プラスアルファ

税金とられすぎて生活苦です!
政治家は一般国民の生活を知るべき。
不安な思いをウダウダ書き散らす日記

病院での理不尽な話

2006年01月17日 09時34分05秒 | 辛辣うだうだ放題

少し重たい話になる…が、お涙ちょうだいの話ではない。
最近、Mがもっとも理不尽に感じた話を…。

Mの父は昨年(2005年)11月に亡くなった。
病名は悪性リンパ腫。
以前から体調が悪かったらしいが、ついに我慢の限界で病院へ。

「いつどうなってもおかしくない状態。それは今日かもしれないし、1年後かもしれない。」
医者にそう宣告されてから1年半入退院を繰り返し、病院で息を引きとった。

父は医者に病気を告知されてから遺言を書いている。
延命措置はしないでください。
助からないときには、酸素吸入や薬の点滴はやめて欲しい。
痛い思いはしたくない。ラクに死なせて欲しい」と。
主治医にも自分からそう頼んでいた。

この延命措置という言葉の本当の意味を、父を含め私たちは知らなかった。
ガンに侵された人は、どうしても苦しい思いをしなければ最期を迎えられないのだろうか。

意識が朦朧とする中、常に苦痛に顔を歪めている。
孫が病室に入って来て話かけると、閉じている目を必死で開けて
「来てくれてありがとう」という顔をする…が、
酸素吸入のマスクをつけているので話は出来ない。
本人はそれをはずそうとして顔をずらしたりするが、
すぐ看護師に見つかってもとの位置へ。

痰が絡んでも自分では出せないので、
看護師が吸引するとハッキリは言わないが「やめてくれ」と叫んでいた。
とにかく治療のすべてを拒んでいた。

父の手をさわって「痛い? 痛かったら握ってみて」と言うと、かすかに力をこめる。
「点滴とか治療をやめたいの?」と言うと、またかすかに力をこめて手を握る。
どんなに苦しくても、この先治る見込みがあるのなら我慢をする価値はある。
しかし本人も家族も、この先に待っているのは絶望だけだと知っている。
父はやっとの思いで目を開けて、懇願するように見つめてくる。
「頼むから、希望通りにしてくれ」…と。
苦しい思いを我慢する必要はあるのだろうか……。
あと何日、何週間、何ヶ月、この辛さを本人に強要すればいいと言うのだろう…。

延命措置はしないでほしいという、父の希望通りにしてあげたい。
生きるために…いや、生かすために酸素を送り、栄養分を点滴して、血圧安定剤を入れる。
今行っているこれらのことは、父のいうところの延命措置になるのでは?
家族で話し合い、全部やめてもらうことにした。
まずその前に、今どんな治療(?)をしているのかを聞いてみようということになり、
点滴を交換しに来た看護師に尋ねてみた。

「この点滴は何ですか?」と聞くと「栄養剤と血圧安定剤です」とそっけなく答える。
「今後のことについて、先生とお話をしたいんですけど…」と言うと、
「今日は土曜日なので不在です」と言う。
そこで「本人の意思を尊重して、延命措置はやめてほしいと思っているんですけど。」と言うと
「私達は先生の指示で行っているので、そう言われてもできません」と、少しキレ気味に答えてきた。
すると、Mのダーが「だから主治医と連絡をとってくださいと言っているんです。」と、
少しきつめに言うと、看護師は「わかりました」と言い捨てて出て行った。

暫くしてから看護師が戻ってきて「先生と連絡を取って、この点滴ははずすことにしました。」と、
Mたちの見ている前で「不愉快」を思いきり態度に表し、乱暴に点滴をはずして持ち去っていった。
「何か悪いこと言った?」皆で顔を見合わせて、思い出そうとしたが、
「この点滴は何?」と聞いただけで、他には何も思い当たることはなかった。
その間も父はずっと苦しそうに唸っていた。
おどろいたことに、その点滴をはずしたとたん血圧が正常になった。

そして次の日、担当医が来て言ったことに皆はもっと驚いた。
「私は今まで○○さん(Mの父)といろいろ話をしてコミュニケーションをとってきました。
確かに延命措置はしてほしくないと仰るので、心停止をしても心臓マッサージや、
人工呼吸などは行いませんと約束をしましたよ。」
そこでMの姉が「昨日までは栄養剤の点滴をしていると看護師さんから伺ったんですけど、
痛み止めなんかはどうなっているんですか? 本人がすごく苦しがっているので…」と言うと
「痛み止めをあまり使うと心臓に負担がかかるので、これは薬事法に則った使い方しかできません。
何れにしても患者さんはずっと意識がない状態ですので、痛みは感じていないはずです。」

あまりにもキッパリ言うのでMは唖然とした。
 「先生、本当に痛みは感じていないんですか?」
医者 「はい。朦朧としていて夢を見ているような感じですね。」
 「朦朧としていても、痛がってずっとうめいていますよ…?
痛みを感じると言うことは、意識があるということですよね?」
医者 「そうですが、この段階では意識はないはずなので痛くはないんですよ。」
Mの質問には感心なさそうに事務的に答える医者。

昨日まで確実に意識はあったのだ。
今朝もとぎれとぎれだが意識が戻る時はある。そして今もこの会話を間違いなく聞いている。
Mは確信していた。

医者は続ける。「今は必要最小限のことをしているだけです。こちらもきちんと手を尽くしているのです。
ですから、ウチの看護師をいじめることはやめていただきたい。
薬に関しても、どうしてもそのような薬を使ってほしければここの病院ではできません。
紹介状でも何でも書きますので、どこかよそでやってもらってください。」

はあぁぁ?? Mは呆れてしまった。
この医者は唐突に何を言い出すのか??

ムッときたMは「それではお手数ですがお願いできますか?」と、言いかけた。
その前に母が「先生、そんなことを仰らずに…見捨てないでください…」と泣き崩れてしまったのだ。

Mのダーも、Mの姉も、言いたい事を我慢しているのが見えたのでMも我慢した。
苦しんでいる父の前ではやめよう……。
母がそう言うなら、いくら娘であってもM達にはどうすることもできない。
こんなおかしな事態になってしまって、一番困惑しているのは父だろうし…。

医者は患者には意識がないと決めてかかっていた。
そして、自分の患者の前でその患者の家族に暴言を吐いたのだ。
看護師をいじめるな……事実確認もしないで言える事だろうか?
しかも、担当医は治療に関する説明義務を怠っていたのだ。
家族にきちんと説明さえしていれば、こんな事態にはならなかったはずだ。
説明をしないから、皆が疑心暗鬼になったのだ。看護師までもが。
本をただせば自分の怠慢から発したことだろう。

患者の家族が今どんな心境でいるのかさえ想像できない医者。
人の死に対して慣れすぎてしまい、感覚が麻痺しているのではないか?
紹介状を書くからよそでやってもらえ……?
それならそうと、最初に父に言うべきではなかったか?
この病院では、あなたのご要望に応えることはできないですよ……と。
今頃よその病院に移っていて、家族はアンタに嫌な思いをされずに済んだのだ。

父が言っている延命措置は、
医者が思っているような心臓マッサージや人工呼吸などではない。
血圧が低下しようが、栄養が不足しようが、構ってくれるなということだった。
そしてなるべく痛い思いをしないようにしてほしい…と。
別に薬事法に違反してまでやってくれとは言っていない。
少しくらいニュアンスをくみ取ってくれてもいいだろう……。

父はその後、主治医から離されて終末医療の病棟へ移された。
今までさんざん苦しがってうめき声をあげていたのに、
その病棟に移ったとたん、とても落ち着いた顔になっていた。
看護師さんが薬をかえたと説明してくれた。

夜中に、その病棟の看護師さんが父の様子を見にきてくれた。
二人きりになったので、昼間の出来事をいろいろと話すと
興味深く聞いてくれていた。

数時間後、看護師さんが病室に入ってきて言った。
「気になってどんな治療をしたかカルテを見てみたんです。
もっと早く、こちらに移ってくだされば良かったのに…」と…。
……深くは追求しなかった。
ただ、看護師さんの気持ちが嬉しかった。

そして明け方、父は息を引きとった。
父の望んだとおり、とても安らかな最期だった。
病棟から出るとき看護師さんにお礼を言うと
父のために彼女も泣いてくれていた。
ほんの数時間しか一緒にいなかったが、彼女によって救われた気がした。

人は必ず死ぬわけで……
自分の最期くらい自分で選択したい。
尊厳死を認めろ~~~
そうは思わないかい 
(やっぱり軽いノリになってしまう……

コメント (9)