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スターバックス2000店へ 首位マック猛追、「黒」が切り札

2024-10-22 14:04:53 | 小売り・スーパー、食料・飲料全般、ビジネス・水・酒・穀物メジャー


スターバックスコーヒージャパンは日本で2000店の大台が間近に迫る
(取材に答えた水口貴文最高経営責任者、東京都品川区の本社)

 

 

外食世界最大手の米スターバックスが日本に進出してから28周年を迎えた。

2025年に店舗数2000の大台を超える見通しで、単一外食ブランドとして国内最多の日本マクドナルドに次ぐ地位となる公算が大きい。

 

上質さが売りの「黒スタバ」やお茶(ティー)専門店など新顔を加えて猛追するが競争環境は激しい。新たな課題も見える。

 

 

 

1号店が28周年、創業者も「常連」

「おめでとうございます!」。進出28周年を迎えた8月2日、日本1号店である銀座松屋通り店(東京・中央)では従業員が来店客からひっきりなしに声をかけられていた。

 

 


スターバックスの日本1号店は開業28周年を迎えた(8月2日、東京都中央区の銀座松屋通り店)

 

同店は入り口のガラスに28周年を祝う手書きの装飾を施した。

日付にちなんだ限定のブレンドコーヒー豆を使ったメニューを提供し、夜には通常より暗めにした店内で発光ダイオード(LED)を使ったろうそくの灯による演出も始まった。店内は日本人、海外客両方であふれ、外で記念撮影する多くの人の姿が見られた。

 


日本1号店となる「銀座松屋通り店」は8月2日に28周年にちなんだ商品を展開したり特別なコーヒー豆を無料で配布したりした

 

 

 

 

牛丼「すき家」超えの公算

スタバは日本で30年近くの歴史を重ね、カフェチェーンでは最大手となった。

25年も年100店ペースの出店を続け、大台を達成すればマクドナルド(2978店舗)には及ばないものの、ゼンショーホールディングス(HD)傘下の牛丼チェーン「すき家」(3月末時点で1957店)を上回り、外食国内2位に躍り出る公算が大きい。

 

スタバは通常店、駅や高速道路上などの特殊立地にある「ライセンス店」に加えて2つの新顔が成長のカギを握る。

 

 



 

検索サイトで黒スタバと打つと上位に出てくるのが、19年に日本初開業した新型店「スターバックス リザーブ」だ。

黒地に星と「R」の文字を配したエンブレムがブランドの象徴で、内装にも黒を活用し上質な雰囲気を演出した。

 

東京・中目黒や銀座に構える旗艦店を中心に店によって品ぞろえは異なるものの、コーヒーに加えてワインなどの酒類、イタリア発ブランドの焼きたてパンなど上質さを売りにした飲食物を提供するのが特徴だ。

旗艦店のほか、リザーブブランドの商品を提供する店は全国60店強まで増え、柱となりつつある。

 

 


コーヒー以外に酒類なども提供し上質な空間を演出した「スターバックス リザーブ ロースタリー東京」
(19年、東京都目黒区)

 

 

20年に始めた日本独自のティー専門店「スターバックス ティー&カフェ(T&C)」もじわりと拡大し始めた。

多様化する消費者嗜好にあわせ、コーヒーもティーも楽しめる新コンセプトの店だ。

 

16年に米スターバックスから上陸したティーブランド「TEAVANA(ティバーナ)」の上質な茶葉を店舗で抽出した「ブリュードティー」や、通常店でも人気の高い「フラペチーノ」をティバーナの茶葉で仕上げた「ティーフラペチーノ」などが人気となっている。

日本でなじみ深い抹茶やほうじ茶に加え、紅茶をベースにした30種類以上の色鮮やかなティーメニューをそろえたスタバの進化を象徴する新型店だ。T&Cでは20代女性の比率が通常店より高く新規層開拓の役割も担う。

 

 


スターバックスが展開する「スターバックス ティー&カフェ(T&C)」(大阪市の「LUCUA 2階店」)

 

6月下旬の平日、T&C1号店の六本木ヒルズメトロハット/ハリウッドプラザ店(東京・港)は若者らの来店がひっきりなしだった。友人と2人で訪れた都内在住の20代の女子学生は「お茶メニューが好き。通常のスタバと使い分けている」と話す。

全国15店まで広げ出店ペースを加速させる。スターバックス全体でもティーメニューの売り上げは20〜22年の3年間で2倍以上に拡大しており成長をけん引する。

スターバックスコーヒージャパン(東京・品川)の加藤桜子商品本部本部長は「ターミナル駅や大型商業施設への出店を強く意識している」と強調する。これまでの中心だった都市部から地方に展開地域を広げていく考えも示した。

 

 

 

 

官報の決算公告によると、23年9月期のスターバックスコーヒージャパンの売上高は22年9月期比14%増の2894億円と過去最高となった。

新型コロナ前の19年9月期に比べると4割多い水準だ。原材料やエネルギー価格の高騰を受け、22年以降3年連続で飲み物や食べ物メニューを値上げした。

 

いちよし経済研究所の鮫島誠一郎首席研究員は、スタバが根付いた要因として「(氷をミキサーにかけた冷たい飲み物の)『フラペチーノ』など多彩なヒット商品と店舗ごとに異なるコンセプトにした画一的ではない店づくり」を指摘する。

フラペチーノは47都道府県の地域ごとに違う商品を出したこともある。各店舗でも店内照明を暗くしてキャンドルの明かりで雰囲気を演出したり、店員と一緒にラジオ体操をするイベントを開催したりするなど、地域に密着する運営になるように裁量を与えている。スタバは本社を「サポートセンター」と呼び、各店の施策を支援するという位置付けだ。

 

 


8月7日発売のスタバの新商品「サンシャイン パイン フラペチーノ」はアプリの会員限定で先行発売した

 

モバイル注文システムも整備しており、アプリ会員には新商品を先行発売するといったファン育成策にも余念がない。

投資負担は重いが、運営やブランド管理がしやすい直営店主義を掲げる。スタバジャパンは進出当初こそ小売りのサザビー(現・サザビーリーグ)との共同出資会社だったが、15年に米スタバが完全子会社化し上場廃止となった。

 

「TOB(株式公開買い付け)後、電子商取引(EC)などやりたかったデジタル施策が全部できるようになった」(水口貴文CEO)

 

 


水口貴文スターバックスコーヒージャパン最高経営責任者(CEO)が日本経済新聞の取材に応じた
(9月、東京都品川区の本社)

 

M&A(合併・買収)による陣取りをせず、自社の資産を最大限活用するオーガニック(自律的)成長への志向が高いのも特徴だ。

水口氏は「成長に向けてブランドは磨き続けなければならない」と語る。

 

水口氏は出店余地はあるとみており「地方のドライブスルー店は開店前に行列ができる。一定の需要がまだある」と話す。

スタバは年100店前後の強気の出店ペースを崩さないつもりだ。出店可能性を広げる黒スタバなどの新型店の重みは増す。

 

スターバックス、国内シェア半数押さえる

富士経済(東京・中央)によると、カフェチェーンを主体とする「コーヒーショップ」の国内市場は23年に前年比10%増となる4900億円となったもようだ。

27年は5135億円と23年比で5%増となる予測だ。

 

 



スタバの国内シェアは23年時点で半数強に達したもようだ。全都道府県への出店も15年に果たし、もはや日本のコーヒー文化に欠かせない存在となった。

 

 


中国発のコッティコーヒーは日本でも店舗を拡大している(東京都豊島区のCOTTI COFFEE西池袋店)

 

しかし国内のカフェ市場を巡る競争は激しさを増している。

かつての最大手ドトールコーヒーをはじめ、1杯100円台という手ごろさで存在感を高めるコンビニエンスストア、日本で急拡大している中国系の庫迪咖啡(コッティコーヒー)などあなどれないライバルが増えてきた。

 

 

 

 

さらにスタバにとって景気減速の兆しがある米国の消費動向は気がかりだ。

米スタバの24年4〜6月期決算は売上高が0.6%減の91億1300万ドルと2四半期連続で減収。米国では「6ドル」メニューも始めた。

 

レイチェル・ルジェッリ最高財務責任者(CFO)は「価格に敏感な顧客が増えた」と指摘する。

米スタバは前CEOを実質的に更迭し、9月9日付で後任にメキシコ料理チェーン、チポトレ・メキシカン・グリルのブライアン・ニコル氏を破格の報酬で迎え入れた。

 

日本の消費はいまだ回復局面。もし腰折れすれば顧客が離れる恐れがある。世界では米中2大市場で低迷しており、安定成長を続ける日本の重みは一段と増している。

 

 


米国ではマクドナルドやスターバックスで格安の「5ドル」前後のメニューが人気(㊨がスタバのセット)

 

 

 

過大請求など死角も

死角も見つかった。7月、日本のスタバで一部コーヒー豆について代金の過大請求が発覚。

総額は12万円余りと決して多くはないが、誤りに気付かなかった期間は約10年にも及んだ。SNSでは大きな話題となり、信頼に付いた傷は小さいとは言えない。

 

米スタバでは労働組合が結成され、職場の待遇改善などを巡ってストライキやデモが起こった。

日本でも23年、初めて労組ができ待遇改善などの協議が続く。一度立ち止まって、ガバナンス(企業統治)や内部統制などを含めて会社のあり方を総点検することが必要だ。

 

「全ては夢から始まった。日本のパートナーたちがかなえてくれた夢はもっと先へ行く」――。銀座の日本1号店の壁にはシュルツ氏自筆のメッセージが残されている。スタバは大台達成後の余韻に浸る間もなく、さらなる〝夢〟への試練が続く。

(中島芙美佳、篠原英樹)

 

 

 

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

 

 

 

 

 

藤元健太郎のアバター
藤元健太郎
D4DR 社長
 
ひとこと解説

これだけ店舗が増えても都心も郊外もまだまだ混んでいる店が多く,席が空いていないこともしばしばで需要の力強さを感じる。

コメダ珈琲などオンライン会議を禁止している外食店も多いがスタバはそうした制約も無く,店舗スタッフとの会話を楽しむもよし,モバイルオーダーで効率的に注文するもよし,テイクアウトもよしで利用者にとって使い方の自由度が高い。

もはやスタバは日本中どこにいても同じサービスレベルで街の中で空間を楽しみつつ安心してゆっくり座って何かをするための社会インフラとなっている感もある。

課題としては今後出店増だけでなく客単価向上を狙う時に食事目的のユーザー向けのフード系をどこまで拡大するかだろう。

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鈴木智子のアバター
一橋大学 教授
 
分析・考察

スターバックスコーヒーがTEAVANAを始めた際、ブランド名にコーヒーがあるのに大丈夫かと思いました。

米国では2017年に全店舗を閉鎖したようですが、日本では成功しているようですね。

日本人の嗜好(お茶好き)も大きく関与していると思いますが、スターバックスのブランドコンセプトがサードプレイス(第三の場所)である強みが発揮されていると改めて感じました。

つまり、お客様はコーヒーを買うため(だけに)スタバを訪れているのではなく、空間やスタバらしさを求めてくる。

スタバらしさが感じられれば、ティーでもフラペチーノでも(つまりコーヒーでなくても)、スタバである。スターバックスのブランドの強さを感じました。

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企業のビジネス戦略をグラフィックスでまとめ、分かりやすく解説しています。

 

 

 

 

日経記事2024.10.22より引用

 

 

 

 
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