ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

ムーン・パレス

2009-03-10 23:41:54 | Weblog
ポール・オースター著、柴田元幸訳、新潮文庫

この物語も孤独に満ちてた。
主人公は、たくさんの親しい人の死を経験する。
そして、その度に自分のルーツを少しずつ知ることになる。

他人の死によって、はじめて気づく自分にとって一番大切なもの。
無力感。
そして、死の代償とばかりに手に入る幾ばくかのお金・・・。
どれもこれも、自分の孤独を深める手助けをしてくれるものばかり。

ポール・オースターの本は好きだけど、
これから誰かに会おうとしているときに読むと、
自分の心の暗部を覗き込み、暗くなってしまうのであまりよくない。

そうは思っても、ついついやめることができなくて、一気に読みたくなってしまう。
そして、その後、気分を盛り上げるのにとても苦労する。
今日は、「春みたいな陽気ですね~」と営業トークが出て来たので、
自分に拍手喝采な気分だった。

最近、よく思うのだけど、世間は意外と寛容だ。
「こんなことでもゆるされるんだ」「こんなキャラでもゆるされるんだ」と思うことが増えた。
わりとワガママでも、少しぐらい言動に特徴があっても、周りの人は受け止めていると思う。
それなのに、片方では精神疾患の人が増えているという。

ポール・オースターの本を読んでいると、いろいろ変わった人が出て来る。
そのほとんどが、肥大した孤独に苦しんでいる、普通程度に自意識が過剰な人たちだ。

周囲が受け入れる・受け入れないとは関係なく、
その本人の自意識がふくらみすぎている、ということなのかな。
少なくても、私自身を振り返ってみると「自意識過剰」そんな気がするな。