歌庭 -utaniwa-

“ハナウタのように:ささやかで、もっと身近な・気楽な庭を。” ~『野口造園』の、徒然日記。

春一番は向かい風

2010年03月01日 | 徒然 -tzure-zure-
“春一番” が吹きました。

もうだめです。

すでに手おくれです。



春になってしまいました。


さんざん待たされたようで
ここに来て、怒濤の勢い。




春一番の その夜は、
朧月夜でした。ご覧になりました?

夜空に滲んで融けて、きれいだった。



深夜に、
久しぶりに長い仕事を終えて、
ふーー、、っと見上げた 真っ黒な帰り道に。


うすぼんやりと、



かすみにとけた、おぼろ月。


月は静かで

一方 下界は 荒々しくて、あたたかな風が吹いていて。

でも、あたたかい。
マフラー要らない。セーター要らない。
もう夜も、あたたかい。



そんな帰り路。
いきおいよく、向かい風。

疲れているのに追い打ち掛けられて、進まないったら。


でもその風の中に

沈丁花の香りが 混ざっていました。

姿は見えざれど
あたたかい闇と風にまぎれこんで。

確かに、
このあたたかさなら、咲きたいだろう。



ようこそ沈丁花。
何処に居るのか、沈丁花。見えないけれど。

ああ、いよいよ咲いたんだ。


それなら、
良い。

向かい風でも、全然、良い。


向かい風、どんと来い。
香りもまぜて、おしよせて来い。

この際、あせらず。ちんたら帰ってやろうじゃないか。


見上げれば、朧月夜。

帰りはひたすら、向かい風。

春一番は、向かい風。


、、、ああ、

そうか。


いま、“南”に向かって走ってるんだ。自分は。


そういえば。
春一番は、南から吹く 恵みの風だった。


そして、
自分の帰る道は、
ひたすら南へ向かう路なんだった。


南へ、南へ。




春一番が吹く頃は

だいたい
無性に 旅したくなります。


遠く 遠く。


南へ、南へ。









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