まず先走り気味に
花屋さんの店先に、“出来上がり状態”のものが並ぶ。
新緑が勢い勇猛に湧き出した候。
「あれ、もうそんな季節かな、まだ早くないかな」と 想ったりする。
そしたら
いつの間にか町中にも、
当たり前のように 咲き出していた。
無意識に見馴れてしまったのか
何となく 気にもならなくなってしまって、居たみたい
なのだけど
そろそろ此処も「梅雨近し」と、世間が云う。
空の色と 湿度が
確かに少し なま蒼白く、うら暗く、重たくなって
気配ばかりは 着々と 雨の支度を整えてきた。
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うつむきたくなるような
重たい色。
代わりに
紫陽花の涼しげな顔立ちが
明るい幽霊みたいに 浮かび上がって見えて来た。
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紫陽花(アジサイ)
英名:Hydrangea
ユキノシタ科アジサイ属 落葉低木
Hydrangea macrophylla form. macrophylla
この色は、
そのまま 梅雨の雨色を想わせる。その色の存在は 既に 梅雨という季節と同調している。
*
あの雨はまだ、此処には やって来ていない。
今日も、彼らはまだ 濡れていない。
まだ濡れていないのに 既に濡れた色をして居る。
*
特に 目立った香りはしないのだけれど
雨にそぼ濡れると
その色合いのせいか すがたは少しぶれて見え
とりまく空気ごと儚く霞んでいるように 錯覚させる。
なんとも幽玄な香が
煙たいまでに匂い立って来るようにも、感じる。
それも全部、冥界じみた錯覚。
雨の花の季節は、
見えないものが 浮かび上がって来る。
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額紫陽花 (ガクアジサイ)
Hydrangea macrophylla form. normalis
*
今年は 白い和傘を買った。
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和傘 (わがさ)
英名:Umbrella
雨の降る 京都・大原で買った。もうそれだけで、雅やかな気持ち。
でも実は飛騨高山製。
和傘は
雨に濡れても(もちろん)全然問題ないが
貫通系の衝撃なんかには、すごく弱い。
乱暴に扱えない。
だから、すごく気をつける。
通りすがる人(の傘の爪とか)にも、すごーく気をつける。
濡れた後に、ちゃんと開いて干さなきゃいけない。
大事にすれば、それだけ永く使える。
コンビニで500円で買えるものじゃない。
だから、すごく丁寧に、親身に付き合うことになる。
だから、情が湧く。
だから、
うつむいて歩いてなんて 居られず
意識は 鋭敏に外に放たれて
自ずと
背筋がシャンとする。
雨が降ると、
今日はあれを使えるな と想う。そうすると、
気持ちが シュッと 真っ直ぐに伸び、
澄む。
今年は、雨が待ち遠しい。
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花屋さんの店先に、“出来上がり状態”のものが並ぶ。
新緑が勢い勇猛に湧き出した候。
「あれ、もうそんな季節かな、まだ早くないかな」と 想ったりする。
そしたら
いつの間にか町中にも、
当たり前のように 咲き出していた。
無意識に見馴れてしまったのか
何となく 気にもならなくなってしまって、居たみたい
なのだけど
そろそろ此処も「梅雨近し」と、世間が云う。
空の色と 湿度が
確かに少し なま蒼白く、うら暗く、重たくなって
気配ばかりは 着々と 雨の支度を整えてきた。
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うつむきたくなるような
重たい色。
代わりに
紫陽花の涼しげな顔立ちが
明るい幽霊みたいに 浮かび上がって見えて来た。
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紫陽花(アジサイ)
英名:Hydrangea
ユキノシタ科アジサイ属 落葉低木
Hydrangea macrophylla form. macrophylla
この色は、
そのまま 梅雨の雨色を想わせる。その色の存在は 既に 梅雨という季節と同調している。
*
あの雨はまだ、此処には やって来ていない。
今日も、彼らはまだ 濡れていない。
まだ濡れていないのに 既に濡れた色をして居る。
*
特に 目立った香りはしないのだけれど
雨にそぼ濡れると
その色合いのせいか すがたは少しぶれて見え
とりまく空気ごと儚く霞んでいるように 錯覚させる。
なんとも幽玄な香が
煙たいまでに匂い立って来るようにも、感じる。
それも全部、冥界じみた錯覚。
雨の花の季節は、
見えないものが 浮かび上がって来る。
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額紫陽花 (ガクアジサイ)
Hydrangea macrophylla form. normalis
*
今年は 白い和傘を買った。
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和傘 (わがさ)
英名:Umbrella
雨の降る 京都・大原で買った。もうそれだけで、雅やかな気持ち。
でも実は飛騨高山製。
和傘は
雨に濡れても(もちろん)全然問題ないが
貫通系の衝撃なんかには、すごく弱い。
乱暴に扱えない。
だから、すごく気をつける。
通りすがる人(の傘の爪とか)にも、すごーく気をつける。
濡れた後に、ちゃんと開いて干さなきゃいけない。
大事にすれば、それだけ永く使える。
コンビニで500円で買えるものじゃない。
だから、すごく丁寧に、親身に付き合うことになる。
だから、情が湧く。
だから、
うつむいて歩いてなんて 居られず
意識は 鋭敏に外に放たれて
自ずと
背筋がシャンとする。
雨が降ると、
今日はあれを使えるな と想う。そうすると、
気持ちが シュッと 真っ直ぐに伸び、
澄む。
今年は、雨が待ち遠しい。
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