James Ferguson/Financial Times
ハンガリーのオルバン首相は自国の民主主義を弱体化させていると欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会とバイデン米政権に非難されてきた。
彼はトランプ氏の勝利を「歴史は加速しており(中略)世界が変わろうとしている」証拠だと歓迎した。
欧州の国家主義者やポピュリスト(大衆迎合主義者)は、トランプ氏が米大統領に返り咲くのをまるで、救世主が地平線の向こうの米国から駆けつけてくるかのように思っている。
オランダでは極右の自由党のウィルダース党首が「愛国者たちが世界中の選挙で勝利を収めている」と喜び、ロシアでは親プーチンの極右思想家ドゥーギン氏がX(旧ツイッター)に「我々は勝った(中略)グローバリストらは最後の戦いに敗れた」と歓喜の声を投稿した。
トランプ氏の勝利を歓迎する数々の政党は、すでに欧州で強力な地位を築いている。オーストリアとオランダでは、それぞれ少し前に実施された下院選で国家主義的なポピュリスト政党が最大得票率を獲得した。
ドイツでは極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の支持率は世論調査で2位に浮上している。総選挙は2025年2月に前倒しされる見通しだ。
フランスでは極右の国民連合(RN)が政権獲得に近づきつつある。英国の右派ポピュリスト政党「リフォームUK」やポーランドの極右政党「法と正義」、スペインの極右政党「ボックス(VOX)」は、いずれもトランプ氏の勝利に力づけられたと感じるだろう
トランプ氏のMAGA(米国を再び偉大に)運動と欧州のポピュリストには、思想面で強い共通点がある。みな反移民、反「ウオーク(woke)=社会正義に目覚めた企業や人」、反グローバリストの立場をとり、ロシアにはほぼ同情的で、イスラエルを強く支持している。
彼らは新型コロナウイルスのワクチンや米著名投資家ジョージ・ソロス氏を巡る陰謀論を信じたり、有色人種の移民らが先住の白人系社会を塗り替える「大交代理論(great replacement)」などの陰謀論に引き付けられたりしている。
伝統的価値観を重視する欧米の右派
トランプ氏が計画している不法移民の大量強制送還を実行に移せば、欧州でも同様の措置を求める声は大きくなるだろう。
オーストリア自由党のキクル党首は、オーストリアの市民権を取得していても同国の価値観を尊重できない場合は「強制的に本国へ送還する(remigration)」政策に賛成だと発言している。
「ウオーク」の考え方への敵意も米欧の右派に共通するテーマだ。トランプ陣営の最も効果的な選挙広告のいくつかは、トランスジェンダー問題を標的にしたものだった。
オルバン氏は18年10月にハンガリーの大学でのジェンダー研究を禁じ、ロシアのプーチン大統領は23年、自国で性別を変えるのを禁じる法律に署名した。
ポピュリスト右派の多くがプーチン氏を強力な指導者かつ伝統的価値観の擁護者だと考えるのは、彼らの多くがプーチン氏に共感しているということだ。
オルバン氏は、欧州の平和を推進する人にとってトランプ氏の勝利は前進だとたたえた。だが右派のポピュリストがウクライナ戦争終結を求める際は、プーチン氏を露骨に称賛し、ウクライナ政府を敵視しがちだ。
トランプ氏とオルバン氏は反ユダヤ主義の面も
欧州の極右勢力にとってイスラム教徒への敵意は今や、彼らがユダヤ人に抱いてきた敵意をあっさり上回っている。ウィルダース氏はイスラエルを西側諸国の「第1防衛線」と呼んでいる。
オランダのアムステルダムで7日、イスラエル人のサッカーファンが襲撃されたことを受け、彼は襲撃者たちのことを「多文化のくず」と表現した。
しかし、イスラエルを支持しつつ反ユダヤ主義的になるのは意外に簡単だ。ネタニヤフ首相率いるイスラエルのエスノナショナリズム(編集注、自国は特定の民族のためだけにあるという考え方)は、オルバン氏の考え方に著しく近い。
オルバン氏は、ハンガリー出身のユダヤ人であり、少数派の権利を支持する「グローバリスト」でもあるソロス氏を攻撃する際、反ユダヤ主義的な表現を使う。
トランプ氏もイスラエルを全面的に支持しつつも、米国人の白人至上主義者で極右活動家のニック・フエンテス氏のような反ユダヤ主義者にも媚(こ)びを売っている。
だがトランプ氏と欧州極右勢力は脆弱な可能性も
トランプ次期政権と欧州のポピュリスト的国家主義勢力を結びつける共通テーマは多いが、この結びつきは実は脆弱なものかもしれない。
トランプ氏が追求する米国第一主義という国家主義は、早い段階で欧州のポピュリスト勢力の政治目標と衝突する可能性が高いからだ。
欧州ポピュリズムの専門家であるカトリーヌ・フィエスキ氏は、トランプ氏が肥育ホルモン剤を投与した牛肉や塩素洗浄した鶏肉など米国産農産物の輸入を欧州に解禁するよう求めていることは、欧州の農家の大きな反発を招くと指摘する。
米国第一主義の政策は、独仏の極右を特徴付けてきた反米主義の傾向に一層拍車をかけるだろう。トランプ氏が公約通り全輸入品に10〜20%の関税をかければ欧州全体が打撃を受ける。
トランプ氏がウクライナに和平交渉を強要しようとすれば、欧州のポピュリストの一部は彼から遠のく可能性がある。イタリアのメローニ首相は、極右の政治的ルーツを持つ政党を率いており、トランプ氏の「ウオークとの戦い」には共感しているが、強力なウクライナ支持者でもある。
オルバン氏でさえ困難に直面する可能性がある。トランプ氏に取り入る一方で自らをEU内の中国の最良の友人と位置づけている。オルバン氏は5月、ブダペストに習近平(シー・ジンピン)国家主席を招いた。
トランプ次期政権は早晩、この矛盾に気付くだろう。ただ、オルバン氏がハンガリーのような目立たない国のリーダーでありながら、米国のトランプ勢力の間でかくも高い評価を得ているのは驚きだ。
オルバン氏は今、歴史が自分に味方していると信じている。だがハンガリーは歴史上の勝者と手を組んでよかったという過去があまりない。
ハンガリーが04年にEUに加盟を果たした際、ブダペストのある学者は重苦しい口調で、欧州統合プロジェクトは破滅する運命にあると筆者に語った。
「ハンガリーが加わった全ての勢力は最終的には崩壊する」と嘆き、オーストリア・ハンガリー帝国や第2次世界大戦の枢軸同盟、ソ連圏を例に挙げた。
ハンガリーの呪いはトランプ氏にもいずれ降りかかることになるのだろうか。
By Gideon Rachman
(2024年11月11日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)
Gideon Rachman 英国生まれ。英BBCや英エコノミストなどを経て2006年FTに入社。同年、現在の外交関係の論評責任者に。2016年政治分野のジャーナリストとして英オーウェル賞を受賞。著書に「Easternization」(2016年)などがある。
日経記事2024.11.15より引用
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在米のトランプ信者に日本人が、人種差別や経済問題で解雇されて、帰国せざるを得なくなったらそのアホさにみんなで笑ってあげましょう。
(関連情報)
・米情報長官候補が日本敵視発言 「太平洋侵略国が再軍備」 トランプ次期政権
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/a040042996ea8cafd487dc5de241c0fc
・2020年、トランプのデマ:民主党バイデンのドミニオンを使った不正選挙を信じる阿呆たち
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/dc93416f22ca0b8a75dfb095fe33250d
・性犯罪者・変態エロ爺・トランプとエプスタイン の関係
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/d42a0d7aa96ca51228ddc33ccf047e08
・トランプ暗殺未遂 トランプによる自作自演のやらせ説
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/6d0dd34c0a2c408bc92f608bef749d47