雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

カソウスキの行方/津村 記久子

2008-07-23 | 小説
 またオモシロい人(作家さん)を見つけた。

 2005年、第21回太宰治賞受賞者、津村記久子さん、である。

 ある雑誌で最新刊『ミュージック・ブレス・ユー!!』が紹介されてて、なんだか興味をそそられて、著者紹介読んでみたら「第21回太宰治賞受賞者」って書いてあって、あぁ、そういやこんな人いたなぁ、へ~もう三冊も出してんだぁ・・・と、早速図書館に行ってみたら、残念ながら太宰治賞の『君は永遠にそいつらより若い』(『マンイーター』改題)はなかったんだけど、その次に出た『カソウスキの行方』と『ミュージック・ブレス・ユー!!』は見事陳列されており、意気揚々と借りてきた次第。

 で、とりあえず『カソウスキの行方』(第138回芥川賞候補作だったらしい)を読んでみると、これがなんとまあ、オモシロくってねぇ。
 その、屈託のない文章というか、抜群の間というか、とにかく人を確実に惹きつけるその文章力、短編(中篇)文学でありながらも構成力の緻密さ、そしてなにより、主人公女性のぐだぐだ感がとても愛しくなる、というか、何故だか共感までしてしまえる、魅力溢れる人物描写、それらが読む手を止められなくさせる。

 本当に、これはかなりスゴい、というか、オモシロい作家さんがまた出てきたなぁ、と一人でうきうきニヤニヤしています。

 さて、そういうワケで、これから『ミュージック・ブレス・ユー!!』を読みはじめます。

 では、また☆
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ハリヨの夏

2008-07-23 | 映画
 1990年、夏。舞台は暑さ漲る京都。

 多感過ぎる十七歳、瑞穂(於保佐代子)の痛々しいまでの生命のふくらみを中村真夕監督・脚本で映し出した邦画史上に残りうる名作・・・だと思う。

 このクソ暑い時期に、あまりにもタイミングが合いすぎたのか、かなりハマった。
 率直な感想として、やはり女性監督だからか、かなり女性の側に立った画きかたというか、女性だからこそのストーリー性というか、まぁ、まさに女性監督が創りました、という映画。もちろん、それが悪いのではなくて、むしろその、女性側からしか画けない、十七歳の少女の多感過ぎる心の揺れ、不安、悩み、戸惑い、決意、そして母性愛、そういったものがひしひしと感じられ、男性的にはただただ、身勝手な己自身に閉口させられてしまう。

 主だった男性として、同級生の翔(高良健吾)、瑞穂の父(柄本明)、チャーリー(キャメロン・スティール)が瑞穂のまわりにいるのだが、あまりにもバツが悪い。

 それに比べ、瑞穂の母(風吹ジュン)の凄いこと。その圧倒的な母性に、涙しました。


 とにかくこの作品は、単なる十七歳少女の青春群像映画などではなく、ましてや恋愛映画などでもなく、確かにそこにある『生命』を映し出している映画だ、と、私は感じました。


 キャストも映画初出演ながらもその圧倒的な存在感を示す『於保佐代子』『高良健吾』、これ以上ないほどの溶け込み具合を魅せる『柄本明』危うさを持ちながらも母としての強さを演じきる『風吹ジュン』と、とにかく魅力と個性溢れるキャスティング。

 夏の京都もまた、いい雰囲気を醸し出しておりました。

 うん、名作です。(言いきっとく)
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