枕に のさっと 頭をもたれさせて、さあて、
眠ろう。
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と
まず呼吸をふううと、睡眠用の深い方へ ととのえようと
したところに
それは 全くの不意打ちで、
ラベンダーの匂いが 鼻へ胸へ
なだれ込んで来た。
それは全くの、不意打ちで。
というのも、
昨夜までの寝床には、そのような馨は 漂流していなかったから。
*
どこから来るのかが、分からない。
夏の雨上がりなので 窓を開け放ちて居るから、もしかして、
外の何処からか、
迷い込んで来たのかもしれない、、、、、、、
、、、、、、、
、、と思い巡らし出すと、
”火の元”を確認しないでは、もはや、気になって、
眠れやしない。
しかし、
確認するにはちょっと、眠りに構えてすでに自重に沈んだ体の重みは
億劫すぎる。
しかし、
それでは、眠れやしないから、
無理強いて 背中を引き剥がし、
窓辺に立った。
、けれども、
網戸の 網の つまらないにおいと
その向こうの 雨のまだ乾き切らない 生ぬるい気配、
あとは、
目の前の夜の静けさに倣って沈黙を突き通している 常磐の樹の
深い緑の蔭の匂い、、、
それくらいだろうか。
少くとも、花びらを想わせるものは 一つも無い。
ただ
空は 青の 一面。
空は 果てまでも一面に
神秘の幻を想わせる
陶製の青の一面に、 固まっている。
それは それは、
静かで、美しい。
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*
再び ベッドに戻り ふうと ひとつ
ため息をつくと
すでに忘れてしまっていた 例の
” ラベンダーの馨り ”
が
たちまち、勝手に、鼻に胸に、注ぎ込み、
甘く満ちてしまった。
甘く 満ちてしまった。
*
ああ、
どこだろう。。どこからだろう。。。。。
とても気になって、
とても心地好くて、
とても眠れやしない。
*
得体の知れない ラベンダーの
とぎれとぎれに寄せる幻の波の 甘さが
とても心地好く
酔いたくなっていて
努めて
大きく 深く、息を吸い込んでみる。
そうすると、
馨りの漂流の断片が また 窒素と酸素に紛れて 舞い込んで来る。
そしてまた、
とても心地好くて、
とてもじゃないが、眠ってられない。
*
空気を吸い込む。
かけらが舞い込む。
満たされる。
また 欲する。
その作業に意識を集中させてしまって、
気づいたら、
眠れやしない。
ラベンダーの香るせいで 眠れないのか。
眠れないせいで ラベンダーが香るのか。
*
果たして
どこから来るのだろう。
やさしくて 心地好い。
もっともっと欲しい。
途切れること無く、圧し寄せて欲しい。
ラベンダーの香りの海というのがあるなら
その海に呑まれてとっぷり溺れてみるのも
善いかもしれない。きっとその海は、
夏の或る曙に その瞬間だけに起こるあの、
奇跡的な、
紅桃色のような ムラサキ色のような
あの色の、
とっぷりと融けた、甘そうな
あの色の、
海なんだろうな。。。
、と いうふうにして、
外の空は 白けてしまった。
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雨を落として仕舞いたいんだか
落とさずに堪えて居たいんだか
全く どっちつかずの、
煮え切らない、
意思のぼやけた、
一辺倒に ある意味梅雨らしい、
白々しい湿気を 手ぬるく曵きずったままの、
手ぬるい 朝。
*
チュンチュンと カアカアと
目覚め鳥が早々 啼き始めた。
それでも
そろそろ眠っとこうかな
なんて まだ思ってみたりするのだが
要するに、
夜は 明けてしまったのである。
*
ラベンダーの香るせいで 眠れなかったのか
眠れなかったせいで ラベンダーが香るのか
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六月二十二日
眠ろう。
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と
まず呼吸をふううと、睡眠用の深い方へ ととのえようと
したところに
それは 全くの不意打ちで、
ラベンダーの匂いが 鼻へ胸へ
なだれ込んで来た。
それは全くの、不意打ちで。
というのも、
昨夜までの寝床には、そのような馨は 漂流していなかったから。
*
どこから来るのかが、分からない。
夏の雨上がりなので 窓を開け放ちて居るから、もしかして、
外の何処からか、
迷い込んで来たのかもしれない、、、、、、、
、、、、、、、
、、と思い巡らし出すと、
”火の元”を確認しないでは、もはや、気になって、
眠れやしない。
しかし、
確認するにはちょっと、眠りに構えてすでに自重に沈んだ体の重みは
億劫すぎる。
しかし、
それでは、眠れやしないから、
無理強いて 背中を引き剥がし、
窓辺に立った。
、けれども、
網戸の 網の つまらないにおいと
その向こうの 雨のまだ乾き切らない 生ぬるい気配、
あとは、
目の前の夜の静けさに倣って沈黙を突き通している 常磐の樹の
深い緑の蔭の匂い、、、
それくらいだろうか。
少くとも、花びらを想わせるものは 一つも無い。
ただ
空は 青の 一面。
空は 果てまでも一面に
神秘の幻を想わせる
陶製の青の一面に、 固まっている。
それは それは、
静かで、美しい。
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*
再び ベッドに戻り ふうと ひとつ
ため息をつくと
すでに忘れてしまっていた 例の
” ラベンダーの馨り ”
が
たちまち、勝手に、鼻に胸に、注ぎ込み、
甘く満ちてしまった。
甘く 満ちてしまった。
*
ああ、
どこだろう。。どこからだろう。。。。。
とても気になって、
とても心地好くて、
とても眠れやしない。
*
得体の知れない ラベンダーの
とぎれとぎれに寄せる幻の波の 甘さが
とても心地好く
酔いたくなっていて
努めて
大きく 深く、息を吸い込んでみる。
そうすると、
馨りの漂流の断片が また 窒素と酸素に紛れて 舞い込んで来る。
そしてまた、
とても心地好くて、
とてもじゃないが、眠ってられない。
*
空気を吸い込む。
かけらが舞い込む。
満たされる。
また 欲する。
その作業に意識を集中させてしまって、
気づいたら、
眠れやしない。
ラベンダーの香るせいで 眠れないのか。
眠れないせいで ラベンダーが香るのか。
*
果たして
どこから来るのだろう。
やさしくて 心地好い。
もっともっと欲しい。
途切れること無く、圧し寄せて欲しい。
ラベンダーの香りの海というのがあるなら
その海に呑まれてとっぷり溺れてみるのも
善いかもしれない。きっとその海は、
夏の或る曙に その瞬間だけに起こるあの、
奇跡的な、
紅桃色のような ムラサキ色のような
あの色の、
とっぷりと融けた、甘そうな
あの色の、
海なんだろうな。。。
、と いうふうにして、
外の空は 白けてしまった。
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雨を落として仕舞いたいんだか
落とさずに堪えて居たいんだか
全く どっちつかずの、
煮え切らない、
意思のぼやけた、
一辺倒に ある意味梅雨らしい、
白々しい湿気を 手ぬるく曵きずったままの、
手ぬるい 朝。
*
チュンチュンと カアカアと
目覚め鳥が早々 啼き始めた。
それでも
そろそろ眠っとこうかな
なんて まだ思ってみたりするのだが
要するに、
夜は 明けてしまったのである。
*
ラベンダーの香るせいで 眠れなかったのか
眠れなかったせいで ラベンダーが香るのか
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六月二十二日