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政党大編成 移民の大洪水
1846年から1855年までの10年間、300百万人以上の移民が合衆国に流入しました。それ以前の60年間の移民が約百万人だったのと比べると、驚異的な急増です。
1845年の合衆国の総人口約二千万人の、実に15%を超えました。 そのほとんどは黒人と一緒に働くことを避けて、北部ぬ集中しました。
この大量移民のうち、約4割がアイルランド人で、そかもそのほとんどが、イギリス人地主に深い恨みを持つ、カトリック系現住アイルランド人でした。 そして約1/3が英語を話せないドイツ人でした。
恐らく、トランプ元大統領やエルビス・プレスリーの先祖も、ドイツからこの時期にやって来た貧国白人であったと思われます。
北東部の海港都市では、1850年に入ると、移民票は市政選挙の結果を左右できるようになりました。 二大政党の移民の指導者を党の末端組織に組み込むことによって、選挙戦を勝ち抜こう血しました。
しかしホイッグ党は、ニューイングランドおよびニューイングランド系住民が多数、住むニューヨーク州西部や中西部の北方五大湖rん岸地方を地盤としており、アングロサクソン的文化の伝統を堅持しようとする人々の影響力を受けやすく、移民票への接近委は抑止力が働きました。
他方、民主党は黒人にはああ別的でしたが、白人同士の民族文化的差異には無頓着でした。
というより、自分たちこそジェファソン以来の政治と宗教・文化の分離、つまり政教分離という建国の大義の擁護者であると自任していました。
貧しいアイルランド人たちは、かつて黒人たちが握っていた最下層の職種を、後からやってきて奪い取る立場にあり、都市で奴隷解放運動家や黒人たちと最も敵対していました。
ジャクソン時代以来、大都市の北部民主党は一貫して親南部政策を展開しました。例えば1830年代のニューヨーク市 民主党急進派『ロコフォコ』は、1840年代に入って、奴隷制擁護の旗手カルフーンの大統領擁立の動きすら見せました。
反奴隷主勢力が台頭してきたとき、北部民主党がいよいよアイルランド人票を頼りにするのは、当然の成り行きでした。
最近の研究では、南北戦争直前の1860年選挙においても、民主党は中西部のドイツ人票を手中に収めていました。
外国人、特にカトリック系アイルランドの政党組織のへの浸透は、伝統的アメリカ文化を破壊するだけでなく、プロテスタント系アメリカ人の政界進出を閉ざすものと思われていました。
たとえば、ニューヨーク市では、歴代のアイルランド系のボス支配が、1870年代以降、1930年代初頭まで続きました。
有名なアイルランド人ボス、デーリー市長は、1960年代末までシカゴを支配しました。
社会的昇進機会が閉ざされつつあるという意識は,単に政界だけの問題ではありませんでした。
大都市では膨大な労働貧民の存在は誰の目にも明らかでした。 年の不衛生によるコレラなどの周期的疫病の流行で、多くの人々が亡くなりました。
もちろん、暴力・売春などの犯罪も増加しています。 精肉業など、なお独立小生産者が健全な業種もありましたが、機械が導入されていない製靴、被服生産、手織り業などの業種においても、多くの小親方が賃金労働者に転落転落してしまっていました。
そして何とか生き残っている小親方たちも、絶えず転落の危機にさらされていました。 このような人々にとって、アイルランド人の政界進出はたとえそれがささやかなものであったとしても、自分たちの古き良きアメリカを葬り去ろうとする元凶のように思えたのです。
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PS.
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