雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

初恋温泉/吉田 修一

2008-07-09 | 小説
 五つの異なる地の温泉を舞台にして、様々な男女の悲喜こもごもに揺れ動く心情を描いた五つの短編ストーリー。

 てか、きっと作者は取材と称して各温泉地に行ってきたんだろうなぁ・・・羨ましい、と、思わずそこに感想が至ってしまう。

 とりあえず、各話の中で「グッ」とさせられた部分を書きとめておいたりしてみる。


『初恋温泉』・・・≪どうせアパートへ帰っても、返し忘れたアダルトビデオをもう一度早送りして見るような毎日≫

『白雪温泉』・・・≪「どうすれば、あんなやさしい表情で、自分の愛する女性を見つめられるのか?」などと、柄にもないことを訊いてみたい気持ちもあった。≫

『ためらいの湯』・・・≪「結婚とはな、女房の気配にビクビクしながら、ネットでエロ画像を見る緊張感だ」≫

『風来温泉』・・・≪音がまったくないわけではない。ただ、もしも無音という音があるならば、それが耳の奥のほうで鳴る。これが山の音かと恭介は思う。何も聞こえないという音。そんな音があるのだろうか、と。≫

『純情温泉』・・・≪「ああ、ほんと。俺は、どっちかっていうと、器用に浮気なんかできるタイプじゃないと思うんだよな。二人の女と、十二時間ずつ、別々に過ごすより、一人の女と、二十四時間ずっと過ごすほうがいい」
「でも、二十四時間も一緒にいたら、楽しいばっかりじゃないよ。喧嘩だってするんだよ」
「だったら・・・」
 健二はそこで言い淀んだ。
「だったら?」と真希が顔を覗きこんでくる。
「・・・・だったら、一人の女と、十二時間イチャついて、十二時間喧嘩するよ」
 健二は真顔でそう言った。言いながら、ほんとにそうだなと、自分で自分の言葉に肯いた。≫



 たまには温泉で、のんびりしたいなぁ・・・。
コメント
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