削減効果は従来よりも落ちる。21年度は予算ベースで約4300億円、23年度は約3100億円だった。

25年度の薬価改定では新薬と同成分で価格が低い後発薬(ジェネリック医薬品)についても、対象を革新的新薬と同様に「平均超え」とする。後発薬を巡っては供給不安が約4年続く。薬価が急激に下がり、メーカー側が採算を確保しにくいことが要因との声がある。

 

25年度には物価高に配慮し、錠剤や注射剤などの区分ごとに薬価の下限を定める「最低薬価」を引き上げる。

消費増税に伴う対応を除いて、2000年度以降で初の引き上げとなる。医療上の必要性が高いものの採算が確保しにくい品目の薬価の特例的引き上げも実施する。

 

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※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

 

 

 

山崎大作のアバター
山崎大作
日経BP 日経メディカル 編集長
 
ひとこと解説

後発医薬品については薬価が急激に下がることも問題ですが、それ以上に絶対額が低いことが問題で、採算が取れずに撤退する企業もありました。

最低薬価の引き上げは(どの程度になるかまだ分からないとはいえ)、後発品メーカーの再編と共に医薬品供給の安定化に寄与すると思います。

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日経記事2024.12.20より引用
 
 
 

住友化学、住友ファーマと再生・細胞医薬の新会社

2024-12-17 22:04:42 | 医療・病気・疫病・ヘルスケア・健康・食事・睡眠 及び産業


オンライン記者会見で説明する住友化学の岩田圭一社長㊨と住友ファーマの木村徹社長

 

 

住友化学は17日、子会社の住友ファーマと再生・細胞医薬品分野で新会社を設立したと発表した。研究や事業開発を担い、2025年2月から事業を開始する。

iPS細胞由来の再生医療製品をはじめ、複数の再生・細胞医薬品の実用化を想定しており、30年代半ばに1000億円、40年までに最大3500億円規模の売り上げを目指す。

 

新会社の名称は「ラクセラ」。現在、住友ファーマが開発中の製品を含め再生・細胞医薬分野の研究開発などを担う計画だ。

住友化学が66.6%、住友ファーマが33.4%を出資する。再生・細胞医薬品の開発製造受託(CDMO)は、すでに両社の共同出資会社「エスラクモ」がある。ラクセラで開発した製品の製造面などで連携する。住友化学の品質管理や分析技術も活用し、グループ全体で取り組む。

 

住友ファーマはすでに米国で一部の細胞医薬品を販売している。ただ売り上げ規模は小さく、今後の収益をけん引すると期待するパーキンソン病治療に向けたiPS細胞由来の再生医療製品の開発を進めている。

パーキンソン病治療の再生医療製品は日本で24年度中に仮承認にあたる条件及び期限付き承認の申請を予定していたが、当初想定より遅れることを発表していた。同日の記者会見で住友ファーマの木村徹社長は「25年度中を目指している」と話した。

 

再生・細胞医薬品の分野は将来の成長が見込めるものの、住友ファーマの足元の業績は厳しい。

当面は研究開発などの投資もかさむため、新会社も含め住友化学主導で進め、グループとして事業の成長を目指す方針を示していた。

 

ここ数年は年間100億円弱の研究開発投資も見込まれるなか、今後の成長にむけては「周辺の技術や材料なども含めグループ内外との連携を進めていきたい」(住友化学の岩田圭一社長)と説明する。

住友化学は再生・細胞医薬のほか低分子医薬やバイオ医薬品の一種である核酸医薬のCDMOなどにも注力し、35年に3000億円の売り上げ収益を目指している。

注力領域のなかでも放射性医薬品を手がける連結子会社の保有株売却を12月に決めたが、売り上げ目標は引き下げないという。

 

目の寿命を左右する「10の危険なサイン」 放置は危険

2024-12-12 06:49:08 | 医療・病気・疫病・ヘルスケア・健康・食事・睡眠 及び産業


(写真はイメージ)

 

日経Gooday(グッデイ)

スマホの画面で小さい文字を追うとき、夜間に運転するとき、「見えにくさ」を感じることはないだろうか。
 
小さな異変を「年のせいだろう」と放置していると、視力を失う原因となる目の病気が悪化し、物を見る能力(視機能)を取り戻せなくなったり、全身の老化につながったりする。
 
 
40歳を過ぎたら、一生お世話になる大切な目の機能を維持するために、見え方を定期的にチェックしよう。
 
順天堂大学医学部眼科学教室先任准教授の平塚義宗氏に、加齢と視機能低下の関係や、視機能を確かめる10のチェックについて聞く。
 
 

「見えにくさ」を放置すると視機能の低下、全身の老化に

近くを見るときにぼやける、目が疲れやすい、本を読むのが苦痛になってきた、細かい文字を読み違える、夜間の運転が怖くなってきた――このような変化を「年のせいだから仕方ない」と放置していないだろうか。

老眼鏡やコンタクトレンズを使っている人は、最後に眼科を受診してチェックしてもらったのは何年前か、覚えているだろうか。

 

「ふと感じた見えづらさを『年のせいだろう』で片付けていると、緑内障、加齢黄斑変性など、視力を失う原因となる目の病気を見逃すことになります。

見えづらさを放置せず、目の機能の低下に気づくチャンスにしてほしい。目の病気の治療法は年々進歩しています。今からでもできることはたくさんある、とポジティブに捉えていただきたいのです」と言うのは、順天堂大学医学部眼科学教室先任准教授の平塚義宗氏。

 

確かに、血圧や血糖値、コレステロールなどの数値には敏感なのに、目の老化、というとピンとこない、理解できていない、という人は多いかもしれない。

それには、目の検査といえば視力検査くらいしか受けたことがない人が多いことが関係していそうだ。

 

「目の病気の早期発見につながる重要な検査といえば、眼球の後面にある網膜などを観察する眼底検査です。

日本眼科学会や日本眼科医会はその必要性を訴えてきましたが、40歳以上の国民が対象となる特定健康診査(特定健診、いわゆるメタボ健診)で眼底検査を受けられるのは、高血圧または高血糖があり、医師が必要と認めた人に限られています。その結果、受診者の18%しか眼底検査を受けることができていないという現状があります」(平塚氏)

 

加齢とともに起こる老視(老眼)、緑内障、糖尿病網膜症では、以下のような残念な現状が明らかになっている。

 

 

このように、目の健康が後回しにされがちである理由として平塚氏は、「年のせいだから仕方ないとあきらめている人のほか、『眼科は本当に困った症状が表れてから行くところ』という思い込みがあると感じています。

しかし、視力が失われる要因となる病気であっても、早期に適切な治療を行えば、視力を維持することが可能になってきています。とにかく早期に発見し、治療に取りかかることが重要なのです」と強調する。

 

 

目の機能低下は健康寿命を縮める

2019年に新たに視覚障害(視力や視野などに問題があり、見ることが全く、あるいはほとんどできない状態)と認定された人の内訳を見ると、80〜89歳が29.6%、70〜79歳が28.2%、60〜69歳が15.3%だった[注4]。

高齢者が多いことが分かるが、人生100年時代になった今、60代、70代で視力を失うのは早すぎる。しかも、視覚障害の人の率は2007年の人口当たり1.3%から2050年までに2.0%に増えるとされている[注5]。

 

 

視機能を失う人を減らすために、平塚氏も参画する日本眼科啓発会議は2021年、加齢に伴う視機能低下を「アイフレイル」という新たな概念として提唱した。

そして一般の人に向けて「40歳以上の人のためのアイフレイルガイド」を公開するなど、予防のための対策を呼びかけている。

 

アイフレイルとは、「加齢に伴い視機能が低下した状態、またはそのリスクが高い状態」のことを言う。

「アイフレイル」の「フレイル」という言葉は、年齢を重ねるとともに心身が弱った、健康と要介護の中間に位置する状態のことだが、視機能が低下する「アイフレイル」もまた、自立した生活を困難にする要因となる。視覚によって得られる情報は、外部から与えられる情報の8割以上を占めているからだ。

 

目の機能が低下すると、見たいものがはっきりと見えなくなる。読書や運転が難しくなる。

段差や階段がよく見えず外出がおっくうになる――このようなことが筋力・歩行機能の低下、社会参加の減少などにつながり、健康寿命を縮めていく。

 

認知症のリスクとも密接に関わる(囲み参照)。また、「目は全身の窓」と言われるように、目の血管は全身の健康状態を反映するため、目を観察することによって動脈硬化や糖尿病の悪化に気づくこともできる。

「メタボやロコモ[注6]という概念は、今や広く一般のみなさんに浸透し、予防のために生活の改善を心掛けている人が多いです。

 

フレイルという言葉も徐々に知られるようになってきました。これらと同様に、アイフレイルについてもぜひ理解していただきたいと思っています。

早めの眼科への受診や生活改善に意識を向けることで、目の機能を確実に、長く維持し、さらには全身の老化予防にもつなげていくことができます」(平塚氏)

そこで、加齢によって起こる目の機能の低下、注意すべき目の病気、それらを予防していくための有効な生活習慣について聞いていく。

 

 

【最新報告】「視覚障害」が認知症の修正可能なリスクファクターに


世界的医学誌ランセットの認知症に関する委員会は、2020年に認知症の12の修正可能なリスクファクターを発表、そこに2024年7月、「視覚障害」と「高LDLコレステロール」が加わった。
 
これにより14のリスクファクターは、
【人生の初期】低学歴(5%)【中期】難聴(7%)、高LDLコレステロール(7%)、外傷性脳損傷(3%)、うつ病(3%)、運動不足(2%)、喫煙(2%)、高血圧(2%)、糖尿病(2%)、肥満(1%)、過度の飲酒(1%)【後期】頻繁でない社会的接触(5%)、大気汚染(3%)、視覚障害(2%)となった。視覚障害は高血圧や糖尿病に匹敵する影響力の大きさといえる。

※( )内は各リスクファクターの人口寄与割合。出典:Lancet. 2024 July 30: S0140-6736(24)01296-0.
 
 

 

視機能低下を放置すると日常生活が制限されていく。加齢に伴う目の変化に、糖尿病や高血圧などの「内的要因」、紫外線や喫煙などの「外的要因」が加わって、視機能が低下していく。

そのまま放置すると、趣味の活動や外出などの自立した生活が制限され、要介護リスクが高くなり、健康寿命が短くなる(図:40歳以上の人のためのアイフレイルガイド<日本眼科啓発会議>)

 

 

●「加齢に伴う変化」が目の機能低下のベースとなる

アイフレイルのベースとなるのは、加齢による目の形態的変化や機能的変化だ。

例えば、目の血管が硬くなり動脈硬化を起こしたり、酸化ストレスによる慢性炎症が起きたり、視神経がもろくなったりする。網膜で光刺激の情報を処理する神経節細胞は30代に比べて70代では15〜20%ほど減少し、視野の感度低下につながる。

 

レンズのようにピント合わせをする水晶体は加齢により白く濁り(白内障)、目の表面の透明性を維持する角膜内皮細胞も減っていく。ピントを合わせる力やくっきりと見る力も低下していく。

 

●「外的要因」が目にストレスをかける

こうした加齢による衰えに、生活習慣や喫煙、紫外線、手術による侵襲、薬の副作用などの「外的要因」が拍車をかける。

見えづらさを感じても目に関する正しい情報が手に入らない、周囲に相談する人がいないといったことも、目の健康維持に負の影響を与える。

 

●「内的要因」も目にストレスをかける

もう一つの大きな要因が、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの内的要因だ。

これらはいずれも視機能に関わる血管や神経の働きに悪影響を与える。「しかし、眼底検査をすることで、これらの病気のリスクを目から判断することもできます」(平塚氏)

 

 

2つの目は互いの機能を補完、異変に気が付きにくい

視機能低下の原因になる病気には、視界がぼやける「白内障」や、視野が欠ける「緑内障」といった目の病気がある。

これらの病名は聞いたことがある、という人も多いはずだ。しかし、自分ごととしてしっかり理解していないために、自分がそうした病気になる可能性を考えたこともない人は少なくないだろう。

 

中には、緑内障と診断され治療を始めたものの、「特に症状がないから」と点眼薬の治療などを中断した、という人もいるかもしれない。

平塚氏は、視機能を低下させていく病気の怖さは、「多くの場合、初期には全く自覚症状がないこと」だと話す。

 

「私たちは2つの目を持っているので、片目が悪くてももう片方の目がその機能を補填します。

その結果、対象のものが『 見えている』ことになってしまい、問題を感じにくいのです。緑内障で視野が本当に大きく欠けるのは、相当進行してからですし、糖尿病網膜症で目の奥が出血していても、中心に出血がなければ視力は落ちません。

 

詳しい検査をして、かなり進行している、という状態でも、本人はまったく自覚がないことが怖いところなのです」(平塚氏)

自覚症状がないまま視機能の低下が進行すると、病気の種類によって見え方は異なるが、「かすむ」「暗い」といった、下図のような「見えにくさ」となっていく。

こうなると自動車の運転が難しくなったり、字が読みづらい、転倒しやすいなど、日常生活にも支障を来すようになったりする。さらに、行動に制限が生まれ、外出機会が減る、一気に老け込む――ということになりかねない。

 

 

視機能が低下すると、見え方が変化していく。

はっきり見えていたものがぼんやりし、あざやかに見えていたものがかすむようになる。視界が暗く、狭くなっていくこともある(図:40歳以上の人のためのアイフレイルガイド<日本眼科啓発会議>)

 

 

目の異常を示唆する「10の変化」とは?

明らかな自覚症状がなくても、「見えにくさ」があると目には負担がかかっているので疲れやすくなり、以前よりも読書時間が短くなるなど、生活に変化が出る場合もある。

普段の身近な症状から視機能低下に気づいてほしい、と日本眼科啓発議の眼科専門医たちがディスカッションをして作ったのが、「アイフレイルチェックリスト」だ(下図)。

 

「10のチェック項目のうち2つ以上に該当すると、アイフレイルの可能性があります。

眼科医に相談し、眼鏡やコンタクトを調整したり、必要な検査を受けたりする、という行動につなげてください」(平塚氏)

 

 

 

2つ以上当てはまったら注意「アイフレイルチェックリスト」。10項目のうち2つ以上当てはまる人は、一度、眼科専門医を受診し、必要な検査を受けよう。
アイフレイルアドバイスドクター(https://www.eye-frail.jp/advice-doctor-list/)を受診すると話が通じやすい(図:「アイフレイル・ガイドブック」2023年度版 日本眼科啓発会議より。イラスト:堀江篤史)

 

チェック内容を総点検 項目から分かる目の老化、症状

「アイフレイルチェックリスト」の項目は、すべて目の老化に伴って起こる症状だという。どの項目にチェックが入ったら、どんな病気、状態の可能性があるのか。それぞれのチェック内容について平塚氏に解説してもらおう。

 

(1)目が疲れやすくなった

「眼精疲労、ドライアイ、老眼などによって、かけている眼鏡やコンタクトの度数が合っていない可能性があります」

 

(2)夕方になると見にくくなることが増えた

「長時間のパソコンによる眼精疲労で夕方になると見えにくくなる。あるいは、花粉症があって、原因となる花粉が飛散するピークが夕方の場合、花粉症の症状として見えにくさが出ている可能性もあります」

 

(3)新聞や本を長時間見ることが少なくなった

「小さい文字を追うのが難しくなるのは老眼によるもの。眼鏡やコンタクトを目に合う状態に調整する必要があります」

 

(4)食事の時にテーブルを汚すことがたまにある

「老眼によって近くにあるものが見えづらくなっていると考えられます」

 

(5)眼鏡をかけてもよく見えないと感じることが多くなった

「近視、遠視、乱視など、網膜にピントが合わない屈折異常や、老眼が原因でしょう。眼鏡やコンタクトの度数を調整し直す必要があります」

 

(6)まぶしく感じやすくなった

「まぶしく感じるのは初期の白内障の代表的な症状です」

 

(7)はっきり見えない時にまばたきをすることが増えた

「目が乾燥するドライアイの症状です。まばたきを増やして涙で目を潤そうとします。

また、涙の下水道である涙道が加齢でせまくなることで涙が流れにくくなり外に漏れ出すのが流涙症(りゅうるいしょう)です」

 

(8)まっすぐの線が波打って見えることがある

 

(画像:PIXTA)

 

「真ん中の見え方に問題がある場合、働いている人にストレスで起こりやすい中心性漿液(しょうえき)性脈絡網膜症や網膜の表面に薄い膜が形成される黄斑前膜などのことが多いです。

それ以外にも、加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫(視力をつかさどる網膜の黄斑にむくみができる)などの病気の可能性があります」

 

 

(9)段差や階段が危ないと感じたことがある

「視野が欠損する緑内障の可能性があります」

 

(10)信号や道路標識を見落としそうになったことがある

「これも、視野が欠損する緑内障の可能性があります」

 

 

この「アイフレイルチェックリスト」は、医学的な信頼度が高いことが2024年に実証されている[注7]。

目の疾患のある人と正常の男女2656人(平均年齢62.4歳)を対象に行った研究で、「チェックリストで10項目中2項目以上に該当すること」と「アイフレイルが認められること」に、統計学的に有意な関連があることが示されたのだ。

 

「健康診断で行われる視力検査だけでは、目のことはなかなか分かりません。視力が良くても安心ではありません。

アイフレイルにいち早く気づくためにも、10のセルフチェックを定期的に行いましょう。様々な研究から、視覚障害があると、健常な状態からフレイルになりやすいことが分かっているので(囲み参照)、できるだけ早い健常な段階から視機能低下に対応することが重要です」(平塚氏)

 

人生100年時代、視覚は一生大切に守りたい機能であることが今回の記事で納得いただけたはずだ。これからの人生、はつらつとアクティブに過ごすには、目の機能の維持が欠かせない。

 

 

「視機能低下」と「全身の老化」の関係を示すエビデンス

 アイフレイル(視機能の低下)がフレイル発症のリスク因子や健康寿命延伸の妨げとなることを示すエビデンスは国内外で複数報告されている。


●見えにくさと「身体的フレイル(筋力や足腰の衰えなど)」
 米国と英国の老年医学会と米国の整形外科学会から出されている「高齢者の転倒予防ガイドライン」では、視覚障害によって転倒のリスクは2.5倍になると報告されている[注8]。

日本における疫学データでも、1年間に5.4%の高齢者が2回以上の転倒を経験するが、見え方が良くなると転倒は20%減少することが明らかになった[注9]。
 65歳以上の高齢者512人を対象に、見え方と身体活動量の関連を検討した研究では、見え方の悪い女性は、良い女性に比べて中高強度の身体活動量と歩数が少なく、男性では見え方が悪い人は座っている時間が長くなった[注10]。

 転倒リスクを軽減したり、身体活動量を維持したりするには、よく見えていることが大切なのだ。


●見えにくさと「社会的フレイル(就労、外出、社会参加の減少)」
 見えにくさは社会参加(会やグループへの参加)にも悪影響をもたらす。よく見えている人は社会参加が1.6倍になり、見えにくいと0.6倍になること、見え方が悪いと、スポーツや趣味など身体活動を伴う活動が大きく減少することも平塚氏は研究により確認した。

「高齢者問題の核心は社会参加の低下による孤立です。社会参加が減り、孤独になるとフレイルも悪化します。高齢になったとき、社会参加を維持するためにもよく見える目を保つことは重要です」(平塚氏)


●見えにくさと「精神的フレイル(うつ、認知機能低下など)」
 視機能は認知機能とも関連が強い。
 平塚氏らは、白内障手術を受けた人たちを認知症グループ(39人)と、軽度認知障害(MCI)グループ(49人)に分け、白内障手術前と手術後3カ月の認知機能を測定した。
 
その結果、「認知症になってからよりも、程度の軽いMCIレベルで白内障手術を行ったほうが認知機能が2.9倍改善しやすくなることが分かりました」
 

 

平塚義宗氏
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順天堂大学医学部眼科学教室 先任准教授。1992年山形大学医学部を卒業後、2000年米国Johns Hopkins大学院公衆衛生学修士、順天堂東京江東高齢者医療センター先任准教授(臨床)などを経て、2015年より現職。
 
国立保健医療科学院客員研究員も兼任する。網膜や硝子体の疾患、白内障などを専門とするほか、眼科における公衆衛生、医療経済についても研究を重ねている。
 
日本眼科学会眼科専門医。日本眼科啓発会議メンバーとしてアイフレイルの普及活動を行う。

(まとめ:柳本操=ライター)

[日経Gooday2024年8月16日付記事を再構成]

 

 

日経記事2024.12.12より引用

 

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広がる粒子線治療、肺がんなど保険適用 患者10年で2倍

2024-12-10 18:31:14 | 医療・病気・疫病・ヘルスケア・健康・食事・睡眠 及び産業


粒子線治療はピンポイントでがんを狙う(千葉県柏市の国立がん研究センター東病院)

 

がんの放射線治療で陽子線や重粒子線を使う治療が広がっている。

2024年6月に早期の肺がんなど3種類が公的医療保険の適用に加わった。従来のX線よりもがんを狙い撃ちにするため副作用が少なく、治療効果も高い。ただ、治療施設は限られており、まずは担当医に相談をするのがよさそうだ。

 

関東地方に住む80歳代の女性は早期の肺がんが見つかった。

高齢のため手術ができず、18年、国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)で高度な医療と保険診療を組み合わせる先進医療として陽子線治療を受けた。がんは縮小し、今も経過を観察する。


 

陽子線と重粒子線(炭素イオン線)は放射線の一種で、粒子線とも呼ばれる。

粒子線は特定の深さで強さを最大にできるため、周囲の臓器や組織へのダメージを抑えつつ、病巣に集中照射できる。重粒子線は同じ線量でも、放射線治療で一般的なX線と比べ治療効果が約3倍あるとされる。

 

粒子線の治療が決まると、照射中に体が動かないよう、まず体形にあった固定具を特注で作る。

例えば重粒子線治療の場合、病院が患者の紹介を受けてから治療までに4〜8週間程度かかる。1回の治療時間は10〜30分程度で、そのうち実際に粒子線を当てるのは1〜5分ほど。照射によって痛みなどを感じることはない。1日1回、週4〜5回照射することが多い。がんの種類で合計の照射回数は変わる。

 

 

陽子線治療では16年以降、小児がんや前立腺がんなどが公的医療保険の対象となり、22年には肝臓や膵臓(すいぞう)がんなどが追加された。

重粒子線治療も16年以降、骨軟部腫瘍や前立腺がんが、22年には肝臓や膵臓がんなどが対象となった。

 

保険対象になり患者の費用負担が軽減し、全国で治療を受けた患者は23年度に1万人強と、保険適用前の15年度と比べ2倍超に増えた。

24年6月、新たに早期の肺がんが陽子線と重粒子線の両方で保険適用になった。また重粒子線では子宮頸(けい)部の扁平(へんぺい)上皮がんと、膣(ちつ)など婦人科領域にできた悪性黒色腫も対象となった。いずれも手術が難しい場合に限られ、腫瘍の大きさなどの条件がつく。

 

肺がんは全体の9割を占める非小細胞肺がんのうち、病気の進行度を示すステージが1〜2Aの患者が対象だ。

実際は体力が低下し手術が難しい高齢者や、喫煙による慢性閉塞性肺疾患(COPD)や間質性肺炎で肺機能が下がった人が粒子線治療を受けることが多い。陽子線の場合10〜22回、重粒子線は1回か4回当てるのが一般的だ。

 

 

X線は体にあてると表面近くでエネルギーが最も強くなる。

体の中にあるがんに届くまでに、通り道にある正常な臓器や組織を傷つけやすい。QST病院(千葉市)の中嶋美緒・頭頸部胸部腫瘍課長は「X線では肺炎や組織が硬くなる線維化が生じやすく、特にCOPDで肺の機能が下がった患者などには粒子線が向く」と説明する。

 

子宮頸部の扁平上皮がんは長さが6センチ以上が対象。子宮頸部の近くには直腸があり、X線は当たると出血しやすい。

大阪重粒子線センターの鈴木修主任部長は「重粒子線は直腸の出血などの副作用を抑え、生存率改善が期待される」と話す。

 

現時点で保険適用のがんは陽子線が9種類、重粒子線は11種類ある。いずれかもしくは両方の治療ができるのは全国で26カ所、特に重粒子線の施設は7カ所と限られる。

粒子線治療を希望する場合、直接実施施設を訪ねるのではなく、まずは担当医に相談してほしい。(草塩拓郎)

 

 

医師や技師の不足が課題に

早期の肺がんなどはこれまで先進医療で粒子線治療を実施してきたが、患者は約300万円の治療費を負担していた。
 
現在は保険適用となり、高額療養費制度を使えば高収入の現役世代でも毎月の医療費を約30万円以下に抑えられる。
 

国がん東病院の中村匡希医員は「患者の費用負担が軽くなり、医師が粒子線治療を選択肢として患者に示しやすくなった」と話す。

一方で患者の増加に伴い、医療現場の負担が増している。QST病院の石川仁病院長は「肝臓や膵臓がんを中心に患者が増え、医師や放射線技師が不足している」と話す。治療を望む患者が増えた場合、対応が難しくなる可能性もありそうだ。
 
 
 
 
 
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2024.12.07より引用

 

 


コンゴで「原因不明の病気」、呼吸器感染症か 検査急ぐ

2024-12-06 16:52:31 | 医療・病気・疫病・ヘルスケア・健康・食事・睡眠 及び産業


患者が発生したコンゴ民主共和国南西部パンジにある病院=AP

アフリカのコンゴ民主共和国(旧ザイール)南西部で、インフルエンザに似た症状の原因不明の病気が広がっている。

アフリカ疾病対策センター(CDC)によると、患者は10月下旬から確認され、少なくとも79人が死亡した。呼吸器感染症の可能性が高いとみられており、保健当局は患者の検体の分析を急いでいる。

 

 

山奥深くのコンゴ南西部、10月下旬から流行

アフリカCDCの5日の記者会見によると、今回の流行は10月24日以降にコンゴ南西部クワンゴ州にあるパンジという山奥深くの地域で始まった。

同国当局は12月初めに流行を把握した。患者の主な症状は発熱、頭痛、せき、息苦しさ、貧血などでインフルエンザにほぼ似ている。アフリカCDCは感染症対策の専門家を現地に派遣した。

 

アフリカのコンゴ民主共和国(旧ザイール)南西部で、インフルエンザに似た症状の原因不明の病気が広がっている。アフリカ疾病対策センター(CDC)によると、患者は10月下旬から確認され、少なくとも79人が死亡した。呼吸器感染症の可能性が高いとみられており、保健当局は患者の検体の分析を急いでいる。

山奥深くのコンゴ南西部、10月下旬から流行

アフリカCDCの5日の記者会見によると、今回の流行は10月24日以降にコンゴ南西部クワンゴ州にあるパンジという山奥深くの地域で始まった。

同国当局は12月初めに流行を把握した。患者の主な症状は発熱、頭痛、せき、息苦しさ、貧血などでインフルエンザにほぼ似ている。アフリカCDCは感染症対策の専門家を現地に派遣した。

 

 

382人確認された患者のうち、5歳未満の子どもが半数以上を占め、死者数でも最も多いという。患者の3割は25歳以上の大人だ。

医療環境が整っていないことに加え、劣悪な衛生環境や栄養状態も患者や死者の増加に影響していると考えられる。

 

 

呼吸器感染症とみられているが、同地域には検査ができる施設がなく、現時点で原因は不明だ。

インフルエンザなど既知の感染症の可能性もあれば、未知の病原体による新型の感染症の可能性も否定できない。当局は患者の検体を隣州の研究施設に送って検査しており、12月6日か7日には結果が出る見通しだという。

 

 

医療資源乏しく、「原因不明の流行」頻発

アフリカではコンゴを中心にエムポックス(サル痘)の感染が拡大し、世界保健機関(WHO)は8月に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。

WHOによると1月から11月3日までに疑い例を含めてアフリカ地域の感染者は約5万8000人に上り、約1100人が死亡した。コンゴは感染者の83%、死者の98%を占める。

 

赤道直下の中部アフリカに位置するコンゴは熱帯雨林が多く、レアメタル(希少金属)のコバルトなど鉱物資源が豊富だ。

資源採掘のために熱帯雨林の付近に人口密集地域ができ、人と野生動物が近い環境にある。貧困や栄養不良で人々の健康状態は悪く、エムポックスのような動物由来のものを含め感染症が流行しやすい。

コンゴに感染症の研究拠点がある大阪公立大学の城戸康年教授は「同国は感染症の流行状況をあまり監視できておらず、今回のような原因不明の病気は頻繁にある」と話す。検査能力が不足し、既知の感染症であっても十分な診断ができていないという。

 

 

アフリカの感染症対策、先進国にも重要

コンゴを含めアフリカでは感染症対策が深刻な問題だ。

世界で2億人以上といわれるマラリア患者の9割以上はアフリカ地域が占め、致死率が非常に高いエボラウイルス病(エボラ出血熱)やマールブルグ病の感染拡大もしばしば起きる。エイズやエムポックスのようにアフリカから世界的な流行につながったものもある。

 


 

 

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大阪公立大の城戸教授は「新しい感染症がアフリカで生じれば、いつ世界に広がってもおかしくない。各国がそれを恐れるのであれば、平時から自分ごととして監視すべきだ」と訴える。

日本をはじめ先進国はコンゴ産の資源を使っているが「同国の人々の健康問題には日常的な支援が行き届いていない」と懸念する。

 

コンゴの今回の流行がただちに日本や世界に広がる可能性は低い。だが、新型コロナウイルス感染症やエムポックスの世界的流行は自国だけの対策には限界があるという現実を突きつけた。

空港での水際対策では防ぎきれない場合もある。城戸教授は「感染症対策の最前線がどこにあるのか、よく考えたほうがいい」と国際協力の重要性を指摘する。

(越川智瑛、尾崎達也、松浦稜)

 

 

 
 
 
 
 
 
 
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