日産自動車とホンダは15日、電気自動車(EV)分野で提携する検討を始めたと発表した。駆動装置に使う部品の共通化や調達連携を視野に入れる。車載ソフトでも協業する。日本車はEVシフトで出遅れ、中国や欧米勢の先行を許してきた。
国内2位と3位メーカーの提携が進めば、国内の自動車産業の構造転換を促す契機となる。
両社がこのほど提携の覚書を交わした。「イーアクスル」と呼ばれる駆動装置に使われる部品の共通化などを視野に入れる。
イーアクスルは駆動源のモーター、電力変換装置「インバーター」、回転を伝える「ギア」などを一体化した基幹装置。ガソリン車のエンジンに相当し、その性能はEVの競争力を左右する。
両社は車載ソフトウエアの開発でも協力する。車に搭載するコンピューターを制御する基本ソフト(OS)のシステム設計などの共同研究を念頭に置く。
米テスラは消費者が無線通信経由で基本ソフトを更新して自動車の機能を改善する仕組みを始めており、自動車会社間のソフト開発競争は激化している。
同日開いた記者会見で、日産の内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は「新興勢力などが参入し、市場の変化するスピードが変わった」と提携検討の理由を述べた。ホンダの三部敏宏社長はEVやソフトの開発では「規模拡大が欠かせない。(ガソリン車で積み上げてきた)これまでの強みではこれからは戦えない」と強調した。
一方で両社の協力が資本提携などに進む可能性などについては、三部氏は「現時点では一切ない」と指摘。内田氏も「その通りで、考えていない」と明言した。
日本勢はEVで出遅れている。23年の世界販売台数は日産が14万台、トヨタ自動車が10万4000台、ホンダが1万9000台だった。テスラは180万台、中国最大手の比亜迪(BYD)は157万台に上り、大きく水をあけられる。
欧米メーカーを含む世界の自動車大手は、EV向け電池の自前工場などに巨費を投じている。そうした中でEV価格は世界的に下落し、各社とも収益性の確保に苦しむ。
アイシンやニデックなどの投資規模を参考にすると、EV向けの駆動装置1000万台分相当で4000億〜5000億円の投資額に膨れる可能性がある。
駆動装置を巡っては、日産とホンダ系のそれぞれのサプライヤーがすでに一部車種において部材調達で連携している。取り組みを拡大できればコスト競争力を高められる。
日産とホンダはEVの航続距離を決める車載電池でも連携を視野に入れる。車載電池は中国勢の技術力が高く、世界最大手の中国・寧徳時代新能源科技(CATL)をはじめ、中国上位2社で5割を超える。
日産の内田氏は幅広い分野の連携をする背景について「EVに必要な技術開発をすべて個社でやることは大変厳しい」と述べた。
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日経記事2024.03.15より引用