湘南マランドロのブラジルピアノと、オルガン♪

ブラジル音楽専門のピアニスト/オルガニスト今井亮太郎のゴキゲンblog!!

朧月夜

2009-05-10 01:05:21 | Weblog
こんばんは!

演奏で信州に来ています(^^)



今夜は満月。
さっき演奏後にふと月を見たら、雲が薄くかかってぼんやりほのかな月。
おぼろ月だった。


信州でこの時期にぼんやりしたおぼろ月を見れたこと、すごく感激した。
この一瞬がたまらないくらい淡く優しく美しい。




菜の花畠に 入日薄れ
見わたす山の端 霞ふかし
春風そよふく 空を見れば
夕月かかりて にほひ淡し

里わの火影(ほかげ)も 森の色も
田中の小路をたどる人も
蛙のなくねも かねの音も
さながら霞める 朧月夜




日本の唱歌の名曲「朧月夜」。
この朧月夜を作詞した高野辰之は実は長野出身なんだ。

高野辰之は長野でも北信州の豊田というところの生まれで、彼は作曲家の岡野貞一とともに「朧月夜」以外にもたくさんの名曲を残している。
「ふるさと」「紅葉」「春の小川」…。


おれは高野辰之の美しい淡い日本語の詞が好きで何度も豊田を訪れている。
豊田はいい意味で観光地化されてなくて、本当に農村。何もない。
まさに日本の原風景で「うさぎ追いしかの山…」や「春の小川」や、そして「朧月夜」の風景がそのまま残っている。

何度も訪れている豊田では話したいたくさんのエピソードがあるけど、それはまたそのうち触れるとして…。


その「朧月夜」…。


関東より少し遅く春が訪れる信州では、今がまさに菜の花の時期。

…そう。朧月夜の時期なのだ。


高野辰之が感じた朧月夜は、きっと今日のように満月だったと思う。
霞みがかりながらも明るい月の光が、
菜の花畑を、
山々のシルエットを、
里の家の灯を、
田んぼの畦道を歩く人の影を、
蛙の歌声を、
夜を知らせる寺の鐘の音を…、
すべてをやわらかく優しく照らしつつみ込んで霞めて淡くしてしまうおぼろ月の光…。


本当に素敵な、日本の原風景の夜だと思う。


都会に住むおれたちは心の奥の片隅に忘れてしまった大切な日本の風景がそこにある。

きっと高野辰之は自分の生まれ故郷で菜の花の時期の今頃に、まさに今夜のようなおぼろ月の下で、淡い優しい夜を何度も過ごしたんだろうな。
毎年毎年ね。
高野辰之が、彼にとって当たり前でもある美しく淡いその風景に、何を感じ何を伝えようとしたのか。

今夜のおぼろげな淡い満月を見ていたら、美しくて淡くて切なくて懐かしくて…
それを時代を超えて感じられる幸せやはかなさを、おぼろ月のように淡く優しく、でも強烈に実感した。


ブラジルの音楽を真剣にやっているからこそ、「日本」というものをもっともっと真に間近に感じたいし大切にしたい。
それが自分のアイデンティティだからね。



素敵な夜だな。



高野辰之に、おぼろ月に…


乾杯!




Ryotaro




コメント (2)
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