ペンシルベニア州最大都市のフィラデルフィアでは高層ビル群の近くにも、製造業の古い施設が目に付く
11月5日の米大統領選が迫ってきた。勝敗のカギは7つの激戦州が握る。どのような有権者が住んでいて主な争点は何になるのか。激戦7州の基礎データと勝負どころを探った。
中西部ミシガン、同ウィスコンシン、東部ペンシルベニアからなる「ラストベルト（さびた工業地帯）」の3州は過去2回の大統領選の命運を決めた。
共和党のトランプ前大統領は2016年に3州を制し、20年は民主党のバイデン大統領がすべて奪還した。
かつては民主が勝利を続け、党のシンボルカラーにちなんで「青い壁」と呼ばれた。労働組合が民主の強固な支持基盤だったが、16年に「労働者の復権」を掲げたトランプ氏が登場し、どちらが勝ってもおかしくない激戦州に変わった。
水や石炭などの資源に恵まれ、運輸に便利だったラストベルトは自動車や鉄鋼などの製造業が集積し、米経済の中心として1960年代まで栄華を誇った。その後の製造業の衰退に伴い「忘れられた存在になった」白人労働者の不満をトランプ氏がすくい取った。
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製造業の労働者が今回も焦点になる。就業者に占める割合はミシガンとウィスコンシンはともに18.2%、ペンシルベニアが11.4%と全米平均（9.9%）より高い。
両候補は大接戦を繰り広げている。各種世論調査を集計する米リアル・クリア・ポリティクスによると21日時点でミシガンは1.2ポイント、ペンシルベニアは0.8ポイント、ウィスコンシンは0.4ポイント、トランプ氏がそれぞれ上回るが誤差の範囲内だ。
民主のハリス副大統領は「労働者家族を第一に据える」と唱え、食料品の価格引き下げや住宅購入支援を訴える。トランプ氏は外国製品への関税引き上げなど保護主義的な政策を打ち出す。
歴史的に民主を支持してきた組合の執行部はハリス氏を推薦する。全米自動車労働組合（UAW）や全米鉄鋼労働組合（USW）が支持を表明した。
運送業を中心に幅広い業種で130万人の組合員を抱える全米トラック運転手組合（通称チームスターズ）のほか、国際消防士協会は推薦を見送った。いずれも20年選挙はバイデン氏を支持していた。
16年選挙でそれまで強固だった労組の結びつきが弱まり、一部の組合員が執行部の指示に反してトランプ氏に流れた。
ペンシルベニアのピッツバーグ近郊に住み、USWに加入する50代男性は過去2回、民主候補に票を投じてきた。「結局、トランプの時は経済は良かった」という理由で今回はトランプ氏に投票する意向だ。
激戦7州の計93人の選挙人のうちラストベルト3州が44人を占める。他州の情勢を踏まえるとハリス氏は3州すべて勝てば当選確実になる。トランプ氏は3州勝ったうえで南部2州や西部アリゾナ州のうち一つ取れば大統領に返り咲く。
（ワシントン=飛田臨太郎）
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