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ブラックストーン社長、投資拡大の一因に日本企業の変化

2024-06-11 19:34:18 | 世界経済と金融


ブラックストーンのジョナサン・グレイ社長兼最高執行責任者

 

米大手投資会社ブラックストーンが日本での投資を積極化させる。

ジョナサン・グレイ社長兼最高執行責任者(COO)は日本経済新聞の取材に対し、企業のプライベートエクイティ(PE=未公開株)と不動産への投資を3年で1.5兆円まで積み上げると表明した。主なやりとりは以下の通り。

 

経済全体の回復×企業の変化が投資機会の拡大に

 

――日本での投資の環境をどうみていますか。

「日本経済が再生し、ダイナミズムが戻っていることに極めて大きな期待を持っている。

まずマイナス金利解除といった金融政策の転換とインフレ基調への回帰だ。株式相場の上昇や円安も追い風で、岸田文雄政権が進める『貯蓄から投資』に関する政策も評価している」

 

「さらに企業の事業戦略の転換が大きい。自己資本利益率(ROE)を重視し、政策保有株や非中核事業を売却する動きが明確になっている。

経済全体の回復と企業の変化が組み合わさり、投資機会の拡大につながっている」

 

――欧米でのPEや不動産の投資に比べて日本の方が過熱感が薄く、利益を上げやすいということなのでしょうか

「日本での大きなPEの投資会社は限られており、数百社が競い合っている米国に比べると日本の方が競争環境は良い。

ただ、それだけで日本での投資に期待しているわけではない。先ほど言った2点の組み合わせを背景に日本の成長に確信を持っており、我々の専門人材を生かして企業の体質強化を後押しできると思っている」

 

ヘルスケア、デジタル、製造業への投資検討

 

 

――具体的にどういった分野への投資を考えていますか

「PE投資では高齢化に伴い、ヘルスケアが非常に大きな投資テーマになっている。

既に製薬会社や医療サービスの会社への投資を進めている。2点目がデジタル化だ。ソニーグループ傘下のオンライン決済代行会社、ソニーペイメントサービス(東京・港)の買収がその一例だ。名前は出せないが追加で取り組んでいる案件もある」

「最後に日本の製造業の強さに着目している。ロボティクスや脱炭素への移行、先端のエレクトロニクスなどを対象に検討を進めている」

「不動産投資では円安で特にアジアからの観光客が増えているのでホテルに注目している。

世界的に投資を増やしているデータセンター、人口が伸びる都市圏の住宅にも投資妙味がある。

PEと不動産を合わせて、企業価値ベースで1.5兆円を3年で投じる計画だ。これはブラックストーンが2007年の日本進出から積み上げている投資額と同程度だ」

 

――日本での資金調達はどう進めますか

「日本生命保険などの生命保険会社との連携を増やしている。

PEや不動産を組み込んだオルタナティブ(代替)資産の商品の販売では野村証券や大和証券と協力しており、販売網は拡充している。

貯蓄から投資へという全体的な流れのなかで(ブラックストーンにとっての)資金調達元として魅力は高まっている」

 

――景気減速が目立つ中国と比較して日本が投資先として有望となっている面はあるのでしょうか

「『チャイナプラスワン』ということで各国の企業が中国に加えて製造拠点を確保する動きが活発になっている。

日本をはじめとして拠点を分散化する動きがあり世界の投資家が日本への魅力を感じている背景もあると思う」

 

 

日経記事2024.06.11より引用

 

 

 


安保理、ガザ新停戦案の履行要請 米提出・ロシアは棄権

2024-06-11 17:17:03 | NATO・ウクライナ・ロシア・中国・中東情勢


10日、安保理は米国提案の決議を採択した(ニューヨークの国連本部)=ロイター

 

【ニューヨーク=三島大地、佐藤璃子】

国連安全保障理事会は10日、パレスチナ自治区ガザでの戦闘を巡り、イスラエルとイスラム組織ハマスに新たな停戦案の履行を求める決議案を採択した。両陣営が決議案を受け入れるかは不透明だ。

ロシアは当初反対するとみられていたが、棄権に回ったことで採択につながった。ガザでの人道危機が深まるなか、国際社会が一定の協調を示した形で、イスラエルの孤立がより際立つ結果となった。

 

理事国15カ国のうち、日本を含む14カ国は賛成に回った。決議案を提出した米国のトーマスグリーンフィールド国連大使は「安保理はハマスに明確なメッセージを送った。

イスラエルはすでにこの取引に合意しており、ハマスが合意すれば、きょうにも停戦に至る可能性がある」と強調した。

 

ロシアは停戦手続きが不透明であるとして、採決を棄権した。

ロシアのネベンジャ国連大使は「(拒否権を行使しなかったのは)アラブ世界が決議案を支持しているからだ」と述べた。ロシアは当初、反対に回るとみられていた。

 

米英仏ロとならぶ常任理事国である中国は賛成票を投じた。米国の提案にはロシア同様に反対や棄権で応じるケースが多かったが「これ以上の戦闘を止め、人道的な大惨事を軽減するためだ」(傅聡国連大使)と説明した。

新停戦案は、5月31日にバイデン大統領が明らかにした。パレスチナ自治区ガザでの武力衝突を止めるための3段階の工程表が柱となっている。

 

第1段階はガザの人口密集地からのイスラエル軍撤退を含む6週間の停戦に入る。米国人を含む一部人質も解放する。

第2段階はハマスによるすべての人質解放とイスラエル軍の全面撤退を進める。第3段階でガザの復興計画に移る。

 

今回安保理が採択した決議は「イスラエルが受け入れた新たな計画を歓迎し、ハマスにも受け入れるよう求め、両当事者に対して遅滞なく無条件で完全に履行するよう促す」としている。

決議案は、交渉に6週間以上かかる場合でも、交渉が続く限り停戦が続くとも強調した。会合後、パレスチナのマンスール国連大使は「停戦を皮切りに決議が履行され、恒久的なものになることを望んでいる。

 

イスラエルに課せられているのは決議を履行し、直ちに停戦を実施することだ」と語った。

もっとも、イスラエルの出方は不透明だ。米国はすでにイスラエルが新停戦案に合意したとしているが、ネタニヤフ首相は「バイデン氏の説明には重要な要素が欠けている」と軌道修正している。

極右政党「ユダヤの力」出身の閣僚も、新停戦案を受け入れれば連立政権を崩壊させると圧力をかける。

 

安保理での決議案の採択後、イスラエルの代表は「ハマスの軍事力と統治能力を解体し、人質を取り戻すまで立ち止まらない」と述べ、戦闘継続の可能性を示唆した。

23年10月の戦闘開始以降、安保理はガザでの戦闘停止を巡り計4本の決議案を採択してきた。だが、ラマダン期間中の停戦を求める決議など一部は完全に履行されず、ガザに住む多くの人々がイスラエルによる空爆などに脅かされてきた。

 

イスラエルはこれまで入植地の建設停止を求める非難決議や占領地からの撤退要求決議に従ってこなかった。安保理は国連機関で唯一、法的拘束力のある措置を実行できる。

シンクタンク「国際危機グループ」のリチャード・ガウエン氏はイスラエルが決議を履行しなくても「(後ろ盾である)米国が制裁措置に同意する可能性は非常に低い」とみる。

 

ハマスが決議に従わない場合は「米国はハマスへの制裁を求めるかもしれないが、ロシアやアラブ諸国は距離を置くだろう」と指摘する。

「本日、安保理は(ガザにおける報復の)悪循環の終結を強く望んでいることを表明した。決議案が採択されたいま、この機会をとらえなければならない」。日本の山崎和之国連大使はこう訴える。

 

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

 

 

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渡部恒雄
笹川平和財団 上席フェロー

分析・考察

バイデン大統領は6月7日にフランスを訪問して、第二次世界大戦の帰趨を決めた上陸作戦が行われたノルマンディーで恒例の演説を行い、ウクライナ支援に対する米欧の結束を訴えました。

フランスのマクロン大統領を始め、欧州の首脳と会ったバイデン氏は、ガザでのイスラエルの軍事作戦への米国と欧州との立場の乖離が、ウクライナ支援の結束を維持する上でも、障害になりかねないことを実感したと思われます。

その意味で、ガザでの停戦について、安保理決議において、とりあえず米欧の足並みが揃ったことは良い知らせだと思います。また、米欧の結束を望まないロシアが棄権する意味もわかります。

 

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植木安弘
上智大学特任教授

分析・考察

今回の安保理決議は米国が発表した3段階の工程表に基づいているが、新停戦案が前進しない状況下で法的拘束力のある安保理決議を通してイスラエルとハマス双方にさらなる圧力をかける意図がある。

エジプトやカタールがハマスの説得にあたり、ブリンケン国務長官もネタニヤフ首相と会談。

イスラエルは戦争の目的は変わっていないとして攻撃を継続しているが、安保理で猛反対はしておらず、少なくとも第1段階は実施可能とみているのではないか。

あとは戦時内閣の極右を説得できるかである。

ハマスも自らのサバイバルのためには早期に戦争の終結が必要。まずハマスがこの新停戦案の受け入れを発表すればイスラエルも対応せざるを得なくなる。

 
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イスラエル・ガザ情勢

イスラエル・ガザ情勢

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日経記事2024.06.11より引用

 

 


米のミサイル不足、日本が補填へ 企業が受注し共同生産

2024-06-11 16:46:42 | NATO・ウクライナ・ロシア・中国・中東情勢


岸田首相㊨とバイデン米大統領の首脳会談で防衛装備に関する協議枠組みの設置を決めた
(4月、米ホワイトハウス)=共同

 

日米両政府は9〜11日、都内で防衛装備に関する会合を開き、具体的な協力策の議論を始めた。ミサイルの共同生産を進め、米軍の武器不足を補うことを想定する。

防衛力を相互に補完する態勢を作り、安全保障環境の変化へ対応する力を高める。日本が防衛協力で担う役割は一層大きくなる。

 

「日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議」(DICAS)は、4月の日米首脳会談で設置を決めた。防衛装備庁の深沢雅貴長官と米国防総省で兵器調達を担当するラプランテ次官が出席した。

①ミサイルの共同生産
②米軍艦船・航空機の日本での補修・整備
③サプライチェーン(供給網)の強化――が当面の協議項目となる。

進捗は日米外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)に報告する。

 

 

防衛装備を巡る日米の協力はこれまで、日本が米国製のミサイルや戦闘機を購入して自国の防衛力に組み込んでいた。

ロシアによるウクライナ侵略や台湾有事の可能性を踏まえ、これからは日米で互いに支え合う関係構築を急ぐ。

 

ミサイルを巡る連携は米軍が使う防空用の迎撃ミサイル「パトリオット」を日本企業が受注し、日本国内で共同生産する案などが浮上している。

米国は現在、ウクライナに加え、イスラム組織ハマスと交戦するイスラエルへの軍事支援で武器不足に陥りつつある。

 


記者団の質問に答えるエマニュエル駐日米大使(10日、米国大使館)

 

エマニュエル駐日米大使は10日、米国大使館で記者団に「ウクライナ支援で供与した兵器の備蓄を増やすには1年半以上かかる」と述べた。

「体制を立て直すまで米国に危害を与えようとする脅威は待ってくれない。同盟国の力が必要だ」と強調した。

 

パトリオットは三菱重工業が日本国内でライセンスを得て生産している。日本政府は2023年12月に国家安全保障会議(NSC)でパトリオットを米国に輸出すると確認した。米国の在庫不足を埋める役割を担う。

日本も台湾有事で衝突に巻き込まれた場合、今のままでは自衛隊が弾薬・ミサイル不足に陥りかねないといった防衛省内の分析がある。

 

日本の防衛装備の輸出は防衛装備移転三原則に基づいて決めている。パトリオットのように他国企業の特許を使って国内でつくるライセンス生産品は、特許を持つ国に移転できる。

日本から装備を受け取った国が第三国に引き渡す際には日本の事前承認が必要だ。ウクライナのように戦闘中の国や地域に装備を送ることはできない。日本からの装備移転による支援はあくまでも日米同盟や国際貢献の強化が目的だ。

 

10日には両国の防衛産業に関係する企業10社ほどを交えた会合を開催した。

関係者がそろって愛知県にある三菱重工の「F35」戦闘機の組み立て・整備工場も視察した。日本は米国製のF35を部品で調達し、国内で組み立てている。

民間企業を巻き込んで防衛協力の具体策を詰める初の試みとなる。

 


DICASの艦船整備の作業部会(11日、都内)

 

米海軍の艦船や空軍の航空機を日本の民間施設で補修・整備する方針を受け、11日に艦船整備の作業部会を開いた。

インド太平洋地域での米軍の機動力を高める目的がある。8月には航空機整備の作業部会を設ける。

 

これまで米国本土やグアムを母港とする米海軍の艦船は、アジア周辺で展開していても本格的な補修や分解、整備のために定期的に本土の施設に戻る必要があった。

その場合、数カ月間は使えない状況になる。航空機も定期的な大規模整備は韓国にある整備施設に機体を移して実施してきた。

 

エマニュエル氏は11日、都内のホテルで整備の対象について「原子力に関わる艦船は考えていない」との認識を記者団に示した。

中国、北朝鮮に近く東アジアの防衛の最前線である日本で整備ができれば、早期に運用に戻れる利点がある。

 

防衛省幹部は「防衛産業の仕事増につながるだけでなく、米軍がいない期間が減るので抑止力が増す」と指摘する。

中国による海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発の進展で、東アジアの安保環境は厳しさを増している。日本は22年末にまとめた安保関連3文書で敵のミサイル発射拠点をたたく「反撃能力」の保有を決めるなど、防衛力強化の真っ最中にある。

 

1960年に発効した日米安全保障条約に基づく、日本は守りに徹する「盾」で米国が打撃を担う「矛」という役割分担は、徐々に変わってきている。

日本が2015年に安保関連法で集団的自衛権の行使を可能とし、海上自衛隊が米軍艦船を守る「米艦防護」の任務も加わった。

 

22年末の国家安保戦略の改定に沿い、反撃能力を日米で共同で運用する。

自衛隊と米軍の日本周辺での指揮統制を向上させることも検討しており、部隊運用に欠かせない防衛装備での協力は重要な要素となる。

 

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※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

 

青山瑠妙のアバター
青山瑠妙
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 教授

ひとこと解説

アメリカの国力が低下しているなかで、中東などの地域紛争によりインド太平洋への関心の低下と政策の後退が生じないために、軍事産業を含めた日米関係も「相互補完」の日米同盟へと変貌しつつあり、日本に求められる役割は今後さらに大きくなっていくであろう。

こうしたなかで、日本のグローバルな政治的、外交的、そして軍事的な役割の増大はいわば時代の流れとなりつつある。

振り返って日本の対外戦略を見ると、どうしても対中戦略を中心に展開してきているが、グローバル大国的な役割が求められている以上、日本の対外戦略の理念が今後国際的に問われてくるのではないだろうか。

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日米首脳会談

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日経記事2024.06.11より引用
 
 

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