「永遠の0」「海賊とよばれた男」と次々とベストセラーを連発する百田尚樹の『風の中のマリア』を読む。
百田作品を読むならまず「永遠の0」だと思い、早速ネットで購入したが、文庫本のあまりの分厚さに怯んでしまい、それっきりになってしまった。
そして「みをつくし料理帖」の最終巻が出版される間に、何か読むの本はないかと思っていたところに、この本を発見。
レビューの評価の高さと、タイトルから全くイメージできなかったスズメバチの物語というところが気に入り、初めて百田作品を読むことに。
このタイトルからどういう訳か私は女性のマラソンランナーの話だと思ったんだけど、まさかのスズメバチの女戦士(メス蜂戦士)マリアの生涯を描いた物語だった。
女王と次々と生まれてくる妹たちのために、懸命に戦い続けるマリア。
彼女が生きる虫の世界は、ディズニーが描くようなお気楽で笑いの絶えない楽しい世界とは程遠い、日々生きるか死ぬかの極限の世界。
強力な顎と牙で敵を引きちぎり、毒針で貫く様子をあくまでも淡々と描き、殺戮を繰り返すスズメバチを冷徹に見つめながらも、本能に抗うように湧き上がる感情を、まるで人間のように個性として生き生きと描写する。
いつしか自分も森の中にひっそりと息づく虫の目線で、物語を眺めている。
あまりにも儚い命を、本能の赴くままに燃やし尽くして死んでいくスズメバチの戦士たちに、生きていくことの厳しさと、全力で駆け抜ける命の力強さを突きつけられる。その姿はあまりにも悲しく、そして美しい。
ただのハチたちの話をここまで昇華させる百田尚樹、素晴らしいです。
これはそろそろがんばって「永遠の0」読まないといけないかなあ。