2021年/84分/イタリア
原題:Il diritto alla felicita
監督:クラウディオ・ロッシ・マッシミ
出演:レモ・ジローネ、コッラード・フォルトゥーナ、ディディー・ローレンツ・チュンプ、ピノ・カラプレーゼ、モーニ・オヴァディア
ストーリー:イタリアの風光明媚な丘陵地帯を見下ろす丘の上の小さな古書店。店主リベロは、ある日、店の外で本を眺める移民の少年エシエンに声を掛け、好奇心旺盛なエシエンを気に入ってコミックから長編大作まで次々と店の本を貸し与えていく。リベロが語る読書の素晴らしさに熱心に耳を傾けるエシエン。感想を語り合ううちに、いつしか2人は友情で結ばれていく…。~HPより
川越スカラ座で公開されると知り勇んで出かけた。
イタリアの美しい村、そこにある古書店を舞台に交錯する人々を丁寧に描いた静かな作品だった。
人と人を結ぶ本の存在を強く印象付けられ、本の持つ「力」について今一度考えさせられたものでもあった、「本」とは何だろうと。
丘の上の本屋さんのリベロが座る椅子の背後に掲げられていたカルロス・ルイス・サフォン『風の影』(2001)からの一文
<持ち主が代わり、新たな視線に触れるたび、本は力を得る。>
が彼の本に対する姿勢、思いのすべてを表していた。
その古書店の店主リベロが物語の進行とともに読み進めていたのは毎朝ごみの中から本を見つけ出して売りに来るポジャンから買い取った日記。それを彼は時間のある時に小さなスタンドをつけ、オルゴールを鳴らしながら読み進める。そこで奏でられていたのはシューベルトの「アヴェ・マリア」だ。その日記の進行とともに話が進んでいくことに気付いたのは物語もいよいよ終盤になってからだった。
リベロの店には様々な人が登場するが、その中心となって描かれるブルキナファソからイタリアに来て6年になる少年エシエンとの「本」を介しての交流は美しい。
リベロがエシエンに紹介していく本は懐かしい題名もあり、また興味深かった。イソップ物語、白鯨、ピノッキオ、星の王子さま、ロビンソン・クルーソー、アンクル・トムズ・キャビン、ドン・キホーテ、そしてエシエンが医者志望と知るとシュバイツァーの本etc.etc. そして世界人権宣言。
原題の”Il diritto alla felicita”は「幸せになる権利」だという。
古書店の隣にあるカフェの店員二コラと彼が思いを寄せるキアラの二人がほんわかして楽しい。